サンキュータツオ BLのススメ 2

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?BLもロボットや魔法のようなファンタジーとして受け入れていたんですよ


ーBL漫画とゲイ漫画の話で言えば、僕も大好きなんですが、よしながふみ先生の「きのう何食べた?」※2あれはBL漫画ではなくセックス描写のないゲイ漫画だと思うんですが、いかがでしょうか。


※2 「きのう何食べた?」よしながふみ著。週刊モーニング連載中。ゲイカップルの日常を自炊を通して描いた人気作。料理レシピ本としてもかなり実用的。


サンキュータツオ マーケティング上では、「きのう何食べた?」はBLっていうジャンルには入ってしまうんです。でも一つの発見があって…僕は「BLとホモやゲイは何が違うんだろうか?」「それを愛好する人は同性愛者じゃないのか」「三次元の男同士が絡み合っても萌えないのだろう、なんで二次元なんだろう」ということをずっと考えていたんですよ。そこで原点に立ち戻って、実写じゃなく何故、漫画やアニメに惹かれるのか考えてみたときに、理由が2つあって、キャラクターが記号化されていてること、もう一つは、ファンタジーだということなんです。プリキュアで女の子が魔法を使うことや、ガンダムでモビルスーツが出てくるように、現実では有り得ないファンタジーですが、皆、すんなり受け入れているじゃないですか。「BL」もロボットや魔法のようなファンタジーとして受け入れていたんですよ。だから、実際に男同士でヤッているのとはワケが違います。現実にモビルスーツがあったら、ビビリますよ(笑)現実にないから、良いんです。有り得ないものを見ている、という要素の方が僕の中では大きくて。


ーあぁ。なるほど…。


サンキュータツオ 「BL」の世界でも、男同士で愛し合っても、あいつはホモとかゲイって厳しく言われない架空の世界観は多いです。でも、よしながふみ先生の作品は…あるんです。


ーそれは意図して出してるんでしょうか。


サンキュータツオ 意図して出してますね。出してない人は、意図して出してないです。僕の中では、ホモとかゲイという言葉を意図して出していない作品はファンタジーで、出してるものは実写寄りです。日常世界で男同士が愛し合ってたら、「あいつはゲイだから~」とか言うと思うんですよ、でも漫画やアニメの中ではないんです。


ーファンタジーの中での世界だから…。


サンキュータツオ そう、そこで僕はあくまで、「ファンタジーとして描かれているBLがとっても好き」ということを解ったんです。


ーそれは、タツオさん自身が同性愛者でもないし、その道を通ってないから楽しめるんでしょうか。


サンキュータツオ 僕が同性愛者だったら、楽しんで受け入れられないこといっぱいありますよ(笑)。BLって男女の恋愛、少女漫画に出てくるような話を、同じプロットで男同士でやってるだけなんですよ。では、何が良いのか。そこに、男女のカップルには無い、男同士だからこそ生まれる迷いや葛藤が生まれて、男が苦しむ姿が見れるんですね、そこで「なんて可愛いんだろう…」となるわけです。


ー確かに(笑)。


サンキュータツオ 僕、男子校育ちなんですが……これもゲイと間違われる大きなミスリードになっちゃうんですけど(笑) 恋愛に関して、弱いところを相手に見せないっていう感覚なんなんですよね。普段見れない、そういう男の内面をBLの世界では僕ら覗き見できるわけですよ。それはファンタジーだし、BLの二次元性だと思うんです。


ー凄く納得しました。頭の中で完全にファンタジーの世界と割り切っているから楽しめるんですね。


サンキュータツオ プリキュアです。魔法です。「有り得ないこと」が起きてるんですから。でも、ここで一般の人を難解にさせているのは、腐女子の方って凄く貪欲な生き物なので、二次元でBLの良さを知ると、二次元の良さを三次元にも求めてしまうんです。仲の良いサラリーマンやアイドルグループを見たら「あの二人、できてたらいいのに…」という願望が生まれてしまうんですね。


ー関係妄想ですね。


サンキュータツオ これは難しい話になっちゃうんですけど、アニメや漫画って僕にとってはイデアなんです。理想郷なんですよ。これが理想。三次元はどうやっても敵わない。


ーはぁ。


サンキュータツオ だって僕の好きなキャラは、排泄しないですからね。三次元はしますから。キャラぶれしてるんですよ。デザインが甘い(笑)だから、二次元と三次元って決定的に違うんです。


ーあははははは(笑)


サンキュータツオ でも、腐女子の人は「絵崩れしてるのが三次元」ぐらいに受け入れられるんです。


ー許容範囲が広いんですね。


サンキュータツオ それの更に先の先に、「擬人化」があって、コップと灰皿(机の上を指差して)で「できてたらいいのに…」と脳内で近づけるんです。


ーおぉ。


サンキュータツオ オードリーは腐女子に異常な人気があるんです。仲の良いコンビは見ててやっぱりほっこりしちゃうんですね。僕らだって、テレビで見ている好きな芸人が「あの二人実は裏で仲悪いらしいよ」って聞かされると、ちょっと凹むじゃないですか。「プライベートでも仲良いらしいよ」って聞くと、やっぱいいな、って思うじゃないですか。


ーそれは、わかります。


サンキュータツオ 問題はその「程度」なんですよ。オードリーなんかは、ネタに「本当に嫌いだったらお前と漫才やってねぇよ、ハハッ」っていう下りあるじゃないですか。あれでハートを射抜かれてる女の子たちがいかに多いか。「あぁ…やっぱりできてたんだ」って(笑)


ーなるほど…凄まじいですね。

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サンキュータツオ

漫才師。一橋大学非常勤講師。居島一平とコンビ「米粒写経」として活動。オフィス北野所属。
マキタスポーツ、プチ鹿島と供にポッドキャスト「東京ポッド許可局」を配信。
とんでもない数の熱狂的リスナーを集める。理屈と情熱で完全武装され たアニメ、BL、漫画、落語についての知識は他の芸人の追随を許さない学者芸人。猫がとっても好き。

サンキュータツオの優雅な生活

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