ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ15 【サイボーグ】

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ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ15

サイボーグ

CYBORG FETISHISM : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA


 「サイボーグ」という言葉を変態性癖のひとつとして取り上げることについては、異論があるかもしれない。しかし、未来のフェティシズムを考えたとき、「サイボーグ」こそが、「ボディ・モディフィケーション(身体改造)」と並び、21世紀のエロティシズムを象徴する言葉になるかもしれないのだ。


 「サイボーグ」とは、「サイバネティック・オーガニズム」の略で、人間の身体や器官に機械を組み込んだ融合体のことであり、ロボットや人型ロボット(アンドロイド)とは区別されるべきものである。サイボーグのアイデアは、以前からSF作品のモチーフとなっていたが、「サイボーグ」にエロティックなイメージが付加されるようになるのは、映画「エイリアン」のクリーチャー・デザインを手掛けたスイスの画家ギーガーが、肉体と機械が融合する「バイオメカニカル」(あるいは「バイオメカ」)というアイデアを創出してからである。ご存知の通り、彼がデザインしたエイリアンは、奇怪な外骨格の宇宙生物で、頭部は男性器のごとく、その幼体フェイスハガーの口は誰が見ても女性器とほぼ同じ形をしている。彼は、グロテスクでありながらも、体液の臭いさえ感じられそうなエロティックなモンスターを生み出し、機械と肉体が融合する「バイオメカ」のアイデアをベースに、最もわかり易い形でサイボーグ・フェティシズムという、新しいエロスの方向を提示したのだ。


 ギーガーがエイリアンで追求したフェティシズムの起源は何であろうか。ギーガーは、もともとシュルレアリズムの画家として、夢で見た歪んだ空間に生きる奇怪なモンスターを作品にしていたが、絶世の美女リーをモデルとし、エアーブラシの技術を導入することで、彼の出世作「ネクロノミコン」のシリーズが生まれる。それらの作品の中で、モデルとなったリーの裸体は、あるときは手足をもぎ取られ、壁に塗り込められ、ときには動物たちの屍とまみれ、生きながらにしてオブジェ化されていった。その世界は単なるネクロフィリア(死体愛好)を越え、生と死の狭間を揺れ動き、体液や体臭が感じられるエロティシズムに満たされていた。リーは純粋すぎる性格ゆえに自殺してしまうが、彼女とともに生まれた「ネクロノミコン」は、NYの展覧会で絶賛され、ギーガーが映画「エイリアン」の美術監督を引き受けることに繋がっていく。ギーガーが生み出した身体の変容と融合のビジョンは、ディビッド・クローネンバーグ監督作品などにも引き継がれ、SF映画の新たなエロスの方向性として広く受け入れられていった。


 近年、身体改造、美容整形、ロボット技術などの進歩により、イメージとしてのサイボーグが実現可能な時代へとなりつつある。人々の性癖もまた激変していくことになるなら、「サイボーグ」というフェティシズムも、より広く理解されていくことになるだろう。



●SF映画によるエロティック表現が、女体と機械(物質)の融合というイメージを生み、ドラッグ・カルチャーによる意識の変容と、タトゥー、ピアス、身体改造による実践的身体加工の可能性が、「サイボーグ」へのフェティシズムという新領域の確立へと導いた。


●「サイボーグ」とエロが強く結びつけられるようになったのは、映画「エイリアン」のクリーチャー・デザインを手掛けたスイスの画家ギーガーが、肉体と機械が融合する「バイオメカ」のアイデアを創出したことによる。ギーガーにかかれば、愛妻の臀部は巨大建築物に、焼却炉の投入口は女性器に見えたりするのだ。


●ダナ・ハラウェイ監修「サイボーグ・ハンドブック」によれば、フィクションと思われていた性器改造や女体改造も今や実現可能という。今世紀中には、3つの乳房を持ち、金属の長髪の女にフリークス的な性欲を感じるマニアも登場するかもしれない。


ケロッピー前田


1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com



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