エロ年代の想像力 第二十六回 魔法少女メルル

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エロ年代の想像力

#26  『魔法少女メルル』

アニメルカ出張版


 現在、私たちは「魔法少女」という言葉に漠然としたイメージを共有している。しかし変身して戦う魔法少女という造形が『セーラームーン』以後に確立されたもののように、そもそも現在の「魔法少女」が持つ最大公約数的なイメージはせいぜい十数年程度の歴史しかなく、そしてそのイメージは今も絶えず変化し続けている。


 そしてそのイメージの成立の過程においては、現在の定義や認識の枠内からは外れるタイプの過渡的作品がしばしば現れる。例えば1996年に同名の成人向けマンガを原作として制作された、『魔法少女メルル』だ。


『魔法少女メルル』
(監督:桃幻庵/小池あひる、製作:波素館/あかとんぼ、全2巻、1997-98年)



 「魔法少女」という語句をジャンルの認識や歴史を参照する事なく、ニュートラルに、語彙通りに受け取るとしたら、魔法を操り、敵を倒す本作の主人公・メルルは、おそらく魔法少女と言ってもいい存在だ。下巻ではしっかり触手にも犯される。


 しかし2011年現在にこの作品に触れた場合、おそらく多くの人はそのタイトルに若干の違和感を覚えるだろう。なぜなら本作は西洋風の異世界を舞台にしたファンタジーであり、とんがり帽子を被り、杖を持ち、紺色のローブに身を包み、変身もしないメルルは、「魔法少女」というよりは「魔法使いの少女」だからである。実際、オーガに襲撃された町を救ったり、ドワーフやモンクとパーティーを組んだりと、本作は明らかにRPGのパロディとして描かれている。


 しかし90年代の前半?中盤頃は、国内でのファンタジー系RPGの大流行の影響などもあり、このような異世界ファンタジー型の魔法少女(?)が数多く存在していた。『スレイヤーズ!』『魔法騎士レイアース』『赤ずきんチャチャ』……『魔法少女メルル』はこれらの系譜に連なる作品だが、「魔法少女」のイメージが現在のような形へと固定されていった結果、今やこの系譜の作品に「魔法少女」という冠が付くことはまずありえない。言わば『魔法少女メルル』は魔法少女史のなかで淘汰され、破棄された可能性なのだ。


 漫画研究家の泉信行は、現在私たちが魔法少女を魔法少女と認識する要因は、その内面よりも外面のデザインレベルに依拠している、と指摘する。本作の存在からは、そのような認識が十分に確立・共有されていない当時の時代状況が強く見て取れる。


 行き止まりの魔法少女として、私たちは『魔法少女メルル』の名前を覚えておく必要があるだろう。




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『魔法少女メルル◎オーガの山◎』

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『魔法少女メルル◎サハギンの河◎』



 以上、0721字。なお、筆者は少年時代に異世界型魔法少女の洗礼を受け、それなりに思い入れもある世代であるが、それゆえにこの手のエロアニメにはほとんど触れていないため(18歳以上になった頃にはもう時代が変わっているわけである)、この『魔法少女メルル』は昔の知り合いの女の子に脱がれたような感覚と言いますか、妙に興奮した事をここに告白しておく。絵柄が古臭いのが逆にいいんすよ。

PROFILE
杉田u(@sugita_u
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』企画協力。またアニメ批評同人誌『アニメルカ vol.1』に四コマ原作アニメ論を、『アニメルカ vol.3』に『けいおん!』論、『アニメルカ Vol.4』に『フラクタル』論他を寄稿。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。
冬コミ参加情報→「アニメルカ製作委員会」31日土曜日 東地区 "Q" ブロック 30b
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