エロ年代の想像力 第二十五回

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エロ年代の想像力

#25  『魔法戦士スイートナイツ』

アニメルカ出張版


 『魔法戦士スイートナイツ』はまさに「輪姦の理」によってその幕を開ける。魔法少女がいずれその中にとりこまれる存在であるという真理を、まず冒頭で示してみせるわけだ。



『魔法戦士スイートナイツ』
(監督:粟井重紀、製作:アルコ&EVE、全2巻、2004年)




 魔導シンジケート・ゼーロウの幹部メッツァーは他の数々の魔法少女と同様にスイートナイツの2人、スイートリップとスイートキッスを陵辱及び調教せしめるべく彼女らの学校へ潜入する。火村竜人と名を変えたメッツァーを襲う魔獣に対し2人は「スイートマジカルセンセーション!!」と掛け声をあげ変身、そして案の定堕ちる。


 この物語には「正義」という言葉が頻出する。エロアニメを嗜むものであれば、これが「性戯」と読み換え可能であるということは、わざわざ指摘するまでもない一般教養であろう。しかし常識を省みることで新たに見えてくる痴平線があることもまた事実。例えば自身に奉仕するスイートリップをみながらメッツァーはこう言う。「正義の美少女戦士のくせに、なかなか悪くない舌使いだ」。また公衆の面前で自慰行為を強要された彼女を見ながら目撃者は「正義の味方だろ? あんなことしていいのか!?」と動揺する。本作において男性キャラは事の本質に気がついていないことがわかるだろう。「性戯の美少女戦士」「性戯の味方」だと理解していれば、彼女たちにこのようなギャップを見出すなんて、あるわけない。


 一方で彼女たちの上司であるスイートルージュは、メッツァーに何故部下を助けなかったのかと問われ答える。「立派な性戯心(おそらく陵辱の気配を察知し発生するスイートでマジカルなセンセーションのことを指していると思われる)を持っていても、魔法少女としてはまだ未熟」「実践で鍛えることにした」。魔法少女の上司が掛ける言葉として、これほど適切なものはないだろう。魔法少女たちを「輪姦の理」に導くのは、いつだって彼女たちの保護者なのである。そう、『魔法少女まどか☆マギカ』における、鹿目まどかのように。




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『魔法戦士スイートナイツ ~ヒロイン凌辱指令~Ⅰ』

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『魔法戦士スイートナイツ ~ヒロイン凌辱指令~Ⅱ』



 以上、0721文字。最後に一つ秀逸なセリフを紹介しよう。上述の公開自慰のあと、実は人質がメッツァーの性奴隷だったとばらした後、彼はこう述べる。「人質を助けるという自己満足に溺れた己自身の愚かさを悔やむがいい」。ここに表出しているのは偽善の快楽である。思えばあの「スイートマジカルセンセーション!」とは変身の際の掛け声であった。快楽に溺れたいのであれば魔法少女になるだけで十分だったのである。そう、「魔法少女になれたらそれで願いは叶っちゃうんです」と述べる、鹿目まどかのように。

PROFILE
喉(@somesum
アニメ批評同人誌『アニメルカ vol.3』に『けいおん!』論を、『アニメルカ vol.4』に『放浪息子』論、『反=アニメ批評2011summer』に『魔法少女まどか☆マギカ』論を寄稿。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。また『アニメルカ vol.4』(特集:岡田麿里とアニメの物語論)も委託・通販が開始されている。
冬コミ参加情報→「アニメルカ製作委員会」31日土曜日 東地区 "Q" ブロック 30b
ブログ:ジビインコウ
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反=アニメ批評