BiS 「アイドル」という言葉のボーダーを飛び越え続けたカルテット

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アイドルという言葉の壁を飛び越え続けたカルテット

BiS

文/チェリー平尾 写真/久田悠


「グループアイドル戦国時代」などとメディアで盛んに喧伝されているように、ここ数年「歌モノ・束モノ」アイドルシーンは空前絶後の活況を呈している。様々な陣営が創意工夫を凝らしてグループをつくっては切磋琢磨している、この上なく贅沢でカオティックな状況をご存知な方も多いだろう。

そんななか、「アイドル」という言葉の定義すら揺るがしかねないほどの革命的なグループが現れた。「BiS」である。極度に高い音楽性を誇りながら、舞台上では「マ◯コ」などの言葉が飛び交う衝撃的なMCを展開し、コンドームを客席に投げるなどの気の触れた所業にもおよぶ。そして、なんと、物販スペースにはTENGAがこれ見よがしに置かれているのだ…。事例をあげていくと、アイドルではなく、まるで、スターリンの如きハードコアパンクバンドのようである。

そんな、アイドルらしからぬ狂ったパフォーマンスにとかく耳目が集まりがちな、かのグループではあるが、2011年春に上梓されたアルバムは、またいい意味でアイドルという枠を飛び越えていた。松隈ケンタプロデュースによるその音は、エモコアからスパンク・ハッピーまで縦横無尽に飛び回る。アイドルとUSインディの邂逅、アイドルと渋谷系のエンカウンターという奇跡のような光景が繰り広げられていたのである。

そんな狂気の二面性を孕んだBiSに迫ってみた。ちなみに、この取材が行われたのは6月15日。6月24日に行われた下北沢SHELTERでのライブを最後に脱退してしまうヨコヤマリナを含んだ4人による別れ際のinteractionである。



(2011年6月中旬 渋谷にて)

ーBiSの魅力って、アイドルとは思えないほど高いクオリティの音楽と、緩いパフォーマンスが同居しているところだと思うんです。


プー・ルイ(以下、プー) ありがとうございます。でも、わざと緩くしようとしたわけではないんです。振り付けの先生がいないので、自分たちで考えながらやっていたら結果的にバラバラになったという(笑)。


ー振り付けにも他のアイドルからの引用が入っていたりしますよね。『nerve』にももいろクローバーの『行くぜ! 怪盗少女』のサビの振りが入っていたりとか。


プー 分かりました? 他の曲でもスマイレージさんの振りを入れてますし、色んなアイドルさんの振りをパクっているんです。


ーパクった…(笑)。せっかく気を使って“引用”という言い方をしたのに…。


一同 (笑)。


ー自分たちで考えながらやっていくとなると、メンバー同士のぶつかり合いとかもあるんですか?


プー そうですね。メッチャ喧嘩します(笑)。この前も下北沢で殴り合いの喧嘩がありました(笑)


ー殴り合い!? 酔っ払いの劇団員みたいじゃないですか。


プー アイドルらしからぬ言葉が飛び交っていました。「ふざけんじゃねえよ」とか(笑)。まあ、真剣であるがゆえのぶつかり合いですけどね。


ーじゃあ、今までつらかったこととかもいっぱいあったんじゃないですか?


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プー・ルイ(プー)



プー うーん。そうでもないんですよね。すぐに忘れちゃうんですよ。その時はつらいと思っていたとしても。強いて言えば、ネットとかで「こんなのアイドルじゃねえ」と叩かれることですかね…。まあ、今はもう気にしないですけど(笑)


ー“アイドル”という言葉の定義が曖昧なものですからね。


プー そうですね。だから、言っちゃったもん勝ちみたいな(笑)。


ーアイドル本人がそんなこと言うなんて…。『パプリカ』のPVではメンバー同士でディープキスにおよぶなんていうとんでもない演出までありました。





プー 最初は可愛いチューだったんですよ。でも、監督さんに「物足りないよ」なんて言われているうちにどんどんエスカレートしてきてしまって。最後は二人で進んで激しいキスをしていました(笑)


ー過激なエロ現場みたいじゃないですか(笑)


プー 現場で乗せられて、どんどん脱いでいってしまう人の気持ちがよく分かりました。私たちそういう撮影したらきっと脱いじゃいます(笑)


ーすごい発言がボンボン飛び出しますね(笑)。すごい発言といえば、ヨコヤマさんがツイッターで「成瀬心美(注1)が好き」と発言したことも話題になりました。ヨコヤマさん、何故AV女優の成瀬さんのことを知っていたんですか?


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ヨコヤマリナ(りなはむ)



ヨコヤマリナ(以下、りなはむ) 私のファンの方とかツイッターのフォロワーさんにここみん好きの方が多くて、TL上に流れてくる発言から彼女のことを前から知ってはいたんです。で、ある時、ここみんのアカウントを発見して見てみたら可愛い写真がいっぱいあって、画像たくさん保存してしまいました。


ーそれって…。脱いでいる写真もですか…。


りなはむ それは嫌なんです。そのここみんはなるべく見ないようにしているんです…。


ーツイッターってそんなきっかけになったりもするんですね…。下ネタといえば、プーさんの「マ◯コ」発言も有名です。


注1:人気AV女優。ここみんの愛称で呼ばれることが多い。ハロプロやAKBなど、生粋のアイドルオタクとしても知られる。


プー それはもう、マネージャーの渡辺さんが…。


マネージャー渡辺(以下、渡辺) まだBiSを結成する前、ソロ時代(注2)の話なんですけど、それまで彼女、MCなんかもすごく固かったんです。ファンの人に話しかけられても「ありがとうございます」ぐらいしか返せないぐらいで。でも、慣れた人には「オチン◯ン」とか下ネタも言えるような子だったんですよね(笑)。だから、冗談で「ステージ上でマ◯コって言ってみろ」とけしかけてみたんです(笑)。


プー それで実際に言ってみたんです。みんなの反応にテンパりましたよ。冒頭で「よろしくお願いしマ◯コ~」って叫んだら、みんな「えっ? 」って驚いてシーンとなってしまって…。それで混乱して「マ◯コマ◯コマ◯コ」って連続して叫んだら、観客の皆さんも段々盛り上がるようになってきたんです。最後にはマ◯ココールが起きていました(笑)。


注2:リーダーのプー・ルイは元々2009年にソロ歌手としてデビューしている。


渡辺 ちなみに、その時はこれからBiSになるメンバーも決まっていて、3人が初めて見に来ていたライブだったんです。だから、みんな不安になったと思うんですよね(笑)。


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ナカヤマユキコ(ユケ)



ナカヤマユキコ(以下、ユケ) 私はそういうネタが大好きなので盛り上がりました(笑)。


りなはむ 私は超ビックリしました。


ユケ その日、りなはむは私の隣にいたんですけど、ずっと「大丈夫かな? 大丈夫かな? まずいよ…」って話しかけてきてたんですよ(笑)。


りなはむ そうなんです。ユケが隣にいたんで、ずっと話しかけていました…。


ユケ その時、のんちゃんは「マ◯コってなんだろう」って(笑)。


ヒラノノゾミ(以下、のんちゃん) 何かの聞き間違いかと思った…。





ーファンの方はなんておっしゃってたんですか?


プー 皆さんズレていく私たちの方向性を直そうと必死でした(笑)。「どうしたの? 今日だけだよ。もう言っちゃだめだよ」って。みんな本当にビックリしていたみたいです。


ー渡辺さんはそれをどうご覧になっていたんですか?


渡辺 いや、このままでいいんじゃないかって(笑)。ファンの方は動揺していたみたいですけど、それでライブに来なくなってしまう人っていなかったんです。


プー そうなんですよね。皆さん葛藤はあったみたいなんですけど、「プーが楽しいなら、俺はそれでいいと思う」と言ってくれて。


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ヒラノノゾミ(のんちゃん)

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