AVマイスター東風克智が語るAV男優30年史

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AVマイスター・東風克智が語る AV男優30年史

構成/編集部


AVの主役はもちろんAV女優……と、本当に言いきってしまってもよいのだろうか?

確かに日本のAV女優はすごい。ビジュアル、プレイともに世界トップ水準、その豊饒たるマ○パワーを前にしては、どれほどの賛辞を表してもゆきすぎということはないのだが、一方、それら女優たちに浴びせられた眩いばかりの脚光の影で、AVという一大文化を支えるべく暗躍し続けてきた無数の男たちの存在も見過ごすべきではないだろう。そう、AV男優である。

そもそもAVが男性向けメディアであることを鑑みれば、作品の主役は男性であって然るべきなのだ。それは、例えば男性向け恋愛マンガにおいて、多くの場合、主人公は男性であることからも当然の理である。想像して欲しい。いかに麗しいマ○コであっても、それ単体で切り取ってしまえば、それは一つの優れたオブジェに過ぎない。だが、その隣にもし隆々と峙つチ○ポが映っていたらどうか? そこには無限の予感がある。豊かな物語がある。要するに、一つのAVが良き物語であるためには、必ずしもそこに一本(あるいは複数の)の良きチ○ポが不可欠なのだ。

本欄は、日本のAV史を、良きチ○ポ=AV男優の側面から一望せんとする試みである。今回、講師を務めて頂いたのは西日本が誇るAVマイスター・東風克智氏。スポニチなどメジャー媒体での連載を抱える、AV批評新世代を代表するホープである。マイスターによればAV男優・冬の時代にあるという現在、どうやらここ数年、AVという物語がちと不安定な様子なのだ―




—AV男優史1980年~1989年


―本日はAVマイスター・東風克智氏とともに、日本のAVの約30年にわたる歴史をAV男優という側面から振り返ってみたいと思っております。では早速ですが、まず80年代から、東風さんお願いします。

東風 僕は今33歳ですので、リアルタイムでAVを観てきたのは90年代以降なんです。よって80年代については後追いで学んだ形になるんですが、まず作品として触れざるをえないのが裏ビデオ『洗濯屋ケンちゃん』ですね。これは82年の作品です。また83年には八神康子さんという女優が『隣のお姉さん』という作品でデビューし人気を博しました。『洗濯屋ケンちゃん』は当時のランドマーク的作品ですし、また男優史としても、ここら辺から始めるのがよいと思います。タイトル通り、主人公が男性で、久野一之さんという方が演じられていました。

つづく84年、『ミス本番 裕美子』が大ヒットとなり、その後、80年代中頃より村西とおる時代が始まります。駅弁、顔面シャワー、ストッキング破り、ハメ撮りと、村西とおるは80年代に全て開発してました。その人気はひょうきん族で鶴ちゃんが真似するぐらい。AV市場が非常に活気づいてきたわけです。

その他、80年代においては、速水健二さん、日比野達郎さん、太賀麻郎さん、この方々が当時の男優の代表格ですね。2000年代に入ってからもしばらくは活躍されてました。03年にミリオンから出た『完全なるイカセ4時間』シリーズには速水さん、日比野さんが出演していましたね。


※上の東風氏の発言内において一部事実とは異なる内容を含む部分がございましたので訂正致しました。訂正は二箇所です。『洗濯屋ケンちゃん』に八神康子さんが出演していたと捉えられる発言がございましたが、そのような事実はございませんでした。また、村西とおる監督がハメ撮り、駅弁、顔面シャワーなどを84年の時点で開発していたという発言がありましたが、こちらも事実とは異なっておりました。いずれも編集部の校閲ミスによって生じた誤りであり、既に正しい内容に訂正させて頂いております。読者の皆様には大変ご迷惑おかけしました事を深くお詫び申し上げます。


―80年代AV男優の特徴などはありますか?

東風 80年代の男優さんというのは、多くがいわゆる一般の俳優上がりの方なんです。それもあり、たとえば秋吉宏樹さんなど本番NGの男優さんもいました。今だったらまずありえないですね。栗原良さんなんかは大野剣友会所属で、実はモモレンジャーの着ぐるみを来ていたのは栗原さんです。清水大敬さんにいたっては黒澤明の『影武者』に出演したりしていました。中でも最も有名なのが山本竜二さんですよね。アラカンの甥で、血筋としては俳優のサラブレッド。ただ今はスカトロとかバリバリやってます(笑)

―セックスありき、というより、演技ありき、だったんでしょうか?

東風 そうですね。それは女優にしても同じで『ミス本番』シリーズが流行ったくらいですから、つまり他は本番をあまりやっていなかったんですね。だから男優も女優も「演者」として出演して作品を作っていたんです。その流れを壊したのが村西とおるですよね。顔面シャワーをすることで「これは疑似じゃない」ということをアピールしていった。

あと80年代の特徴としては、男優名がきちんとクレジットに載せられていたんですね。これは現在ではほとんど見られません。ジャケット裏にも男優の顔が映ってました。

―現在よりも男優に存在感があったということでしょうか?

東風 これは女の子の質の変化とも関係していますね。今の女の子はそもそも性に対する知識量が豊富なんで、えげつないプレイにも許容力があるんです。一方、80年代頃の女優さんというのはまだフェラがぎりぎりくらいの世代。すると、女の子に特色をつけづらい分、女の子を活かすためにも男優が個性を出していくしかないんです。マグロとはいわなくても受け身の女優がほとんどだったわけですから。

―確かに当時のAVには今ではありえないような表現がありますね。女性の「挿入された」感を表すのに女の子に花をギュッと掴ませたり。

東風 特に村西とおる以前は本番自体が少なかったわけですから。実際に挿れてないからこそ男優の表情の変化などで挿れた感を出さなきゃいけないわけです。演技が必要になってくる。それに比べると今のAVでは男優の喘ぎ顔なんて基本的にNGですからね。そもそも顔を映さない。逆に言えば、80年代は男優で売っていたぐらいのところがありましたから、つづく90年代もあわせ男優にとっては黄金時代かもしれません。

また80年代の男優史の動きとしては、平本一穂という男優さんが、87年に「セイリオス」というAV男優の事務所を作ったんです。これは若手AV男優のサークルとしても機能していて、その中から、やがてナンパの帝王と呼ばれることになる島袋浩なんかが育っていったというのがあります。これは島袋さん本人に聞いたのですが、当時は男優同士の横の繋がりがあり、非常に和気藹々としていたといいます。




—AV男優史1990年~1999年



―では続いて90年代のAV男優界についてお願いします。

東風 90年代はなんといっても、まずチョコボール向井の登場ですね。当時、樹まりこの『男優さん、いらっしゃい』という人気シリーズがあって、これは樹まりこが素人男性と絡むという内容だったんです。そこにまだ素人だったチョコボール向井が出てきた。それが90年です。ここがターニングポイントでした。それまで中肉中背が基本だった男優界に筋肉系が登場したんです。

チョコボール向井の人気は凄かったですね。チョコボール向井がメインの企画なんかもかなりありましたから。これは今でもかもしれませんが、一般の人がイメージする典型的AV男優像はチョコボール向井ですよね。あるいは加藤鷹か。

―加藤鷹とチョコボール向井とではどちらがキャリアが長いんですか?

東風 それは加藤鷹です。加藤鷹は80年代から出演してましたから。ただ、今のような形ではなく、昔の作品では普通に二枚目役として出演して演技していたりするんです。

―加藤鷹が現在のような形でフィーチャーされるようになったのはいつ頃なんでしょう?

東風 95年ですね。ただ、一般に潮吹きと言えば加藤鷹の専売特許と思われていますが、実際は吉田潤という男優さんがいて、僕の世代だと潮吹きは吉田潤のものというイメージがあったんです。川島和津実に潮を吹かせたのも吉田潤ですから。当時は川島和津実クラスの美女が潮を吹くなんていうのは凄いことだったんです。これが、95年に麻生早苗や細川百合子といった潮吹き女優が登場するなどの潮吹きブームにつながっていくんですが、吉田潤はあまり注目されず、イケメンの加藤鷹に潮吹きポジションを奪われちゃいましたね。

―ところでナンパ系の流れというのはどこらへんから始まるのでしょう?

東風 これも90年代ですね。93年から始まった沢木和也と剣崎進の「ナンパ帝国」シリーズや、「島袋浩のザ・ナンパスペシャル」。これらは現在でもシリーズが出ていますね。これら以前にも手法としてナンパ自体はあったと思いますが、キャラが立っていて、トークやナンパもできる男優というのが育ってきた。ここらへんの作品に関しては、観る側もハメそのものよりも過程を楽しんでいたところがあります。最初の40分くらいは、実際のナンパであったりトークに割かれていて、僕が高校時代も学校で島袋さんや沢木さんのビデオが凄いはやっていました。

―ヌキとハウトゥーがセットになっていたんですね。

東風 そうですね。また90年代ということで言えば、90年代の早い時期にギルガメッシュナイトも始まっていて、飯島愛など女優のアイドル化が進んでいた。それと同時にチョコボール向井をはじめとする男優の人気もあがっていたんですね。94年に『人間廃業シリーズ』というのができるんですが、これは一人の女優に対して有名男優10人が責めるというもので、今では考え難い企画です。それをやろうにも汁男優ばかりになってしまいますから。当時は加藤鷹、山本竜二、平本一穂と錚々たるメンバーでしたからね。僕は大好きなシリーズでした。近年のAVは極力、男優の気配を消す方向で、インタビューの時に男の声さえ入れない場合が多い。それを考えると女優1人を10人で囲んでたって凄いですよね。画面に映ってるのも自ずと男ばかりになるわけですから。

―当時はユーザーが男優名で作品を選ぶようなことも多かったんでしょうか?

東風 そうですね。チョコボール向井さんの作品なんかはその代表ですし、僕個人としても、島袋さんの「ザ・ナンパスペシャル」は全て借りてました。あと僕は吉田潤派だったんで、パッケージの裏を見てクレジットに吉田潤と書かれていたりすると、「お、これは潮吹くぞ」とか思ったりしてましたね。それが今だと、そもそも裏に男優が映っていませんし、クレジットに男優名が表記されること自体が少ないです。

―その分岐点となったのはどのあたりなのでしょう?

東風 端緒となったのは95年にソフトオンデマンドが出てきたことですね。そこから企画系が徐々に浸透していくんです。最初は徐々にだったんですが、98年に森下くるみが登場したことによって決定的になりました。要するに、めちゃくちゃ美女がハードなプレイをしている映像がセルで出回り始めたんです。大量ゴックンなんていうのもそうで、そこらへんから汁男優という存在も出てきた。ぶっかけブームですね。

要するに、90年代後半からソフトオンデマンドをはじめ、シャトルジャパン、ワープ、アタッカーズなどのレーベルからセル系作品が台頭しはじめ、同時に男優界においては汁男優、顔のない男優が台頭してきたわけです。

―基本的な質問ですが、セルとレンタルの違いはなんなのでしょう?

東風 まずモザイクが全然違う。昔のレンタルのモザイクってモザイクというか白抜きみたいなものとかありましたから。それがデジタルモザイクになり、かなりくっきり性器の形状が分かるようになった。またセルは企画も面白かったんです。ソフトオンデマンドなんかの台頭で、ユーザー側にも「セルの方が面白い」みたいな雰囲気が生まれ始めたんです。

大きな分かれ目は99年。レンタルでは川島和津実が爆発的人気を誇っていて、とはいえプレイは可愛らしく、まぁ一対一のセックスをやってた。一方セルでは森下くるみを筆頭に、超絶可愛い子が現れ始め、こちらではハードなことをやっていた。このあたりが分岐点です。

―セルとレンタルでは男優の扱いもまた違うのでしょうか?

東風 セル系は男優の顔を映さないのが基本です。例えばレンタルだと川島和津実に潮を吹かせているのは吉田潤だということが分かるんですが、セルの場合は手しか映ってないから誰が潮を吹かしてるか分からないんですね。だから男優が人気を博せたのもレンタル系までですね。ソフトオンデマンド以降は完全に女優の名前で売る時代になりました。




—AV男優史2000年~2012年



―では2000年代、いかがでしょう?

東風 基本的にはAV男優にとって冬の時代と言えるでしょう。90年代までは女優を覚醒させるのが男優の役割であったのに対し、先述したソフトオンデマンドをはじめ企画系作品をセルで売っていくというのが主流になると、企画で女優を覚醒させるようになる。すると、個性の強い男優は不要になってしまうんです。つまり、チョコボール向井や加藤鷹などの一握りの有名男優と、あとはイケメン男優の時代になる。2000年に及川なおがデビューして以降は美人女優が急増したので、対比的に吉村卓などキモメン男優が重用され人気を博すことはありますが、あくまでも例外です。

また、主観タイプの映像が主流になったこともあって、体で魅せる男優がよく使われるようになりました。男が観ていて不快感を起さない程度の細マッチョで、なおかつセックスができる男優。すると、その条件に合った4人くらいでローテーションをまわしていくという風になる。その代表がしみけん、戸川夏也、黒田というイケメン細マッチョ系です。ベテラン勢でもチョコボール向井や加藤鷹は残ってたものの、出演本数としては抜かれていく。また、加藤鷹にしても近年はドグマやエクソシスターズなどスカトロものに出演したりと、仕事のしかたは変わってきてます。それ以外で往年のAV男優を使っていたのはせいぜいミリオンやドラマ系の溜池ゴローくらいですね。

また、イケメン系男優でいえば南桂也というジャニーズ系のイケメン男優が98年に登場し、かなり活躍しました。女優から逆オファーされることもあったと聞きます。美形女優のデビュー作の相手も大抵は南さんでしたから。南さんだから顔射や口内発射OKみたいな女優もいたようなので、その意味では功績は大きいですね。小向美奈子とも絡んでいました。

―現在、もっとも人気のある男優さんといえばどなたになるんでしょう?

東風 今のトップはしみけんですよね。イケメンで筋肉質でナンパもできる。これまでの男優の良い点を合わせた完璧体のような存在で、またしみけんのハメ撮りものが人気なんです。AVグランプリでも優勝してました。いまタイトルに男優名を冠して売れるといったらしみけんぐらいです。

09年に一度、『第一回 男優-1GP 覇根』という作品が作られて、しみけん、森林原人、南桂也、クロサワ、黒田らが参加していたんですが、そこで解説をしていたのが加藤鷹や島袋浩だったので、完全に世代交代ですよね。作品としては今に珍しい男優メインの企画で個人的には面白かったんですが、一回で終ってしまいました。ただ、確かに今でもファンのいる男優は存在するんですが、これまでとは人気のありかたが少し違うんです。より機能的になっていて、キャラクターがない。キャラがたっているのはせいぜいしみけんくらいです。

先程も言いましたがスタッフロールに男優名がでないことも大きいです。あの男優誰だろうと思っても調べられない。たとえばほしのあすかがデビューした時も、個人的にはほしのあすかがAVに入って最初に誰のあそこを舐めたのかって知りたいんです。ただ、映像では腰から下しか映らない。要はAV男優が誰かとか今は誰も興味ないんですよね。

―消費者の関心が女優と企画に集中してしまっているんですね。

東風 そうですね。また企画も過激化が進んでますね。特に2000年代の中頃からはおかしくなってきている。バッキー事件をはじめ事件ばかりじゃないですか。また多様化も進んでいます。90年代頃というのはAVネタが男のコミュニケーションツールになっていたところがあるんです。ただ現在は性癖の数だけメーカーがありますし、ネット上には無修正サンプルが溢れている。そうなると話が噛み合ないですよね。僕の時代は島袋さんに憧れて、みたいなのがありましたけど、いまは企画が作品の主体ですから男優に権威がないというか、尊敬したり憧れたりというのは起こりづらい。僕個人としてはやはり寂しいですね。

―なるほど。ここまでAV男優の30年の歴史を振り返ってきたわけですが、最後に、今後のAV男優界はどうなっていくのか、東風さんの意見をお聞かせください。

東風 まず少し気になるのは女性向けAVの存在。女性向けAVでは男優が非常に人気があって、ムーミンくん、鈴木一徹くん、月野帯人くん、この3人がエロメン三銃士と呼ばれていて女性向けAVではトップ3なんです。そこに志戸哲也くんをいれてエロメンカルテットと言う場合もあるんですけど、ananのセックス特集などの男優にも使われてたりします。正直、男性にはほとんど知られてないですが、この辺がどう育ってくるか。ある種、今の女性向けAVはドラマ中心で男目線では面白くないんですが、80年代の男性向けAVに近いものはあるんです。その点、今後が気になりますね。

また、これからの予想としては男のアイドルがAV男優として入ってくるんじゃないかと思ってます。要はMUTEKIの男版。男優がこのさき日の目を見るとしたらそれしかないです。例えば押尾学とかがAVで業界復帰とかなったら男でもちょっと見たいじゃないですか。田代まさしとかにもオファーがあったって聞きますし。もうみんな女優には麻痺しちゃってますから。あるいは元アイドル同士とかね。そうすれば、AV男優の世界もまた少し盛り上がってくるんじゃないでしょうか。


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東風克智(こちかつとも)


TBSラジオ『エレ片のコント太郎』にて、エレキコミックに『アダルト鑑定士』として取り上げられたところ、スポーツ新聞でAVコラムの仕事を依頼され、ライターデビュー。現在スポニチで「男優ヤリワザ名鑑」を毎週月曜日に連載している。別名、ぶた☆とんぷう
。

東風克智(ぶた☆とんぷう)ブログ『このAVが(個人的に)スゴい!!』



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