飴村行 徹底解体

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日本ホラー小説大賞受賞作家

飴村行 徹底解体 

粘膜人間って結局僕のことなんですよ

文/北出正行 写真/藤森洋介 構成/佐藤広大


類い希なる言語センス、先の読めない展開でホラー小説界を席巻し続ける鬼才、飴村行。現代の奇書ともいえる『粘膜人間』『粘膜蜥蜴』『粘膜兄弟』『爛れた闇の帝国』はどのような着想を元に書かれたのか、飴村行の少年期の体験から小説家になるまでの苦難。さらにはエロスの嗜好まで、VOBOが飴村行に迫る。



編集部(以下:編) 本日は宜しくお願いします。

飴村行(以下:飴) 宜しくお願いします。

 まず、こういったホラー系ジャンルの作品を書かれる作家は、幼少期の感受性豊かな頃に大きなインパクトを受けた作品があったと思うのですが?


飴 僕は藤子不二雄?の『魔太郎がくる!!』をボロボロになるまで読み込むほど好きでした。今の新しいバージョンの単行本ですと差別用語が削除されていてかなり柔らかい表現になっているのですが、70年代ってヤバい言葉とかバンバン出てて(笑)。それが堪らなく好きでした。

 早速書けない言葉が出ました(笑)。当時は魔太郎に限らず多くの漫画がそうでしたよね。


飴 あと平松伸二の『ドーベルマン刑事』も好きで。今でも覚えているのですが、女子校に猟銃を持った男が立て篭る話が大好きなんです。その動機っていうのが自分の生まれた息子が梅毒に感染していたと。それでその梅毒に感染した子供を抱きながら猟銃を撃っているんですよ。で、なんで子供が梅毒になったかというと、自分が女子高生と売春して梅毒に感染して、さらに奥さんにも感染して子供にも、と。それが理由で女子高生を乱射するのですが、その時点で僕は痺れるわけです。まぁ結局ドーベルマン刑事に射殺されるのですが、そんな話がてんこ盛りでした。しかもそれが少年ジャンプに載っているわけで。凄いですよ。

 確かに凄いですね。

飴 70年代は本当に野放し状態だったんです。そういう70年代の漫画の影響はでかいですね。

 それは小学生くらいの頃ですか。

飴 そうですね。

 ホラー作家は幼い頃の実体験を元にする方が多いと聞きますが、実際に恐怖体験に出会ったことはありますか?

飴 実体験ですか…。

 実は河童と出会った事があるとか。

飴 いやいや(笑)。恐怖と言えば、僕は犬が大嫌いで。一度噛まれそうになった事があって。で、犬って臭いでわかるらしいんですよ、人間がビビっているのが。なので僕が行くと必ず暴れ出して吠えるんです。昔は野良犬って普通にいたじゃないですか。小学生の頃はそんな野良犬に追いかけられるのが一番怖かったんですよ。しかも通学路にいて、いつも逃げ回っていました。今の若い人って野良犬を知らないでしょうし、その辺の感覚はわかってもらえないかもしれませんが。

 そのせいか、考えてみたら飴村先生の作品に犬は出ませんよね。

飴 本当に嫌いっていうか怖いんですよね。




?『カタストロフ 世界の大惨事』が僕の原点。作り物のホラーじゃないっていうのが印象に残ってます。



 以前のインタビューで中高生の頃はまるで、少年院みたいだったとか…。

飴 そうですね。高校にプールがなかったせいで夏はマラソンで10kmとか走らされていたんです。その時に友達と言っていたのが「入った事はないけど少年院みたいだ」って(笑)。でもこの少年院は購買でパンが買えるからまだましだねと。

 そんな体育会系の高校ですが、その頃の飴村先生は運動や部活動はされていたんですか?

飴 全然ですね。うちのオヤジも将来コイツはどうするんだって思うくらいなにもしない高校生でしたね。ただボーっとしていました。で、ひたすら西村寿行の小説を読んで、ひたすらホラー映画を見るという。

 親近感を感じますね(笑)。

飴 高校2~3年生くらいの頃にレンタルビデオができ始めたのですが、それまでは映画館に通い詰めて。

 ホラー映画や小説などの出会いもその頃ですか?

飴 原点は『カタストロフ 世界の大惨事』という記録映画ですね。今でも覚えていますが、高層ビルから落ちた人が地面に叩き付けられてバウンドするシーンを5人くらい連続で映しているのですが、そのインパクトがいまだに残っていて。あと、『グレートハンティング』とか。小学生の頃に見た作り物のホラーじゃない実録残酷ものが印象に残ってますね。

 さらに親近感が湧きますね(笑)。他にも『ジャンク 死と惨劇』とかありましたよね。『爛れた闇の帝国』の作中にも『ゴアゴアガールズ』などの残酷映画が出てきますが…。

飴 あれは19か20歳くらいの時、お金もある程度自由に使えるようになって、レンタルビデオ屋でハーシェル・ゴードン・ルイスの映画をまとめて見た時の影響ですね。

 当時はレンタルビデオも高かったですよね。

飴 しかもVHSとβがあって。そういう時代でした。

 当時は西村寿行先生の小説ばかりを読んでいたとお聞きしたのですが他には?

飴 高校時代は西村さんと筒井康隆さんを読んでいました。『問題外科』とかグロいのがいっぱいあって。そのお二方をがっつり読んでいましたね。

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