ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ07 【針刺しプレイ】

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ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ07

針刺しプレイ

PLAY PIERCING : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA


「針刺しプレイ」の起源を求めるなら、15世紀から17世紀まで続いた「魔女裁判」の時代にまで遡ることになるだろう。当時、「魔女」の疑いをかけられた女たちに最初に行われた拷問が「針刺し検査」であった。魔女は鋭利な針に刺されても痛みを感じないと考えていたからだ。しかし、何箇所かを刺されるうちに人間の身体は麻痺し、多くの女たちは拷問に耐え抜いて潔白を示そうと努力しようとしたために、拷問はますます残虐なものとなっていった。「魔女裁判」は、1486年に出版された「悪魔の槌」が理論的裏付けとなり、キリスト教支配のもと、当時のヨーロッパ人口5千万人のうち、約2割にあたる900万人以上を殺害したという。この時代、数々の訪問の方法や器具が考案され、のちの欧風ハードSMの残虐かつ機能美的なイメージが築かれた。


「魔女裁判」に始まる妄想のハードSMが実践プレイへと変貌し、一世を風靡するきっかけとなるのが、80年代後半から90年代にかけてのボディピアスの登場であった。特に性器を金属リングが貫く衝撃は、同時期のフェティッシュ・ブームと相まって、新世代のSM愛好家たちを生み出すことになった。驚くことに、流血や痛みを伴うプレイへの女の子たちの関心は高く、自ら進んでそれを受け入れる子たちもいた。タトゥー、ピアス、フェティッシュの流行は、女の子たちに「変態」をカミングアウトするチャンスを与え、妄想のハードSMと思われてきたプレイも、合意のもとに実践可能なものとなったのだ。


 ボディピアスの流行のきっかけとなった「モダンプリミティヴズ」(89年出版)では、ピアスやタトゥーが未開の部族や世界のあらゆる民族の風習に見られるものとして紹介され、そのような行為は人間が本来持っている願望であると説明されている。同様に、「プレイ・ピアッシング」(あるいは「針刺しプレイ」)もまた、民族的な通過儀礼や宗教行為に見られるものであった。


 現代のボディピアスが西洋医学をベースに行われるように、「プレイ・ピアッシング」も、滅菌済みの注射針を用い、充分な知識と経験のもとに行われている。ボディピアスが永続的なものであるのに対し、「プレイ・ピアッシング」は一時的なものであるがゆえに、性感部分に集中的にたくさん刺したり、身体のあらゆる場所に試みることができる。複数の針を一列に、あるいは放射線状並べで刺したり、資格的な興奮も存分に楽しむことができるのだ。


 日本でも調教師ミラ狂美らが「針刺しプレイ」を導入したSM新世代として活躍している。緊縛、鞭打ち、蝋燭なども同様であるが、よりハードなプレイを求めればこそ、知識と経験が共有され、しかるべきマスターが必要になる。「針刺しプレイ」のよなリスクの伴う行為では、あらためて「調教」や「プレイ」の重みが見直されるのだ。




●「魔女裁判」における最初の拷問は針刺し検査であった。まず魔女の疑いをかけられた女は髪の毛、眉、恥毛まで剃られ、悪魔の徴がないか身体中くまなく探される。そして刑吏はたいていは大勢の公衆を前にして、針でやみくもに刺し始めるのだ。女たちは皆ひどく混乱し、痛みを感じなくなったころ、容易に悪魔の徴が見つけられてしまうのだ。

●身近な「針刺しプレイ」としては、マチ針や縫い針の使用が考えられるが、エタノールで消毒したとしても安全とは言えない。滅菌済みの注射針を使い、針の先端を深く刺さず、反対側の皮膚へ貫通させるようにする。くれぐれも実践には充分な知識と経験が必要である。

●「針刺しプレイ」は欧米では「プレイ・ピアッシング」と呼ばれ、痛みの体験としてばかりでなく、視覚的にもインパクトのあるものが多く試されている。注射針を刺した後、紐を渡してコルセット状にしたりする「コルセット・ピアッシング」など、ピアスと違い、一時的な行為であるがゆえに様々な冒険が可能なのだ。

●1975年にオープンした世界最初のボディピアス専門店「ガーントレット」は、78年にはピアス専門誌「P.F.I.Q(ピアッシング・ファンズ・インターナショナル・クオータリー)」を創刊。その16号は「プレイ・ピアッシング」大特集号となっている。乳房や女性期への「プレイ・ピアッシング」の実例が紹介され、性器ピアスの楽しみをより広げることができると強調されている。




ケロッピー前田


1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com



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