エロ年代の想像力 第八回

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エロ年代の想像力

#08 『 鬼 父 』

アニメルカ出張版



 ツンデレ、生の灯火、感情の焔。美しき様式美、魂。ツ・ンデェ・レ??


 唇の尖りが三歩にほどけ、四歩目に、舌が爆ぜる。ツ。ンデェ。レ。



 「それ」はおそらく人類が誕生した瞬間からあった。

 しかし「それ」を正しく語る言葉を、認識を、我々は長い間持ち得ていなかった。

 ゼロ年代についに達成された「ツンデレ」という概念の発見は、人類史に燦然と輝く偉大な一歩として千年先まで記憶されるだろう。

 今回はそんなツンデレについて野火止用太に聞いてみよう。

 というわけで現時点での野火止用太の到達点であり、最高傑作とも名高い『鬼父』である。




『鬼父』 
(監督:野火止用太、製作:PoRO、全2巻、2009-10年)





 ストーリー自体は義父が娘姉妹を陵辱するという至極単純な本作の素晴らしさは、その陵辱に伴う「最初は抵抗→やがて快楽に屈服」という定番の展開の演出の巧さ、そして上巻のヒロインである愛莉(妹)のキャラクター性の描写にある。


 金髪ツインテ低身長ツンデレというベタな造形の愛莉は、序盤キモいウザいクサいの三大罵倒語を駆使して義父への嫌悪感を露にする。前半はこのクソ生意気な小娘をマッチョに征服して涙目にするカタルシスが主眼となっている。


 ところが後半になるとセックスの快感に目覚め、義父を受け入れた愛莉は陵辱前の強気な態度に逆戻りし、行為の最中にもう一人のヒロインの姉・真里菜のことを考える義父に焼餅を妬くまでになる。そうして愛莉の心が揺れ動いたその瞬間、我々は概論で記したような精神に呼応した乳房の異常運動??「野火止おっぱい」を目の当たりにすることになる。


 さらに乳房と精神を激しく揺らしつつ、愛莉は義父を罵倒する。「この臭いチンポは愛莉のおま○こに奉仕してればいいの!」「あんたの腐れチ○ポは愛理専用にしちゃえばいいの!」。khorosho(ハラショー)。つまり前半が強姦なのに後半は強気誘い受けの形になっているわけだが、しかしそれもあくまで表層的な印象に過ぎない。


 このシーンにおけるセックスの体位は終始愛莉を抱きかかえる形での座位。これにより一見ツン状態を回復したかのようにも見える愛理が、やはり義父に支配されていることを象徴しているのだ。


 このような愛莉の態度の反転の連続と、それと並行して展開される描写の齟齬による重層性がもたらすエロティシズムこそが本作の魅力であり、他の人気NTR作品などを退け、野火止用太の最高傑作として君臨している所以なのだ。




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鬼父2 上巻「おバカな袴っ娘の反省」




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鬼父2 下巻「巨乳と天然と卑しと嫉み」




  以上0721字。

 この『鬼父』のスマッシュヒットを受けて、昨秋には続編の『鬼父2』が原作の発表からわずか2ヶ月という電光石火の早業で映像化され(ちなみに1は原作の発表から1年の月日が空いている)、さらにアニメオリジナルとなる続編、『鬼父 Re-birth』の発表が今月の28日に迫っている。『鬼父』の発表から1年半足らずで計5作。この急ピッチからも本シリーズの人気の高さが伺えるだろう。

 今や業界最大手の一つに数えられるエイ・ワン・シーグループの主軸、チームPoROの“不動のセンターエース”(と、鬼父 Re-birthのトレイラーに書いてある)に君臨する愛莉。現在のエロアニメシーンを牽引するこのヒロイン、そしてそれを映写する野火止用太の存在を知らずして、エロ年代の想像力を語ることはできない。




PROFILE
杉田u(@sugita_u
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』企画協力。またアニメ批評同人誌『アニメルカ vol.1』に四コマ原作アニメ論を、『アニメルカ vol.3』に『けいおん!』論を寄稿。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。
ブログ:ばべのれ
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反=アニメ批評