ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ14 【ビザール】

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ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ14

ビザール

BIZARRE : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA


 その昔「ビザール」という雑誌があった。その雑誌は、1946年にジョン・ウイリーによって創刊され、当初は彼自身の個人的趣味を満足させるためのものであったという。彼は編集ばかりでなく、文章から写真、イラストまで手がけて、現代のフェティシズムの原型ともいえる世界を作り上げていく。2号目より読者投稿も受け入れ、裸の女や性交を扱った直接的なエロティシズムに対し、女性ならではの服装的特徴に強い関心が寄せられ、縛られ拘束された女たちが誌面を飾り、ハイヒール、コルセット、スカートなどのアップの写真が並ぶこともあった。そして、そのベースとなったのはピンナップと呼ばれるエロティック写真である。ピンナップの全盛期は1920年代にまで遡り、裸の女たちの写真をおおっぴらに販売できなかった時代、女を知ることなく戦場に散る少年兵たちを慰めるために裸よりもいやらしくドレスアップされた女たちの独特なエロティシズムの世界が作られたのだ。しかし、ジョンの「ビザール」の世界は、ピンナップに影響されたレトロ・フェティシズムだけに固執していたわけではなかった。ラバー・コスチューム、全頭マスク、身体を貫通するピアスリングなどが、すでに現代のフェティシズムを先取りしていた。


 また、個人誌として始まった「ビザール」が、読者の投稿によってその内容を著しく豊富にし、マニア雑誌の基本スタイルとなっていったことは、「ビザール」創刊の5年後、日本の伝説的雑誌「奇譚クラブ」が創刊されたことでもわかるだろう。「ビザール」は、マニア雑誌の先駆としてのオリジナリティゆえ、すでに半世紀以上たった今見ても、そこに新たなエロティシズムを発見させられる。  


 「ビザール」という言葉は、日本語では「奇異なもの」を意味する。わかりやすく日本語に訳すなら「変態」であるが、同時に、一般にイメージされる「変態」の枠を超えた「奇異な性癖」の意味を含んでいる。ジョン・ウィリーの「ビザール」は、常に個人の性癖探求としてのマニア投稿誌であった。そして、読者がプライベートな性癖を写真や文章という形で世の中に問うことで、投稿者自身の「ビザール」が発見されることになった。マニア誌の醍醐味は、まさに投稿という形で、「その人自身の性癖と出会う」ことである。真のマニアとは、「自らの性癖と意識的に向き合うことが出来る」人たちのことなのだ。そのことは、例えば、芸術家が自己の表現物としての芸術作品に向き合うとき、自らに秘められたプライベートな変態性や異常性まで作品にぶつけることが出来なければ、真に感動的な作品が作れないように、真のマニアたちのストレートな性癖表現はひとつの芸術的行為として、時間が経つほどに輝いて見えるのだ。それほどまでに志の高い変態性癖の理想像が「ビザール」ということばに託されている。



●「ビザール」という言葉は、本来の「奇異なもの」という意味を超え、エロでグロな幅広い変態趣味を表す言葉として使われてきた。ジョン・ウイリーの成功で広まった「ビザール」という言葉のインパクトは、現在に至るまでいくもの同名の雑誌を生み出し続けている。


●雑誌「ビザール」は、ジョン・ウイリーによって1946年に創刊され、59年までに計26号まで刊行された。ジョンは、個人的趣味を満足させるため、この雑誌を出版し、編集ばかりでなく写真を撮り文章を書き、イラストまで手がけ、それがのちのエロ系マニア雑誌の基本スタイルとなった。


●「女たちが着飾るのは男たちを楽しませるためであろうか、あるいは、単に自分自身が楽しんでいるのであろうか」と、ジョン・ウイリーはコメントし、全裸の女たちよりもドレスアップされた女体のエロティシズムを追求した。ラバーやピアスまで取り上げ、現代へと繋がるエロスを先取りした。


ケロッピー前田


1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com



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