エロ年代の想像力 第二十一回

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エロ年代の想像力

#21 『STAR☆jewel』劇場公開イベントレポート

アニメルカ出張版


 18禁アニメ鑑賞とは、得てして孤独な営みであった。作品が視聴される環境は多くの場合、他者による不意な侵入の恐れがなく、音漏れの不安もない、服をはだけても寒すぎず、体が火照っても暑すぎないといった空間管理がなされるだろう。外部と隔離された徹底したプライベートスペース。エロ年代的視聴環境といえば、このような条件を満たす空間設計のこととされてきた。


 しかし、それは必ずしも18禁アニメの条件とはいえないだろう。10月14日に開催された『STAR☆jewel』世界初18禁アダルトアニメ劇場公開イベントは、その条件を問いただす挑戦としてあった。以下に続くは、その場に勃ちあったイキ証人による、ささやかなレポートである。


 渋谷は円山町のラブホテル街をヌけ、映画館「オーディトリウム渋谷」の前に来ると、そこにはすでに怪しい人だかりが形成されていた。天気はあいにくの雨模様で、道行く女性の体も濡れ濡れの状態にある。私はそそくさと列の最後尾に並び、万が一に備え、「これは何の列ですか?」と尋ねられたときの回答を脳内でシミュレートする。「はい、私は世界初18禁アニメ劇場公開イベントに並んでいます」。もし濡れ濡れの女性から声をかけられたら元気よくそう応えよう??そんな性的願望は、行列の先に待ち構える会場受付に若い女性が配されるというサービスによって、半ば達成されることとなる。予約者たちに冷ややかな視線を向けるその受付嬢へ、18禁アニメを嬉々として鑑賞にきた男の性を笑顔で告げ、その蔑んだ瞳を反芻しながらを颯爽と入り口をくぐる。


 会場に広がる経血色の座席がギシギシと軋みながら埋まっていく。後部にはカメラを構えた取材クルーが陣取り、もはや作品と自分たちのどちらが晒し者かわからない環境が整備される。そのことを不安に思う観衆への配慮であろうか、女性によるアナウンスで、本日はビデオカメラ・スチールカメラでの場内撮影があるがしかし、万が一お客様方のご尊顔が写り込んでしまったとしても、撮影されたその気色の悪い画像には「弊社のお家芸でありますモザイク処理」をほどこすとのフォローが入る。なるほど、これもまたエロ年代的条件であろう。わいせつ物をモザイクなしで露出させることは許されない。


 なおこのレポートは、18禁アニメ劇場公開イベントという試みをめぐるもので、その後に上映された作品内容自体に踏み込むことは、パッケージ発売以後にマワサれることとなる。だから、「劇場公開においては家庭での消費とは異なり、腕の筋トレと並行して鑑賞する者はおそらくいなかった」という会場の様子には触れようとも、「同時に作品のクォリティにおいても手ヌキはなかった」ということまでは、本来語られるべきではないのかもしれない。そもそも、先行上映に対する反応で、そのクォリティに驚愕するといった振る舞いは、もはやひとつのクリシェでしかなく、言うなればヘテロセクシャルや正常位のごときものでしかない。この『STAR☆jewel』という「二人のフタナリが同時に相手に挿入しかつ相手に挿入されては(脚本家はこの超常的な体位のことをクロスカウンターと言い表していた))射精を競う」、性技と精子をかけたバトルを描く超大作に向けた言葉としては不感症すぎるだろう。作品に向けたより性実な語りは、まずは12月8日発売のBD/DVDを購入するところからはじまるはずである。




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STAR☆jewel公式サイト




PROFILE
反=アニメ批評(@ill_critique
アニメ批評同人誌『アニメルカ』責任編集。
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』責任編集。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。また『アニメルカ vol.4』(特集:岡田麿里とアニメの物語論)も委託・通販が開始されている。
11/3の文学フリマ(http://bunfree.net/)出展 ブース番号オ-33
『アニメルカ』オフィシャルサイト
反=アニメ批評