ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ05 【ウェット&メッシー】

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ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ05

ウェット&メッシー

WET AND MESSY : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA


 「ウエット&メッシー」とは、80年代後半に登場した比較的歴史の浅いフェティシズムである。この時期、欧米では「フェティッシュ・パーティ」と呼ばれるドレスコード(服装規約)を設けた変態たちの社交場が受け入れられ始めたころで、変態初心者にも入りやすい趣味のジャンルが求められていた。日本でも90年代に「SM」や「ボンデージ」が一般マスコミでもてはやされたとき「ソフトSM」なる言葉が使われたが、「ウエット&メッシー」もまた「痛くない」「スカトロじゃない」という意味で普通の女の子たちを口説き落とせるソフトなフェチの世界だったのだ。


 そもそも「スプロッシュ」という専門誌が1989年にイギリスで創刊されたことが「ウエット&メッシー」という新しいジャンルが認識されるきっかけだった。「濡れる」と「汚れる」を意味するその言葉に含まれるのは、着衣のままプールに入ったり水をかけられたりして「濡れて透ける」エロティシズムやその体験、また、泥やペンキ、食物などにまみれて「グチョグチョになる」行為である。それらは女を汚すという「汚辱プレイ」であると同時に、大人たちを社会的な拘束から解き放ち、童心に帰って戯れる無邪気さに溢れている。


 「ウエット&メッシー」が性的興奮と結び付いた起源として、よく取り上げられるのが「パイ投げ」である。「パイ投げ」とは、生クリームの付いたパイを他人の顔や身体に投げ付けて相手を汚す娯楽で、一種の罰ゲームのようなものだ。欧米のテレビ番組では、70年代に「パイ投げ」が多く登場するバラエティが人気を得て、パイを投げられて汚された女に子供ながらに興奮した世代が「ウエット&メッシー」というジャンルを立ち上げたという。例えば日本でも、ソフトなフェティシズムのひとつに「くすぐり」がある。日本のくすぐりマニアの多くは、アニメ「ルパン三世」の第一回目で、ヒロイン峰富士子が張り付けにされてくすぐりマシーンで「くすぐり拷問」されるシーンに子供ながらに興奮したことがきっかけで、その性癖にハマったという。「ウエット&メッシー」もまた、テレビ世代が目覚めた新興のフェティシズムというべきだろう。


 それでも、「ウエット&メッシー」には、精液や糞尿にまみれる女たちの姿がオーバーラップして見えてくる。妄想派から実践派へと移行した現代の変態たちの世界で、以前は実現不可能と思われていたハードなSMプレイを実践してしまうマニアが登場する一方で、子供の遊びのような行為に癒しと開放感を求める愛好者たちがいるのだ。ネット時代になって、フェティシズムがますます細分化されるようになってきているが、「ウエット&メッシー」は雑誌メディアが作り出したフェティシズムの最後の金字塔としてこれからも残り続けることだろう。



※新興のフェティシズム「ウェット&メッシー」では、鑑賞派、妄想派ばかりでなく実践派が多いのも特徴だ。自ら泥まみれになってオナニーに耽る単独男性の心境は如何に。仲間を募ってのメッシー同好会も盛んという。


※精液かけや小便かけも汚辱プレイであるが、「ウェット&メッシー」とは区別されている。それでも泥や食物にまみれる行為には、糞尿まみれの究極プレイへのアナロジーがあるのは確かだ。


※「ウェット&メッシー」に含まれるのは、着衣のまま入水やシャワーなどによる濡れ透け、着衣または全裸での泥、ペンキ、食物にまみれてグチョグチョになること。ストレスの多い現代人が童心に帰って解放される瞬間か。


※イギリスの「ウェット&メッシー」専門誌「スプロッシュ」は1989年創刊。それ以前にも「フィエスタ」という雑誌があったが、90年代以降はこのような行為が「スプロッシング」といわれるほどの独壇場となった。ネット登場以降は、WAMと略され、世界中の愛好者たちが集うようになった。




ケロッピー前田


1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com



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