エロ年代の想像力 第三十三回 『TSF物語』

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エロ年代の想像力

#33  『TSF物語』

アニメルカ出張版


 陵辱はいまさら言うまでもなく定番で、また男の娘ものもなおブームの最中にある。ならば、その両者を配合すれば優良種ができるのではないか??しかしその実験は、このグロテスクなキメラを生み出してしまった。


『TSF物語』
(監督:荒木英樹、製作:ピンクパイナップル、全2巻、2011年-2012年)



 他のエロメディア同様、エロアニメにおいても陵辱は高い人気を誇っている。しかしその多くは「陵辱する」という、支配欲を満たすための作品にとどまる。そんななか、陵辱行為を主人公を女体化したうえで執行する本作は、その支配構造を逆転し、主人公である元男性が徹底して性的に虐げられ続けることで、あなたがたマゾヒストの被虐願望を叶えはじめる。しかもその陵辱行為は、もはや性的倒錯を逸脱し、自傷行為さながらの熾烈さへと至るだろう。


 表面上のプレイに驚くべきところはない。遺伝子治療の副作用から女体化した主人公は、これまでの童貞仲間たちから男性器を咥えさせられるし、その処女も親友からのレイプで奪われる。中年おやじの痴漢にあっては、その仲間たちからも肉便器扱いされたりと、上下巻のサブタイトル「女体化したらナニをする?」「痴漢!輪姦!肉便器!!」が示す展開を無難になぞっていく。


 しかし本作における個々の陵辱は、いずれもさらなる過剰さにまみれていく。例えば、処女喪失時の親友によるレイプは首絞めプレイへと発展し、そのままエビゾリ状態で失禁することで幕を閉じるだろう。もちろんその後は、女体化した自分の姿をオカズに、片手で自分の首を締めながら自慰にふけるまでに開眼する。また中年オヤジたちの宴の席では、全裸で鼻フックされた状態で泥鰌すくい芸を披露しながら、自らの無様な姿を想像することで、思わず絶頂を迎えるだろう。


 これはもはや一般的な意味でのポルノではない。しかし、このあらすじを読みながら勃起し、またボテ腹状態で初対面の男をアナルカーセックスに誘ってはお金を払うからと中で出してくれるように頼んでみたかったあなたがたマゾヒストならば、必ずや満喫できる作品であろう。




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『TSF物語 Trans.1』




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『TSF物語 Trans.2』



 以上、0721文字。なお、ここで紹介したあらすじは実はクライマックス以前までのもので、未知の快感を得たいあなたがたのために、最低で最高な山場に関するネタバレへ配慮を施してある。また本作も、アメリカからの亡命作家・新堂エル先生のマンガを原作と持つ。今回はアニメ化に特化した表現を扱う余裕がなかったが、アニメにおけるアヘ顔表現史研究にとっても欠かせない作品であることは付け加えておきたい。

PROFILE
反=アニメ批評(@ill_critique
アニメ批評同人誌『アニメルカ』責任編集。
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』責任編集。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。また『アニメルカ vol.4』(特集:岡田麿里とアニメの物語論)も委託・通販が開始されている。
『アニメルカ』オフィシャルサイト
反=アニメ批評


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