《ボンクラ童貞編集者からの人生相談》 ケロッピー前田編 「ところで包茎の皮でサスペンションしてみない?」

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ボンクラ童貞編集者からの人生相談

ケロッピー前田

ところで包茎の皮でサスペンションしてみない? 

取材/童貞編集者チェリー平尾



女性とキスはおろか、話すだけでも緊張してガチガチになってしまう童貞編集者。その女性に対する免疫の低さは、プライベートどころか業務にまで支障をきたす有り様であった。今までさしたる困難もなく、のうのうと生きてきたボンクラ青年に降りかかってきた人生最大の試練。壁にぶちあたり途方に暮れた彼は、悩みを解決する光明を得るべく、待へ繰り出していったのだ。果たして彼は救われるのだろうか? 明日はどっちだ?




……童貞の部屋にようこそ(笑)。女の子の前に出るとお話をすることもできなくなってしまう、哀れな童貞に愛の手を差し伸べてください。


ケロッピー ペット飼ってる?


……はぁ、いきなりペットの話ですか? 魚とかザリガニなら飼ったことがありますけど……。


ケロッピー 人ってさぁ、犬とか猫とか爬虫類とかいろいろなペットを飼っているじゃない。なぜペットを飼うかというと、エサをあげたり、糞の世話をしたりするだけじゃなく、結局コミュニケーションをとりたいわけでしょ。実はその人がどんなペットを飼っているかで、その人のコミュニケーションスタイルがわかるんだよね。犬とか猫は撫でたり触ったりできるけど、魚は観賞するだけでしょ。つまりコミュニケーションのスタイルにも幅があるということです。女の子と話すのが苦手だったら「見る」だけ、というコミュニケーションの取り方もアリなわけ。


……見るだけですか?


ケロッピー その「見る」という行為の中にも「距離」という問題がある。ボクは写真を撮っているから、距離というものをすごく意識するわけ。覗き見みたいな撮り方もあるし、仲良くお話しながら撮る方法もある。もっとアップを撮りたいな、と思ったらさらに相手に踏み込んでいかないとならない。何が言いたいかというと、「異性と何を話すか」というのは非常に末端的な問題で、極端な話、異性とある一定の距離をとって、見ているだけの恋というのもアリなんじゃないかと思うわけですよ。君の場合、もしかしたら距離の取り方に失敗しているんじゃないかなぁ。その辺をもうちょっと自分の中で整理してみたらどうですか?


……なるほど。僕が『AKB48』などのアイドルが好きというのは、つまり見ているのが好きなわけで、要するにザリガニスタイルなわけですね!


ケロッピー 女の子との距離の取り方を「見てあげる」ということに限定しちゃえばいいじゃん。全ての女の子がおしゃべりが好きなわけじゃないし、見られることが好きなコもいる。ザリガニを犬のように飼おうとしている、という間違いがあるような気がしますね。
相手に合わせているだけでは恋愛は成立しません。つき合い方にもいろいろあるのに、「女の子」をひとまとめに考えているからアンマッチングになってしまう。まず、自分にあった女の子をチョイスすること、そして正しい距離でスタートさせればうまくいくと思いますよ。ところで、身近にいる女の子を好きになったことはあるの?


……はい。大学のときに同じゼミだった女の子を好きになったんですけど、彼女が複数の男性とつき合っていることがわかって、こっちがなんとなく引いちゃいました。


ケロッピー ストーキングとかしなかったの?


……は?


ケロッピー ストーキングだよ。何でしないの? それっておかしいよ。「好き」という表現はいろいろあるでしょ。覗きとかもそうだし。何でもいいから行動すればいいじゃん。それが愛の表現なんだから。


……表現と言われましても……。


ケロッピー さっき言った「観賞する」というスタンスだと、常に相手が見える距離にいないと成立しないでしょ。自分からコミュニケーションをギブアップしてるよ。それじゃ、そのコのことが好きじゃないみたいじゃん。ゼミが一緒なんだから住所だってわかるでしょ? 好きな相手の個人情報はとりあえず全部収拾しなきゃ。それってしゃべる前のことじゃん。そういうこともしないで何をしゃべったらいいのかわからなくて困っている、というのはちょっと愛した方が足りないとしか言えないでしょ。とにかく引いちゃダメだよ。ストーカーでもいいじゃん。まぁ、誰でもつけられたいと思っているわけじゃないけど、その人が自分のことを好きだと言ってくれて、後をつけているんだったら、「じゃ、お家に入る?」って言ってくれるかもしれない。銀行強盗が人質を取ってたてこもっていたら、人質が犯人に同情して、心のコミュニケーションが成立した、なんて話も実際にあるわけだからさ。あっ、もちろん法律を逸脱するようなことはしちゃダメだよ。


……なるほど。目からウロコが落ちました! ところで、ケロッピーさんは身体改造の専門家ということでお聞きしたいんですが、あの~、僕は実は、ほ、包茎なんですけど、そのせいで女の子にもう一歩踏み込めないのかなぁと思ったりしてるんですが、でも手術は怖いし、親からもらった体に傷をつけていいものか悩んでるのですが…。


ケロッピー いっそ、男性とヤッてみるくらいのことをしてみたら?


……はぁ!?


ケロッピー 他の男性の勃起した性器を見る機会ってあんまりないでしょ。AV男優のリッパなものばかり見ているからコンプレックスになるんだよ。みんな多かれ少なかれ身体的なコンプレックスって持っているもんでしょ。一度じっくり他の男性の性器を見たほうがいいと思うよ。そんなに気にすることもないことを気にしているのは、要するに情報が不足しているということ。「ああ、俺もみんなと変わらないんだ」ということがわかればコンプレックスなんて無くなるよ。


……なるほど。でも、身体改造をしているケロッピーさんは「手術なんか恐れずにどんどんやれ」と言うのかと思ってました。


ケロッピー 包茎手術の必要性を煽る宣伝は、性器に悩みを抱えた人達のコンプレックスをますます肥大させているわけじゃない。ボクに言わせるなら「包茎手術するくらいなら、ピアスをいれろ」と。包茎手術というのは世間的に出来上がったスタンダードへ合わせろ、ということでしょ。ボクらがなぜ身体改造をするのかというと、そういう洗脳を解くためなんだよね。身体を改造するってことは、ひとつの方向に向かっているんじゃなくて、多様性を広げる行為なんです。タトゥーにもいろいろな柄があったりするし、身体改造のしかたは人それぞれなわけ。それに、そういうのに興味がある女の子とコミュニケーションをとりやすくなるから、タトゥーやピアスをしていると公言すれば、あるタイプの女の子たちには確実にモテますよ。


……ふむふむ。なるほど。


ケロッピー まぁ、包茎手術をするのもいいんだけど、もっと別の経験から自分を変えていくのもアリだよね。例えば、女装とかさ。女装すると女の子の気持ちがわかるようになるから、女の子にモテるんだよね。男性からジロジロ見られたり、あとをつけられたりする気持ちもわかると思うよ。女の子としてはそっぽを向かれるのが一番さみしいことなんだよね。女の子が一生懸命お洒落しているのも、ちょっとエッチな恰好をするのも、結局はコミュニケーションを欲しているからなんだよ。


……身体改造に女装かぁ。ボクにはちょっとハードルが高すぎますよ。だって、ボクは童貞を捨てたいだけなんですよ。


ケロッピー そういうこだわりが良くないんだよね。あの、これは2年前くらいの話だけどさ、コアマガジンの『ブブカ』という雑誌に、ある童貞の新人がいたの。で、彼が「童貞を卒業する前に、サスペンションの初体験をしたい」とボクに言ってきたわけ。じゃあ、実際にやってみようということになったんだけど、観客は「童貞は根性なしだから、上がらないだろう」と思ってたんだよね。だってさ、フックを体の皮膚に貫通させるのだけだってけっこう痛いからね。そんなに簡単なことじゃないんだよ。


……麻酔したり、氷で局部を冷やすとかするんでしょ?


ケロッピー そんなことしませんよ。マラソンで言うと、本当はつらいんだけど、脳内麻薬のせいでいくらでも走れる「ランナーズハイ」というモードに入る、ってことがあるでしょ? 「サスペンション」も、痛いけど我慢できる「ペインコントロール」状況に持っていくわけ。そこに入らないと絶対に上がらない。人間は耐えられない痛みまでいくと気絶するの。だからボクらがやっていることは、気絶しない範囲でいかに痛みをコントロールするかということ。


……壮絶な世界ですね……。


ケロッピー で、彼は、そのとき初対面の女の子とたまたま2人一緒に吊られることになって、これが見事に上がったのさ。しかも、吊られたまま2人仲良くなっちゃって、手をつないだり、抱き合ったりし始めて。2人とも初めてのサスペンションで、宙に浮いている間に気持ちがシンクロしちゃったんじゃないかな。それを見ていたお客さんの反応も良くてね、そんな光景を見てみんなすごく感動してた。


……いい話ですね。この世の中には童貞なんかどうでもよくなるくらいのことがたくさんあるってことですね。僕にはサスペンションは無理ですが、小さいタトゥーくらいなら入れてもいいかなと思えてきました。


ケロッピー まぁ、難易度の低いものからじょじょに入っていくのもいいんじゃない? この世界、奥は深いから。


……性器を改造している人もいるんですよね。例えば真珠を入れたり……。


ケロッピー それは古風な日本の改造例だね(笑)。実はボクも性器改造をしてて、陰茎の裏筋を尿道に沿って切開しているんだ。


……うっ、痛そう……。ちゃんとおしっこできるんですか?


ケロッピー まったく問題ないよ。ボクは身体改造の世界大会にも行っていて、男性器から火を吹く人、乳首を切除した人、去勢のために切除した性器を食べちゃった人、そして、自分の意志で手足を切断しちゃった人とも会っているんだ。みんながいろいろな人間になって、多様化していこうという欲求なんだよ。


……それはDNAの制限から開放されたいというか……。


ケロッピー というより、DNAの指令に従っているんじゃない。身体の改造への願望は太古からあるものだから。頭蓋骨に穴を開ける「トレパネーション」も人類最古の外科手術なんだよ。


……えっ、何のために頭蓋骨に穴なんて開けるんですか?


ケロッピー 第3の目を開き、意識を覚醒させるともいわれるけど、よくわかっていない。脳内の血流量がグンと上がり、サイケデリック・ドラッグの絶頂感がずっと続いているような状態になるという説もあるんだ。インカの遺跡から穴が開いた頭蓋骨がたくさん出土しているけど、それが覚醒のためのものか、戦闘による頭部損傷の治療によるものかは未だに不明なんだよね。覚醒のために穴を開けた人達の取材をしてみると、みんなファンキーで面白いんだ。でも、穴を開けたからファンキーになったのか、もともとそういう人だったのかは、わからないんだけどね(笑)。


……ほんと、包茎の皮を取るなんてことは、ものすご~くちっぽけなことだということがよ~くわかりました。本日はありがとうございました!


ケロッピー ところで、包茎の皮でサスペンションしてみない? たぶん世界初だし、途中で千切れたらちょうどいいじゃない(笑)





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photo by keroppy maeda




(この記事はコアマガジン刊『スーパー写真塾』からの転載です)

ケロッピー前田

1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com



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