ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ21 【ゴス】

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ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ21

ゴス

GOTH : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA


「フェティッシュ」から「ゴス」へ。


 ひところ、「フェティッシュ」という言葉は、「SM」に代わるキーワードとして、変態セックスに興味深々の女の子たちを強く引き寄せるためのキーワードになっていた。そして、近年、「ゴス」という言葉が同じような効力を持ち始めている。それは“言葉”の問題であって、内容の問題ではないのだが。


 日本でも「フェティッシュ・パーティ」といえば、「ドレスコード(服装規約)」があるパーティであることを今や多くの人が心得ている。同様に、「ゴス」系パーティの多くには「ドレスコード」があり、“きもいオヤジ”たちを排除することで、女の子たちの“ちょっと変態な気持ち”を表現できる場を作っている。そして、「フェティッシュ」という言葉が、「フェチ」というエロ用語と化した今、「ゴス」こそが、女の子たちの気持ちに響く言葉になっているのだ。


 ところで、「ゴス」とは何だろう?


 日本では、「ゴス」といえば、ゴスロリ・ファッションのことだろう。しかし、「ゴス(ゴシック)」の語源は、12世紀ヨーロッパ以降の中世の教会建築が、15世紀のルネサンス期に、暗黒時代の古い様式として侮蔑的に「ゴート人(野蛮な人々)の」を意味する「ゴシック」と呼ばれたことに由来する。近代到来前夜、古代ギリシア・ローマの調和した美こそが理想で、複雑で過剰な装飾にあふれた様式は、野蛮で価値が低いと見なされたのだ。しかし、ゴシック建築は、当時の職人たちの創作意欲を刺激し、素晴らしい建築物が多く残されたため、18〜19世紀には「ゴシック・リヴァイヴァル」として再評価されることになる。


 そして、21世紀の今、世界的にも、再び「ゴス」がもてはやされている。


 日本におけるターニング・ポイントに、横浜美術館で開催された「ゴス展」がある。そこでは、「ゴス」をヨーロッパ伝来の意味に立ち戻り、「生と死」「身体性」「過剰さ」を含む広義なものであるとした。そして、その綯い交ぜになった世界観が、日本のアングラ文化に通じるという意見もあった。一方、欧米では、マリリン・マンソンに象徴される現代の「ゴス」が、非常にわかりやすい形で受け入れられている。そして、従来の「フェティッシュ・パーティ」のイメージがラバーやレザーの20世紀的なSF宇宙映画の世界観だとするなら、「ゴス」のイメージは「ヴァンパイア(吸血鬼)」やゾンビが次々に現れるホラー&スプラッター映画の世界観なのだ。そして、欧米でも、世代交代によって、「フェティッシュ」から「ゴス」への移行が進んでいる。しかし、「フェティッシュ」が廃れたわけではなく、言葉やイメージの転換に過ぎない。そして、日本では、女の子たちに秘められた捕らえ所のない“変態願望”が、「ゴス」という言葉に託されて、ユラユラと浮遊しているというわけなのだ。



●日本において、「ゴス」が「フェティッシュ」に代わる地位を獲得する決定的な出来事となったのが、「ゴス展」(横浜美術館:07年12月22日〜08年3月26日)だった。開催期間中、「ゴス展に行こう」がSM好き女の子の口説き文句になっていたのは事実だ。


●欧米での「ゴス」とエロとの接点のひとつに「ヴァンパイア(吸血鬼)」がある。身体改造アーティストにして写真家のルーカス・スピラは、NYのヴァンパイア・チームの写真集を出しており、ここでも「フェティッシュ」から「ゴス」への移行がよくわかる。


●「ゴシック」は、12世紀ヨーロッパの建築様式に始まり、その過剰な装飾性は「死」のイメージと結び合わされることで、キリスト教のダークサイドを表現していた。現代においては、ロックスターのマリリン・マンソンがその最もわかりやすい象徴である。


●欧米フェティッシュ・シーンでも、ファッションから入門したゴス系の若い世代が目立つようになっている。日本でも、「フェティッシュ」が「フェチ」というエロ用語と化してしまった今、「ゴス」こそが女の子たちの耳に格好良く響く言葉となっている。

ケロッピー前田


1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com



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