エロ年代の想像力 第七回

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エロ年代の想像力

#07 『 カフェ・ジャンキー 』

アニメルカ出張版


 野火止用太特集第3回。今回は概論、処女監督作『とらいあんぐるBLUE』に続き、紳士の嗜みであるNTR欲求に新たなアプローチで迫る監督第2作『カフェ・ジャンキー』を取りあげてみよう。


『カフェ・ジャンキー』
(監督:野火止用太、製作:鈴木みら乃、全2巻、2008-09年)




 『放課後2 ~紗由理~』、そして『とらいあんぐるBLUE』で寝取られ(NTR)アニメの一つの達成に至った野火止用太ならば、次回作でも、新たなNTRの境地を見せてくれるはずだろうと、誰もが固唾を飲んで見守った。


 その願望通り、監督第2作『カフェ・ジャンキー』では、作品前半から執拗なまでに、NTRに繋がりそうな伏線が張り巡らされ、マゾヒストたちの期待や股間を大いに盛り上げる。早々にハーレム状態を形成する主人公の周囲で、如何にも軽い男という体の友人・伊集院は、怪しい視線を向けながら、秘密の関係を匂わす意味深な発言を囁き続ける。


 しかし、物語は最後の最後、セオリーに沿うならNTRが炸裂するだろう、われわれがパンツを脱いだまさにそのタイミングで、散々乱立させてきたNTRフラグが何の伏線でもなかったことがあっさりと判明し、主人公のハーレム構築が滞りなく完遂する。


 つまりここでは、愛する者の貞操が守られた代わりに、われわれの内に高まったNTR願望こそが寝取られることになる。言い換えれば、本作でのNTR現象は、作品内部のシチュエーションではなく、われわれの視聴体験そのものに対して発動している。


 ちなみに、その二重構造を象徴する装置として、作品冒頭に用いられた姉・楓からの携帯メール演出がある。そこでは共に重要な情報である、画面上の長文メールと音声上の主人公と楓との会話が独立に並走する。つまり予想されたNTR物語と実際のハーレム物語との間で生まれる齟齬は、この二重化された情報提示が生む知覚の撹乱として、導入から早々に印象づけられる。


 野火止が自らの到達地点を早くも解体対象へとシフトした本作は、野心の発露にすらとどまらない、確かな演出力をも確信させる。



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カフェジャンキー 1st




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カフェジャンキー 2nd


 以上、0721文字。

 監督2作目にて、早くも自作からの逸脱、ジャンルの解体へと向かった野火止の快進撃は未だ止むことを知らない。野火止はその後、さらなる萌えとエロスの原点へと立ち返り、われわれの度肝と精力を抜くことになる。次回はいよいよ、監督第3作『鬼父』が語られはじめる。



PROFILE
反=アニメ批評(@ill_critique
アニメ批評同人誌『アニメルカ』責任編集。
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』責任編集。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。
『アニメルカ』オフィシャルサイト
反=アニメ批評



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