エロ年代の想像力 第十八回

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エロ年代の想像力

#18 『 奥様は魔法使い 』

アニメルカ出張版




 以前、新房昭之/南澤十八の特集をやったが、18禁アニメ界を見渡せば、関連深い作家がそこかしこに散見される。例えば南澤『誘惑』や新房の『コゼットの肖像』『月詠』に参加し、一般/18禁アニメを股にかけて活躍するアニメーション作家・米田光宏もその一人であろう。



『奥様は魔法使い』
(監督:米田光宏、製作:デジタルワークス、全2巻、2006年)




 ジャジーな音楽の流れる中、月の怪しく光る夜の街から箒に乗った魔女/魔法使いが現れる。そんな唐突なアニメーションは、ナレーションによる「奥様の名前は~」とのキャラクター紹介へとなだれ込んでいく。この導入はアメリカのテレビドラマ『奥さまは魔女』(1964-72年)そのものであるが、しかしその後に響くのは「でも、すこーし違っていて〔中略〕旦那様の精液でエネルギーを得る、奥様は、魔法使いだったのです!」というパロディ化された言明だ。


 この『奥様は魔法使い』の監督は、南澤の『誘惑』や新房の『コゼットの肖像』『月詠』に参加し、その影響下にあるとも言われる米田光宏である。また、パロディ元の『奥さまは魔女』は当時日本でも放映され、その高い人気が女児向け魔法少女アニメの先駆である『魔法使いサリー』(1966-68年)を準備した。これらの材料からは、南澤/新房周辺の作家が、魔法少女アニメの総括を謳う『魔法少女まどか☆マギカ』以前に既にその本当の原点へと立ち返っていた、という歴史的事実が確認できるだろう。それもエロとパロディという、如何にも南澤/新房的な手法においてである。


 もちろんこの呼応は、米ドラマ『奥さまは魔女』のOPはアニメーションであったがゆえにパロディ的アニメ化『奥様は魔法使い』への移行がスムーズに進んだことと同様、偶然の一致ではあるが、『まどマギ』のラストにおいて回帰した原点が、聖獣=性獣(しかも獣と言いつつ、その形象は亀頭のような頭部を持つ男)と魔法少女が戦う世界であった点は示唆的に見える。つまりそこで行われていたのは、エロスによる魔法少女史の上書きであるが、それは『奥様は魔法使い』で米田が志向した挑戦そのものであったと言える。





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奥様は魔法使い 前編 [DVD]




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奥様は魔法使い 後編 [DVD]




 以上0721字。なお魔法少女アニメの歴史に関しては、泉信行「魔法少女アニメの過去と未来――『魔法少女まどか☆マギカ』が描けなかった少女たち」(『アニメルカ vol.4』所収)が、いま世界で最も詳細な論考として参考になる。また、石岡良治×反=アニメ批評「アニメルカ白熱教室――トランスメディアな物語論へ向けて」(『アニメルカ vol.4』所収)においても、文化史的な観点から魔法少女の歴史を再検討している。それらはCOMIC ZINメロンブックス等で既に購入可能なようだ。詳細はアニメルカ公式ブログを参照されたい。



PROFILE
反=アニメ批評(@ill_critique
アニメ批評同人誌『アニメルカ』責任編集。
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』責任編集。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。また『アニメルカ vol.4』(特集:岡田麿里とアニメの物語論)も委託・通販が開始されている。
『アニメルカ』オフィシャルサイト
反=アニメ批評



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