エロ年代の想像力 第十九回

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エロ年代の想像力

#19 『 擬態催眠 』

アニメルカ出張版




 ゼロ年代のエロアニメにおける隠れた傑作として(主に筆者のなかで)名高い『催眠学園』??で用いられた催眠というガジェット、村越進太という主人公の名前などの表面的な設定を継承しつつ、ストーリーを一新したシリーズ的続編。それが今回取り上げる『擬態催眠』である。


 『催眠学園』に引き続き監督の杉並大福がキャラクターデザイン、作画監督、絵コンテ、さらに原画にもクレジットと、まさに獅子奮迅の活躍を見せている本作。その内容は前作と同様にやはり非常に優れた、単にユーザーの性的欲求を満たすだけにはとどまらない、批評的な作品だと言えるだろう。


『擬態催眠』シリーズ
(監督:杉並大福、製作:バニラ、全2巻、2011年)



 本作のテーマはいわゆる、催眠による「なりすましセックス」である。


 主人公の村越は宇宙人(!)によって男性器に改造手術を施され、獲得した催眠の力を駆使し、担任の女教師の夫や、クラスメイトのレズカップルの片割れなどのキャラクターになりすましてセックスに及ぶ。


 また、下巻で村越は自身を嫌悪するヒロインを攻略するためにユウタという架空のキャラクターを作り出し、ヒロインがユウタに惚れるように様々な自己演出をし、そして思惑通り結ばれる。しかしユウタを演じ続ける空しくなった村越は、ヒロインにユウタの存在が仮構に過ぎなかったことを暴露してしまい、その結果逆上したヒロインにナイフで刺されてしまう。


 このような「なりすまし」によってヒロインを攻略し、セックスに至る本作の作品構造は、プレーヤーと作中でヒロインと結ばれる主人公=キャラクターの同一化が目的となっているオタク的作品(エロゲや萌えアニメ)のシミュレーションと見なすことが出来るだろう。


 本作はプレーヤー:キャラクターの間に村越というフィルターを挿入することで、従来は隠蔽されているプレーヤーのグロテスクな欲望を可視化させており(特に本来男性が存在しないはずのレズセックスにおいてそれは顕著である)、そして最終的にヒロインが「村越=プレーヤー」より「ユウタ=仮構的キャラクター」の存在こそが現実的であると見なし、村越の排除を試みたように、プレーヤーとキャラクターの同一化は所詮フィクションに過ぎないという極めて自明な、しかし決定的な断絶を突きつけている。


 暴力的な、そして届き得ない。杉並大福は美少女キャラクターを消費するオタクに内在する欲望の本質とその空転を本作で鮮明に、批評的に抉り出しているのである。





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『擬態催眠』 前編




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『擬態催眠』 後編



 以上0721文字。


 なお、本作に勝るとも劣らない前作、『催眠学園』のレビューは思想誌『エロ年代の想像力』に掲載されている。夏コミ(アニメルカ製作委員会、三日目、東P-02a)に向けて増刷も行われる可能性があるため、興味のある方は訪れてみて欲しい。


PROFILE
反=アニメ批評(@ill_critique
アニメ批評同人誌『アニメルカ』責任編集。
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』責任編集。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。また『アニメルカ vol.4』(特集:岡田麿里とアニメの物語論)も委託・通販が開始されている。
『アニメルカ』オフィシャルサイト
反=アニメ批評