『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』上映会 トークイベント7/21  前半 1/2

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衝撃のドキュメンタリー『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』

7/21 トークショー完全レポート

文/辻陽介

世界最古の外科手術トレパネーションの歴史と背景を追ったドキュメンタリー映画『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』。

さる7月21日と22日の2日間、その国内版DVDの発売を記念する上映会が、渋谷UP LINK FACTORYにて執り行われた。

今回VOBOは上映会後に行われたトークショーを独占取材。初日、2日目と異なるゲストを招き、各2時間に及び行われたこのトークショーの中から、まずは7月21日に行われたトークショーの前半部分を公開しよう。(その他の部分についても後日公開予定)

トレパネーションとはなにか、それはどのように行われ、それは人間になにをもたらすのか、その何が人間を魅了し、そしてなぜ今トレパネーションなのか…

それぞれ全く異なる分野に身を置く5名の表現者が、トレパネーションを巡り交わす喧々諤々の大談義。

日本のトレパネーション・ムーブメント到来を告げる狼煙が、今あがった。



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ケロッピー前田氏





(2011 7/21 渋谷UPLINK)

ケ ロ ッ ピ ー 前 田 氏 に よ る

映 画 『 ア ・ ホ ー ル ・ イ ン ・ ザ ・ ヘ ッ ド 』 解 説




ケロッピー前田(以下、ケロッピー) 本日は『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』上映会にご来場頂きありがとうございます。『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』国内版DVDの字幕監修を務めさせて頂きましたケロッピー前田です。これから、本作『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』、またトレパネーションを巡るトークショーに入ってゆく予定ですが、その前にまず、この映画について、少し解説をさせて頂きます。

すでにご覧になって頂いたのでお分かりかとは思いますが、この映画は、頭蓋骨に穴を開けるトレパネーションという手術が、歴史の中でどのような形で行われてきたのかということ、そして60~70年代に現代的な形で復活したトレパネーションが一つのムーブメントになっていった過程を追ったドキュメンタリー映画です。

1時間程度の作品ですが、かなり内容が濃く、今日初めてこの作品を見た方の中には、「トレパネーションって何だろう」というところから始まり、そこからトレパネーションを巡る様々なな議論を一気に見せられて、ちょっと情報量が多いかなと思っている人もいるかもしれません。

そこで少し説明させて頂きたいわけですが、まず一人、この映画においてキーワードになる人物が、バート・フーゲスさんという人です。この人は、オランダのアムステルダムで1960年代に大学で医学を専攻し、マリファナの研究をしようと考え、その後、1962年に、脳内の血流量が上がると人間はハイになるという『ブレイン・ブラッド・ボリューム』という仮説をたてた人です。

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バート・フーゲス

バート・フーゲスさんは脳内の血流量を上げる為には人はどうしたらいいかを考え、最初は逆立ちをする事で脳内の血流量を上げようとしてたんですけど、そこからいきなり飛躍して(笑)、その後、血流量を上げるためには頭に穴を開ければいいんだ、となり、その仮説を立証する為に、1965年にこの人自身がトレパネーションをしてしまうわけなんです。

その事があって、バートさんは60年代のアムステルダムのカウンターカルチャーのシーンではかなり有名人になるんですね。映画にも出てきましたけど、ジョン・レノンがオノ・ヨーコとアムステルダムを訪れた時にも、バートさんの所に来て「穴をあけて欲しい」と言ったなんてエピソードがある。

また、映画の中で『メトピック』という言葉が出てきたと思うんですけど、医学の方面において、頭蓋骨は子供の時は開いていて、大人になると頭蓋骨は塞がってしまう、と言われているんです。そこで大人になっても頭蓋骨が塞がっていない人達の事を『メトピック』と呼んでいます。バートさんは、ジョン・レノンは頭蓋骨が塞がっていないからビートルズとして成功したんじゃないかという風に考えて、ジョンがトレパネーションを依頼した時、「あなたはもう穴が開いている」と言ったわけなんですね。


さて、もう一人、この映画の重要なキーとなる人物が、アマンダ・フィールディングという方です。この人も映画の冒頭から出てきていましたが、このアマンダさんは1970年にバートさんの影響でトレパネーションをする事を決意し、自身の手で頭に穴を開けた方です。その施術のシーンをご自分で映画作品にしていて、その映像もこの映画の中で見れたと思うんですが、映画の中でアマンダさんは「本当はプロの医師にやってもらいたいけど、それがなかなか理解されないので映画にしました」と言っているわけです。

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アマンダ・フィールディング


ここで少し補足すると、トレパネーションは病気の治療としては現在も普通の病院で行われている行為なんです。しかし、病気でも何でもない人が、「気持ちよくなりたい」っていうだけの理由で頭に穴を開けてくれと言った場合、法律的に問題があって出来ないんですね。この問題については、映画の中で多く語られていた通りです。

更にもう一人、キーになる人物がピーター・ハルヴォーソンという方です。この人は98年にこの映画が公開された後に、『ITAG(アイタッグ)』というグループを作り、現在はトレパネーションを施術してくれる病院を希望者に紹介する活動を行っています。この人物によって90年代以降のトレパネーションのムーブメントが始まっていったという点でも、非常に重要な存在と言えるでしょう。

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ピーター・ハルヴォーソン


細かい話についてはDVDパッケージの中にピーター・ハルヴォーソンさんのインタビュー記事が付録として入っているんで、そちらをお読み頂きたいと思います。これはこの映画が公開後の10年間について話してもらった記事です。

この映画『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』は98年公開の作品ですが、それ以前のトレパネーションの記録であるとともに、この映画が公開された事がきっかけで、90年代末以降のトレパネーションムーブメントが巻き起こったという意味でも、非常に重要な映画です。

最後に、もう一個だけ補足すると、皆さんもご存知かとは思いますが、漫画家の山本英夫さんが、このトレパネーションをテーマに『ホムンクルス』という作品を描かれています。連載の方は今年の2月に無事完結したわけですが、そちらの連載を山本さんが始めたのが2001年なんです。

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ホムンクルス 15 (ビッグ コミックス)


僕も情報提供者としてこの作品に参加させて頂いたんですが、最初の資料を作ったのが99~2000年くらいで、この映画がアメリカで公開されたのが98年ですので、丁度海外で「トレパネーションって何だ?」っていう事が話題になってた時期と重なっていたんです。既にお読みの方も多いかもしれませんが、あらためてこの映画と『ホムンクルス』を読み合わせてみると、いかに『ホムンクルス』でこの映画が資料として使われているのかが分かるかと思いますので、そこら辺も映画から派生して楽しめる部分かなと思います。



ト ー ク イ ベ ン ト 開 始

そ れ ぞ れ の 『 ア ・ ホ ー ル ・ イ ン ・ ザ ・ ヘ ッ ド 』 評



ケロッピー さて、解説が大分長くなってしまいましたが、いよいよトークショーの方に入って参りたいと思います。今日はゲストの方々も来て下さっているので、一人ずつご紹介します。まずは大塚一軌さん、今日はどうもありがとうございます。


大塚一軌(以下:大塚) ありがとうございます。


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大塚一軌氏



ケロッピー 私の方から少し大塚さんの仕事をご紹介致しますと、大塚さんは翻訳家、作家として長く活躍されていて、トレパネーションとの縁としては2000年に第三書館から出版された『デス・パフォーマンス』という本があり、大塚さんはその本の翻訳をやられています。『デス・パフォーマンス』にはトレパネーションに関する記述もあり、これはトレパネーションを日本に紹介する上で非常に画期的なタイミングでした。あと、大塚さんが得意としているのは、銃器や武器関係で、現在はそちらの関連での連載もされていますよね?


大塚 ええ。銃関係の雑誌に二ヶ月に一回記事を書いています。あと、僕にも色々と裏背景がありまして、違う名前でも何冊か本を出しています。

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デス・パフォーマンス―倒錯と死のアモク・ジャーナル


ケロッピー 近々出版予定の本もありますよね?


大塚 皆さんが銃に興味があるかは分かりませんが、データハウスから、700ページくらいのかなり分厚い本を出す予定です。世界史における全ての兵器、それこそ昔の投石などから近年の携帯ミサイルまで含むような、いわゆる兵器の開発史というものを執筆しております。


ケロッピー 要するに人を殺す為の百科事典みたいなものですか(笑)?


大塚 そうなりますね。その辺が好きなもので。


ケロッピー (笑)。では「その辺」を専門とされている大塚さんにお聞きしたいんですが、この映画をご覧になって、感想はいかがですか?


大塚 そうですね。僕が『デス・パフォーマンス』を翻訳したのが1998年で、その原書『アモク・ジャーナル』が出版されたのが1995年なんですね。この本は頭蓋穿孔、トレパネーションだけを取り上げている訳じゃなく、例えば「オナニーをしながら首をくくって死んじゃう」とか、そういった様々な事例が載っている本であって、頭蓋穿孔は飽くまでその中の一部なんですが、僕は文章をイマジネーションを使って訳してゆく方でして、トレパネーションという言葉を日本語に訳す時も、『頭蓋貫通』と『頭蓋穿孔』のどっちにしようかと悩んだんです。というのも、私自身、トレパネーションが実際どういうものなのかというイメージが全くなかったので。「完全に頭蓋を穿孔したとして、その下にあるくも膜や硬膜はどうなっちゃうのだろう?」とか、細かい部分が分からないまま訳していたんですよ。でも、今日初めてその映像を見て、自分が謎だったところがはっきりしました。


ケロッピー 膜を破っちゃダメですよ(笑)。死んじゃいますから。これもしつこく言っておきますが、トレパネーションはロボトミーとも全く違います。ロボトミーは脳の一部を切除してしまうものですが、トレパネーションは頭蓋骨に穴を開けるだけで、脳膜には一切傷をつけない。人類最古の外科手術といわれるのも、頭蓋骨だけに穴を開けて、膜には傷をつけない行為だから、アフリカの部族の手荒な方法でも96パーセントの生存率が保たれたわけです。


大塚 いや、非常に勉強になりました。


ケロッピー では続いて、二人目のゲストをご紹介します。怪談作家の宍戸レイさんです。今日はありがとうございます。


宍戸レイ(以下:宍戸) ありがとうございます。


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宍戸レイ氏



ケロッピー 宍戸さんは美人すぎる怪談作家と呼ばれているわけですが、最近のご活動を少しお聞きしてもいいですか?


宍戸 最近だと6月23日にメディアファクトリーから出た『怪談 実話系6』に道尾秀介さんや京極夏彦さん、岩井志麻子さんの間にちゃっかり入り込んでます(笑)


ケロッピー かなり多方面に活躍されてますよね。


宍戸 8月6日放送のフジテレビの深夜番組に出演してますので、良かったら見て下さい。今のところ、そういうのに出ちゃいけない人だっていうのがまだバレてないみたいで(笑)


ケロッピー (笑)。大活躍中の宍戸レイちゃんですが、ではまず、この映画を見終えて、感想をお願いします。


宍戸 すごいビックリしました。他のイベントで前田さんと同席した時とかに写真だけは見せていただいたんですが、映像でこれだけ一気に見たのは初めてでしたので。色んな情報が凝縮されていたので、今はまだ少し頭がこんがらがってますけど…、やっぱりアフリカのキシイ族の手術シーンが一番強烈でした。そもそもあんなに大きく切らなきゃいけないものなんですか?


ケロッピー おそらくキシイ族の場合は、トレパネーションが病気の治療のためだけではなく、ある種の儀式性を伴う行為としてあったんだろうと思います。村をあげて一晩中儀式を行った上での施術となると、それなりにパックリと開かないといけなかったんじゃないですかね(笑)


宍戸 あのスプラッター加減にビックリしました。


ケロッピー 人間って凄いなって単純に思いますよね。


宍戸 そうそう。あと、痛みっていうのは文化によって違うのかなとも思いました。現代人は「痛いもんだ」と思ってるから痛いって感じるけど、あっちの人は麻酔なしの手術にも耐えているわけで。気持ちや環境次第で痛み方も違うのかなぁと。


ケロッピー 例えば、この映画に出てくるバートさんもセルフでやってますからね。映画の中でも、「自分で施術するとこんなにも血が出るのか」って言ってました。手術は30分なのに、掃除に4時間かかったって(笑)。アマンダさんも、ジョー・メレンさんもセルフでやってます。そう言えば、大塚さんが訳した『デス・パフォーマンス』にもジョー・メレンが出てますよね。


大塚 感動しましたよ。イメージの中でこんな人かなって思いながら訳していたんですが、あまりにイメージ通りの人だったんで。


ケロッピー だいぶ老けちゃってますけどね。では、続いてのゲストをご紹介します。マンガ家の河井克夫さんです。今日はどうもありがとうございます。


河井克夫(以下:河井) ありがとうございます。

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河井克夫氏


ケロッピー 今日映画をご覧になった感想をお願いします。


河井 そうですね。まず、映画前半のアフリカのキシイ族の衝撃映像はやはり凄かったです。あとは、実際に穴を開けた人たちが割とフラットな感じだったのが印象に残ってます。「お前も開けた方がいいぞ」みたいな感じでは余りなくて。どちらかと言うと、ある種の健康法みたいな言い方をしてますよね。昔「パンツを履かない健康法」みたいなものがあったのを思い出しました(笑)


ケロッピー 飲尿健康法とかもありましたね(笑)


河井 そうですね。「何でオシッコ飲まないの?」くらいのテンションで、凄くフラットな感じでトレパネーションを語っているのが面白かったです。


ケロッピー ちなみに、この映画を撮ったケヴィン・ソリングという監督は、この映画が処女作なんですが、その後も、毎年一本づつくらい映画を撮っていて、その中に飲尿健康法の映画もあるんですよ(笑)


河井 おぉ(笑)

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