エロ年代の想像力 第九回

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エロ年代の想像力

#09 『 凌辱ファミレス調教メニュー 』

アニメルカ出張版



 野火止用太の監督4作目は2004年にLiquidから発売された同名エロゲが原作。7年前の、さほど売れたわけでもない作品をなぜ今になって映像化したのかは謎だ。


 しかもアニメ化にあたり、ファミレスのウェイトレスの調教を目的とした原作はNTR作品へと大きく変貌している。それも野火止の批評的介入によって、これまでにない特殊なNTRに。




『凌辱ファミレス調教メニュー』
(監督:野火止用太、製作:PoRO、全2巻、2010年)





  あらすじ。ヒロイン・紗耶香は、彼氏・孝幸の兄であり自身のバイト先のファミレスの店長でもある雅史に肉体関係を強要され、紗耶香の態度の変化に孝幸が不信感を抱く。極めて類型的なNTR作品である。上巻においては。


 野火止が手掛けた以上、それはただのNTRで終わるはずもない。続く下巻において視聴者は漠然と抱いていただろう展開の予想を大きく裏切られる事になる。


 まず紗耶香の不貞は最後まで露見しない。孝幸は疑念を抱きながらも紗耶香を信じる事を選択し、二人の関係は表面的に維持され、さらに不貞を継続している紗耶香は罪悪感を抱く様子もなく、嬉々として孝幸にプレゼントされた指輪をはめてみせる。その姿を見て、彼女を孝幸から寝取ったはずの雅史が逆に嫉妬する。何かが噛み合っていない。


 そしてその違和感は残り5分で頂点に達する。なんとラストシーンで紗耶香を寝取った雅史が、今度は違う男に紗耶香を寝取られてしまっていたことが明らかになるのだ。そして雅史は孝幸と同様にその事実に気付く事なく、紗耶香を征服しているという幻想に酔ったまま、物語は幕を閉じる。


 NTRによってセックスの快感を覚えたヒロインが彼氏を欺き、積極的に情事に及ぶ。このような構図の逆転自体は『とらいあんぐるBLUE』の反復である。しかし「彼氏のみならずNTR相手も騙す」という関係の重層化に加え、紗耶香が妹の萌美を自身の代替として調教対象に設定する事で支配者⇔被支配者の構図の逆転を強く印象付け、NTRによって喚起されるマッチョイズムとマゾヒズムが表裏一体である事と、その欲望の空転を鮮明に描いている。


 知る事より知らない方が、本当は恐ろしい。野火止は本作でNTRの奥に潜む本質を抉り出してみせたのである。





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『凌辱ファミレス調教メニュー』
上巻「焦らしちゃ…イヤ」




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『凌辱ファミレス調教メニュー』
下巻「妹・萌美」


以上0721字。

さて、5週に及んだ野火止用太の特集も今回で最後となる。

我々の拙い筆致で野火止の魅力を読者に十全に伝える事は出来たのか、それは分からない。よって私が最後に残す言葉は、「その身をもって体験せよ」以外にない。それが言葉の敗北だとしても。

それでは『鬼父 Re-birth』を鑑賞しなければならないので、このへんで。






PROFILE
杉田u(@sugita_u
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』企画協力。またアニメ批評同人誌『アニメルカ vol.1』に四コマ原作アニメ論を、『アニメルカ vol.3』に『けいおん!』論を寄稿。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。
ブログ:ばべのれ
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