峰なゆかに聞く『アラサーちゃん』の正しい読み方

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祝『アラサーちゃん』単行本発売!!

峰なゆかに聞く『アラサーちゃん』の正しい読み方 

聞き手/辻陽介




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去る11月18日にいよいよ刊行となった峰なゆか初の単行本『アラサーちゃん』は、全方位的なグサリで溢れている。

自意識過剰のモテ系男子はむろん、一見無害な子鹿系男子、童貞保存に汲々とする非モテ系男子、いや男のみならず女へも、峰なゆかのグサリは四方八方へと矛先を変え、誰一人として安全地帯から読むことを許さない。

胸のすくような痛快なグサリに「あるある」と爆笑するも束の間、次の瞬間にはそのグサリはたちまち自分へと向けられる。それらグサリはいずれも、恋の駆け引きを巡って男と女が陥りがちな独善や誤解への、峰なゆかからの愛の処方箋だ。

とはいえ読んでいて嫌味に感じることが決してないのは、グサリとしつつも抱擁を忘れない峰なゆかの如才なさゆえか、あるいはアラサーちゃんというキャラクターがもつ問答無用の可愛さゆえか。

自身アラサーちゃんと同じアラサー年齢に属しながら、ますます可愛く、ますます老獪に進化する著者・峰なゆかに、話題の処女作『アラサーちゃん』について話を訊いた。




(2011年・11/29)



—まず、あらためまして『アラサーちゃん』単行本発売おめでとうございます。

 ありがとうございます。

― 峰さんにとっては初の単行本、感慨もひとしおだったのでは?

 ダ・ヴィンチから見本が送られてきたときは怖くて見れなかったですね。わざわざ編集さんがバイク便で送ってくれたんですけど、3日くらいは触れることができず…。バイク便代を無駄にしてしまい申し訳ないです。


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『アラサーちゃん』(ダ・ヴィンチ・ブックス)



―その後、実際に『アラサーちゃん』が全国の書店にずらっと並んだわけです。いかがです?

 実際に発売されてからは頻繁にエゴサーチをするようになりました(笑)。最初はツイッターで宣伝用リツイートをするためだったんですが、皆さんからの感想を読んでるうちに段々と本当に嬉しく思えてきて、気付けば宣伝というよりも、心の底から「みんな、この感想を読んで!」って気持ちでリツイートするようになっちゃって、若干テンションがうざくなっているなって思ってます。本当に凄いテンションが高くなってしまっていて…、しばらく人に会わないほうがいいかなって思っていたところです。

―自重を検討するほどの感動があったわけですね。では作品についてお話を聞いてゆきたいのですが、『アラサーちゃん』は元々はブログで個人的にアップされていたんですよね?

 そうですね、でもまぁ、ブログを作った時から「あわよくば書籍化」みたいなのはありました。

―狙いすましていた感じですか。

 はい。4コマが本になった場合、普通は1ページに2本じゃないですか。だけど、それだと分量的にも結構きついから、1ページに1本で載せられるコマ割でいこう、とか、オールカラーだったらページ数が少なくても出せるから、カラーで塗っておこう、とか、そういういやらしいことを考えながら描いてました。

―本当にいやらしいですね。では今回の単行本発売はまさに峰さんの計算通り?

 よかったな、と思ってます。

―はい。ところでエゴサーチをしていて気になった反応とかありました?

峰 そうですね…、『アラサーちゃん』の表紙デザインが結構派手な色使いで、キラキラのハートなんかもあしらわれているんですけど、にも関わらず、中の色使いはけっこう渋めなんですね。それを指摘して「見た目を磨けば磨くほど中身はいぶし銀になってゆく」みたいな意見を言われている方がいらっしゃって、なんか全く作者の意図外のところで分析されているぞ、と思いつつ、「なるほど!」と思いました。

―この本そのものがアラサー的という。

 そうです。でも、それを指摘されていたのはマンガ学かなんかを研究なさっている方だったので、はい、非常に勉強になりました。

―ちなみに僕はただただヘラヘラ笑って読んでいたので鋭利な分析とかは一切ございません。さて内容についての質問です。アラサーちゃんというキャラクターそのものは峰さんが今までに出会ってきたモテ女子たちの集大成と考えてよいんですか?

 モテ女子というより、パーツパーツで私が可愛いなって思う女の子的要素を集めたっていうのが正確ですね。だから私が自分で自分のことを自分これ可愛い行動なんじゃねーのって自分で思ってる部分ももちろん入っておりますよ。

―たしかに峰さんぽいですよね、アラサーちゃんって。

 あ、本当ですか(喜色)

―はい。なんというか、全体的に悪意のある感じとか、ぽいです。

 …私のイメージは悪なんでしょうか?

―悪意があるってだけで、悪だとは思ってません。でも、活字で表現しようとすれば、それこそ何千ワードも使って説明する必要のある男女関係の機微みたいなものを、さっと4コマで表現されていたりするっていうのは、純粋に凄いな、流石だな、悔しいなって思いました。

 うふふふふ。もともと私はマンガも文章も好きなんですけど、小ネタを考えてる時とかは割とマンガとして考えてることが多かったんです。でも『アラサーちゃん』を描くまではマンガを描く機会もなかったので、マンガで考えたものを文章に後から直してたりしてたんですよ。今はすぐに4コマで書けるんで嬉しいですね。

―描かれている時は主にどういった気持ちで描かれていたんですか?

 すごく単純に「私って可愛いでしょ?」っていう。

―そうですか。

 なんですか、その反応は。

―あざとさも魅力です。

 真面目に言えば、文章を書く時、特に小説などではないエッセイなどを書く時というのは、自分を登場させないわけにはいかないじゃないですか。

―一人称は否応なく自分になります。

 そうなんです。で、自分のままで文章を書いていると、実際よりも大幅に自虐に走らないと読んでいて鼻につくところが出てくるんですね。とはいえ納得のいくところまで自虐すると本来の私からも遠ざかってしまう気がするんです。まぁ「私は自分の悪いところばかり書いてますが実際は男性がキュンとするようなこともたまにはしておりますよ」みたいな感覚ですね。そういう面が全くなくなってしまうところに凄く違和感があったんです。私は皆が考える「峰なゆか」って存在と私自身をなるべく離したくないんで。そう思い、自分以外のキャラをなにか動かそう、と。そこで小説という手段もあったんですが、それはちょっとハードルが高過ぎて、なんとなく4コマというところに落ち着いた感じです。

でも書いてるうちにアラサーちゃんがどんどん可愛くなり過ぎていって、これはこれで自分とは離れてきたぞ、とも思ってるんですが…。

―でも基本的にアラサーちゃんの中には峰さんが生きてると思います。貧乳への憎悪を忌憚なくあらわにしているあたり、まさしく峰さんですよ。

 そうですね、貧乳は悪ですから。

―貧乳は悪ですか。

 いや、私だって最初は貧乳に対してなんにも思ってなかったですけど、こんだけ巨乳バッシングされたら、そりゃ嫌いになりますよ。

―(笑)。そもそも誰にそんな巨乳バッシングされてんですか?

 それは意地の悪い貧乳です。あとは、貧乳女子に対していい顔をしたい男性ですね。なんか貧乳のことは女同士でもネタにしちゃいけない空気みたいなものがあるんですよ。「本人が気にしてるから」とかなんとかで。でも巨乳はネタにしてもいいみたいな空気になってるじゃないですか。たとえそういう空気になってたとしても言われたら嫌なんです。そういうことが続く内にどんどん腹がたってきて…

―なるほど。それで「貧乳コンプレックス」の回でアラサーちゃんにあんな悪い笑顔をさせてるんですね。



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(「貧乳コンプレックス」より)
(c)峰なゆか/メディアファクトリー



―ところで男性読者からのリアクションってどうです? 個人的にかなりグサリとくる感じがありましたが。これまでの自分の恋愛史が全て黒歴史に思えてます、今。

 まぁこの本では女性に対してもかなりグサリと刺してるつもりです。

―そうですね。全方位的なグサリですね。

 でも男の人ってグサリと刺されても「まぁしょうがねぇな」とか笑ってすませちゃうとこありますけど、女の人の場合は割と真面目に「こうならないようにしよう」って前向きに受け止めてくださる人が多いのでやっぱり偉いなぁと思いますよ。男の人の中には「そういうのダメだよ」って女性から言われたりするのを喜ぶ文化ってのがあるじゃないですか。

―たしかに。ただ根は残していくと思いますよ。少なくとも僕は、今後メールのタイトルと本文を繋げて書けないと思いますから。

 繋げてもいいじゃないですか(笑)。傾向として描いてるだけですよ。



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(「メールは交友関係の鏡」より)
(c)峰なゆか/メディアファクトリー




―逆に峰さんのなかで『アラサーちゃん』から是非学んで欲しいポイントとかってありますか?

 男の人について言うなら、女の人に対する萌えポイントをもっと拡げて欲しいんですよ。キュンとくるストライクゾーンというか、現状だととても狭いじゃないですか。

―女の子のちょっとした動作からもっと色々汲み取れよ、と。

 そうです、そうです。描く時に一番気をつけたのは、とにかくアラサーちゃんは可愛いっていうのを崩さないところなんです。でも、これを順序立てて説明しなかったりとかすると、「うわ、悪どい」とか「うわ、悪女だ」みたいな感じで受け取る人が多いと思うんですよね。「モテ」とかを考えてあざとく行動してるんだ、みたいな。

―すみません…。もちろんアラサーちゃんの可愛さに異存はございません。

 …。

―逆に批判とかありました? 「こんなのうそっぱちだろ!」みたいな。

 批判ということで言えばあれですね、『江古田ちゃん』と似てるっていうとこじゃないですかね。私もこれ描いたあとで気付いたんですけど、髪型が一緒だ、と。まずいと思ったんですけど手遅れでした(笑)

―言われてみれば、ですね。

 ででもアラサーちゃんと江古田ちゃんってモテ方が全然違うじゃないですか。どちらかというとアラサーちゃんは、江古田ちゃんでいえば猛禽側の人間ですよね。そこの差が伝わるかなあと心配していたんですけど、わりに分かってもらえて嬉しかったです。

―男性キャラの中ではやっぱ文系くんが好きなんですか?


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(「メールは交友関係の鏡」より)
(c)峰なゆか/メディアファクトリー




 嫌いですよ、ムカつきますもん。なんていうか、ムカつく好きなんですよ。だって文系くんは私のこと好きじゃないし、ゆるふわちゃんみたいな子が好きなわけじゃないですか。で音楽の趣味とかもいかにも文系が好きそうって感じのを聞いてるし、本とかもちょっとマニアックな本を読んでいる自分みたいなのにプライドを持ってたりするし、面倒くさい男です。そういうところを踏まえた上で「でも好き」みたいなのがあるんです。

―その「好き」は愛でる対象としての「好き」?

 いや、がっつりセックスしたいですよ。

―あ、がっつりセックスしたいんですね。

 そりゃそうですよ! 読者さんからも「文系くんタイプだわ」みたいな感想が多いんですが、やっぱり皆さん「ムカつく好き」みたいな感じを持っていらっしゃるんだな、と思います。

―文系くんがモテるのか…。複雑ですね。では最後に、何か峰さんからアピールしておきたいところはありますか?

 とりあえず、あれですね。『アラサーちゃん』を読んで「おれ、まさに文系くんだ」とか言われるとイラッとくるんでやめて欲しいです。文系クンに感情移入されるとムカつくんですよね。「お前はちげーよ」みたいな。でも「あぁ、おれは大衆くんだ」って言ってるような人には「君こそ文系くんだ」と言いたいです。実際、文系くんはこれを読んで「あ、おれは文系くんだ」って言わないと思うんですよ。そもそも自分をかなり低めに見積もってしまうのが文系くんなわけですから。

―これを読んで「ぎくぅ」ってする男子も多かろうと思います。

 お前はそんないいもんじゃねーから、と言っておきます(微笑)


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(c)峰なゆか/メディアファクトリー



峰なゆか

1984年生まれ。

元AV女優のライター、漫画家。

現在、『峰なゆかの漫画家不適合者』をVOBO誌上連載中。

峰なゆかツイッター





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