ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ27 【フリー・セックス】

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ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ27

フリー・セックス

FREE SEX : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA


「みんなで自由にセックスして、気持ち良くなれば、世界も平和で、誰もが幸福!!」  

 思っていても、口にすることが躊躇われてしまうようなことをはっきりと言ってくれたのが、「フリー・セックス」の提唱者ウィリヘルム・ライヒだ。


 彼の師であるフロイトは、精神分析の開祖として知られ、「あらゆる精神病の原因は性的欲求不満にある」として、精神分析によって、その原因を特定することで治療できるとした。ライヒはその理論をさらに押し進め、独自の「オルガスム理論」によって、戦争から貧困、政治から経済の問題までのすべてを「性的欲求不満の解消」で解決しようとした。実際、ライヒは、精神的緊張状態を訴える患者たちにマスターベーションのやり方を指導し、女性にオルガスムを体験させる「性感マッサージ」を編み出し、自ら女性患者たちの治療にあたり、イカせまくっていた。


 第二次大戦を挟み、ヨーロッパ各地からアメリカへと幾度もの移住を繰り返しながら、激動の時代を“セックス伝道師”として生き抜いた彼だが、その過激さゆえにアメリカ政府に身柄を拘束され、57年に獄中死。ライヒが再評価されるようになるのは、60~70年代、「ポルノ解禁」から「性の解放」へと時代が動き始めてからである。


 「ポルノ解禁」への大きなきっかけは、ナチス台頭の原因を国民の性生活の抑圧にあるという反省が起こり、大戦に巻き込まれて大きな痛手を追った北欧からそのような“進歩的”な変化が起こり、欧米全体に波及していった。また、当時激化しつつあったベトナム戦争への批判や学生運動の高まりから、アメリカではカウンター・カルチャーが起こり、「反戦=平和=フリー・セックス」という流れで、女の子たちが主体的に“ただマン”を実践することこそが平和を願う時代の象徴となったのだ。


 日本でも、68年の東大・安田講堂占拠事件の際には、ろう城していた男子学生たちのために慰安婦さながらに肉体を提供する左翼女学生たちがいたという話も聞く。


 そんな時代を経て、現代のような性に解放的な世の中になったわけであるが、今でもネット情報などでは、北欧スウェーデンでは「フリー・セックス」が認められているので、若い女の子たちと“ただマン”ができるなどと、都市伝説的な盛り上がりを見せている。事実、北欧は性教育が盛んで、学校で避妊や性病の知識ばかりでなく、ハウ・トゥー・セックスまで詳しく教えている。しかし、実態は、女主体の「フリー・セックス」の考え方が受け入れているということであり、誰でもヤらせてくれるわけではないだろう。そういう意味では、「フリー・セックス」とは、“売春”の反対語であり、男と女が対等な立場での自由恋愛と自由セックスを楽しむという、ライヒ先生が目指した理想的未来の形でもあるのだ。



●「フリー・セックス」とは、誰とでもヤルだけじゃなく、“ただ”じゃないと“フリー”とはいえない。その提唱者ウィルヘルム・ライヒ(1897-1957)は、あらゆる社会的問題を「性的欲求不満の解消」で解決しようとした。


●社会主義革命を訴えたカール・マルクス(1818-1883)の思想と、フロイトの「オルガスム理論」との合体が、ライヒの「フリー・セックス」であった。そのアイデアが、60~70年代の「性の解放」を支えた。


●現代は、“セックス依存症”の女たちが、欲しくなると遠慮なく挑発の視線を送ってくる時代である。まさに「フリー・セックス」が実践されているようだが、“無料(ただ)”でなければ、進歩的とは言えないだろう。



ケロッピー前田


1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com



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