エロ年代の想像力 第二十九回 2011年エロアニメ総括 ~後編~

000

eronenn.jpg



エロ年代の想像力

#29  2011年エロアニメ総括 ~後編~

アニメルカ出張版


 ということで2011年下半期。2011年は意外にも(?)これまで自作のエロアニメ化経験がなかった巨星・みさくらなんこつが、ついにエロアニメ童貞を捨てた年にもなった。その記念すべき作品は5月に「WHITE BEAR」から発表された『コスプレ露出研究会』だが、実は8月に同じ「WHITE BEAR」からもう一作出ている。みさくらアニメという観点では、こちらの『朝からずっしり・ミルクポット』こそ真打だと言えるだろう。みさくらの特徴であるふたなりとオノマトペを兼備した本作こそ、真のみさくらアニメの名に相応しい。


 10月には『水着彼女』シリーズで一躍人気監督になった辰美の『少交女 THE ANIMATION』(ピンクパイナップル)が登場。エロゲーやエロマンガに比べるとロリ描写に関する規制が厳しいのか、貧乳キャラが少ないエロアニメ界のなかで、かなりギリギリのところを攻めている佳作だ。


 ここでは名前を挙げるだけにとどめるが、他にも『孕ませて青龍君! 第1話 私と子づくりをしろ』(PIXY)、『魔法少女えれな』(わるきゅ〜れ++)、『STAR☆jewel』(37℃)などを注目作に挙げておきたい。


 次に少し趣向を変え、エロマンガのエロアニメ化作品に焦点を当てて見てみよう。まずは草津てるにょの同名作品を原作とした『ペットライフ テンゴロ編』(メリー・ジェーン)。キャラクターデザインと作画監督はあの『聖痕のクェイサー』や『魔乳秘剣帖』で勇名を轟かせた金子ひらく(別名義のゆっけ兄で参加)。『クェイサー』や『魔乳』を彷彿とさせる圧巻のおっぱい描写で、「Getchu.com」の2011年下半期アダルトアニメ・セールスランキングでは現在のエロアニメ界最大のアイドル、愛莉を擁する『鬼父 Re-born 〜小生意気な秘湯めぐり〜旅情編』を抑え、第一位に輝いている。


 続いてDISTANCEの『HHH トリプルエッチ』シリーズの二作。こちらも『ペットライフ』と同様に「メリー・ジェーン」からそれぞれ1月と10月に発売され、ともに好評を博した。


 一方で5月に『めんくい! Face.1 初めてだから…優しくして』、11月には『TSF物語 Trans.1 女体化したらナニをする?』(ともにピンクパイナップル)といった、2011年のエロマンガを代表する大ヒット作がエロアニメ化されたが、いずれも原作の人気を考えるとセールス、評価ともに低調と言える結果に終わっている。なかでも『TSF物語』は原作者の新堂エルがTwitterで出来映えに疑問を呈する事態に発展した(※現在当該ツイートは削除されている)。


 この成功と失敗を分けた差は何か。陳腐なレトリックになってしまうが、それは原作へのリスペクトの有無に尽きるだろう。『めんくい!』はキャラデザがあまりに原作とかけ離れていたし、『TSF物語』は原作のTS(トランス・ジェンダー)へのフェティッシュを理解せずストーリーを表面的になぞっただけに過ぎなかった。これに対し「メリー・ジェーン」の諸作品は原作に忠実なキャラデザとストーリー、そして短時間作品に収めることでクオリティの維持に務めたのが功を奏した印象だ。



 さてここまで多くの作品を挙げてきたが、話題性という意味では、2011年を代表する作品は良くも悪くも『妹ぱらだいす! 1〜お兄ちゃん、わたしとしようよっ〜』(GOLD BEAR)だろう。本作は鬼畜陵辱界の巨匠むらかみてるあきが「妹萌え」という、氏の特色とは真反対のジャンルに挑むということで早くから注目を集め、どうやら商業的にも成功を収めたようだ。発売から一ヶ月以上が経った2012年の1月19日現在もamazonのアダルトカテゴリでエロアニメとしては最上位をキープし続けている。


 しかしその内容は「低予算アニメ」の一言に尽きる。極少の作画枚数による動きの乏しい画面からはキャラデザ、演出、絵コンテのみならず原画まで一人でこなしたむらかみの苦心が覗え、それは結果として氏の演出技法と能力の高さを際立たせるものになっているが(作画枚数の少なさを高速ピストン&カット割り、特異な表情と体位によってカバーしたセックスシーンはまさに職人芸だ)、制作体制としては決して褒められたものではない。本作の大ヒットはあくまでむらかみの知名度と創意に完全に頼り切った結果であることを、ここに強調しておきたい。



 まとめよう。作家としては巨匠むらかみてるあきが変わらぬ(圧倒的な)存在感を発揮し、「Getchu.com」の上下期のランキングでともに上位に食い込んだ野火止用太の人気も健在。『宇宙海賊サラ』のさだやまやなはの復活はエロアニメ界にとって明るいニュースだ。


 レーベル単位では前編で記したように「PIXY」、「エイ・ワン・シー(PoRO、鈴木みら乃、ニ匹目のどぜう、etc...)」の二強に新興の「メリー・ジェーン」や「ルネピクチャーズ(こっとんど〜る、L、ガールズトーク)」が食い込んだ一方、老舗の「ピンクパイナップル」の苦戦していたのが印象的だ。『ストリンジェンド』や『水着彼女』に続く、新たな人気シリーズの登場が待たれる。個人的には『少交女』に大きな期待をかけたい。


 ジャンルとしてはここ数年オタク業界で猛威を振るっていた百合や男の娘といったブームがひと段落したようで、2011年はこれらの作品がエロアニメではほとんど見られなかった。完全に特化した作品は『STAR☆jewel』(百合)、『オトコの娘 お嬢様っ 〜光と綾奈の秘密のコレクション〜』(男の娘)くらいだと思われる。


 では何か新たな潮流はあったのかというと、鬼畜陵辱人気は長年変わらない傾向だが、中でもNTR(寝取られ)が例年以上に強かったと言える。本文中で挙げた作品の他にも『彼女が見舞いに来ない理由』『それでも妻を愛してる』(共にこっとんど〜る)などがヒットしており、「ルネピクチャーズ」の躍進を支えた。


 そんな情勢の中、数少ない和姦もののヒットを飛ばしたのが鬼畜陵辱マイスター・むらかみてるあきというのは、皮肉な話だと言える。


 次回はこれらを踏まえたうえで、2011年のベスト作品を発表します。こう御期待。


PROFILE
杉田u(@sugita_u
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』企画協力。またアニメ批評同人誌『アニメルカ vol.1』に四コマ原作アニメ論を、『アニメルカ vol.3』に『けいおん!』論、『アニメルカ Vol.4』に『フラクタル』論他を寄稿。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。
ブログ:ばべのれ
『アニメルカ』オフィシャルサイト
反=アニメ批評



400.png