飴村行 徹底解体 4

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?どれだけ笑いがとれるかを意識して書いたのが『粘膜兄弟』なんですよ


 それでは第三作『粘膜兄弟』に話を移しますが、こちらはスタートから恋愛的な話が出てきてちょっと意外でしたね。

飴 これはですね、『粘膜蜥蜴』を書いてる時点ですでに思いついていた話なんですよ。『粘膜蜥蜴』の第二章はもの凄く手こずりまして、書くのに二ヶ月くらいかかったんです。すっごいストレスでもう『粘膜蜥蜴』を書くのをやめようと思ったくらいで。その時は鬱状態になっちゃって1日に10行とか5行しか書けなかったんですよ。自分で考えたプロットなので変更してもよかったのですがそれも嫌で、結局プロット通りに書き進めて。そのつらかった時に次作はギャグに走ろうと思ったんです。もう笑いをとって弾けようと。だから『粘膜兄弟』は書いてて楽しかったです。どんだけ笑いがとれるかを考えて書いていたので。

 僕の周りにも飴村先生のファンが多いのですが、好きな作品はわかれるんですよ。やはり『粘膜兄弟』が好きな人はお笑いが好きな人で、映像を思い浮かべる映画業界の人は『爛れた闇の帝国』を気に入りますね。同じホラー作品なのに幅が広いなと。

飴 僕、お笑い大好きなんですよ。テレビ録画も含めたらお笑いのDVDが200枚はありますよ。がっつり見るんで。昔から「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」が好きで、ビデオテープが段ボールいっぱいにありますよ(笑)。それで昔の深夜番組で「かざあなダウンタウン」という番組があったのですが、それが本当に大好きなんです。

これはソフト化は無理だと思いますが、第一回目の放送がスッポン料理を作ろうという内容でした。出演メンバーはダウンタウンに、東野幸治、今田耕司、リットン調査団など10人くらいでしたが、みんなスッポンを持って、首を切って、甲羅をはがして、内臓を取って(笑)。これは『食人族』を超えてるわって思いましたよ。割烹着を着た料理長がお手本を見せながらやるんですけど、スッポンを捌いて黄色い臓器を取り出して「これが卵巣ですよ」と。それを聞いた浜田が血まみれになった卵巣を山崎邦正に「食え!」って(笑)。もちろん山崎は食えないっすよって泣いているんですが、「食えボケ!」と口に突っ込んで、無理矢理噛ませて(笑)。それで口の回りが血まみれになりながら、周りも一斉に首を切断して内臓取り出して、グッチャグチャになるんですよ。まだ録画ビデオを持っていますが、今見ても笑えますよ(笑)。結構知らない人も多いみたいですけど。

 その番組も幻覚なんじゃないですか(笑)?

飴 いやいや、本当ですよ。他にもその番組で「動物の餌を食べよう」という回があって、牛の食べる草とか、亀の餌とか食べて、最後にカブトムシの幼虫を2匹フライパンで炒めて。で、結局どうなったかというと、フライパンで炒めてる時にバン!って爆発して(笑)。毎回そういうノリなんですよ。

 飴村先生の小説みたいですね(笑)。

飴 本当にスプラッターみたいな番組でしたよ。マニアック度は凄かったです。昔は今より放送禁止用語も少なくて、パチンコの美人釘師が出演した時も、みんな「パンツ脱げ」とか「口で咥えろ」とかバンバン言うんですよ。そして釘師が顔真っ赤になりながら説明するという。とにかく僕はその番組が一番好きで、お笑いではこの影響が凄く強いですね。

 つまり飴村先生が大きく影響を受けたものは、村上龍の「向現」と、「かざあなダウンタウン」なんですね。

飴 僕のお笑いの影響は「かざあなダウンタウン」ですね。

 なるほど。話を『粘膜兄弟』に戻しますと、雌豚と獣姦する人物、ヘモやんも凄いですね。

飴 あれも実は元ネタがあります。根本敬さんの「天然」という漫画で、これは野球少年がプロを目指してがんばって、色んな困難に打ち負けて普通のサラリーマンで終わるという話なんですけど、舞台は全編福島県なんですよ。根本さんのアシスタントが郡山出身でそうなったみたいなんですけど、その作中に村の豪農の豚小屋で豚とやっているおじいちゃんが登場するんですよ。それを誰かに見られてぶん殴られて最後は首を吊って死ぬというキャラでして。

 根本先生らしいですよね(笑)。

飴 でも『天然』の中ではそんなに重要なキャラじゃないんですよ。それでもったいないと思って『粘膜兄弟』で使ったんですよ。

 ヘモやんにモデルがいたとは…実在する人物じゃなくて良かったです(笑)。『粘膜兄弟』にもキチタロウが出てきますが、当初この『粘膜シリーズ』を地続きにしようとした構想はあったんですか?

飴 ないですね。

 共通した世界観を意識し始めたのはいつくらいからですか?

飴 「粘膜」という言葉が好きだというだけの軽い気持ちだったんですよ。でも『粘膜蜥蜴』でも賞をいただいて、三匹目のドジョウじゃないですけど、じゃあ今までの作品の世界観もここでまとめてみようと。

 粘膜シリーズはまだ続きますよね?

飴 はい、続きますね。

 次作はいつ頃に?

飴 来年の2月、粘膜シリーズの短編集が出るんですよ。『粘膜人間』のベカやんの過去についての話になります。他にも長編で「粘膜乙女(仮)」を刊行する予定ですね。

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