コイトゥス再考 照沼ファリーザ

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コイトゥス再考 #10

照沼ファリーザ

AVより不自由なアート

文・ 写真/辻陽介


失礼を承知で言うと、正直、侮っていた。

AV女優で写真家…、そんな彼女の肩書きに、当初、筆者は安っぽい俗臭を嗅ぎつけ、言ってしまえば「まぁよくいる転身系でしょ」と値踏みし、高を括っていたのである。

もちろん、その後、実際に彼女の作品を目にする事で、印象を改めてはいた。写真家としての彼女の作品は、僕のような門外漢が口を挟むまでもなく素晴らしい。幣誌の『アクメ図鑑』に掲載中のセルフポートレートひとつを見ても、アクメを写真1枚で表現するという限られた制約の中で、大胆不敵にも「水中に沈む私」という極めてシンプルな構図の作品を提示する度胸とセンスには、ただただ瞠目させられる。

とはいえ、インタビューとなればどうか。言葉の世界は過酷だ。直感とセンスだけではボロが出る。いかに卓越した感受性を持っているのだとしても、それを表出するに足る語彙がなければ凌げない。果たして照沼ファリーザにそれだけの器量があるというのか?

答え=ありました! それどころか、打ち合せなしのぶっつけ質問に対し、当意即妙に次々と鋭利な言葉を返してみせる。エロスに対する深い洞察も然ることながら、AVとアート、2つの世界に身を置く者として、それぞれの世界を怜悧に分析し、さらにはそれらを的確に批判するだけの言語をも持ち合わせているのだから驚きだ。

いやはや全くもって痛快!  照沼ファリーザ、この人を見よ!



(2011年5月 照沼ファリーザ宅にて)


ー本日は宜しくお願いします。本欄は現代の性愛、ジェンダーの再考をテーマとしているのですが…、そうですね、まずファリーザさんがエロと聞いてパッと連想するものはなんです?

照沼 んー、連想かぁ。なんか「けがれ」って感じですかね。

ーそれは「嫌なもの」というのとはまた別の意味で?

照沼 いや、別じゃないです。嫌なものです。

ーへぇ、ファリーザさんにとってエロはネガティブなイメージなんですね。

照沼 そうですね。いけないことってイメージが強いです。特に普段においては。気持ち悪いものっていう感じが強い。

ー嫌なものだからこそ魅かれていく?

照沼 そういう感じですね。嫌だけど気になる。私の場合、自分の理性的な部分と、感情的な部分がうまく共存してないというか…、別々に作用しているというのがあるんです。普通の時にエロいことを考えると、ちょっと気持ち悪いなって思ってしまう。

ースイッチが切り替る瞬間がある?

照沼 んー…。私、お花を飾るのが好きなんですけど、お花にエロスを見るという人もいらっしゃるじゃないですか。確かにお花ってエロさもあるんですけど、同時に可愛さもあるんですね。ピュアな感じ。それって見方によってどうにでもなるんです。例えば、私の存在をとっても、見る人によってはエロいって見えるかもしれないし、あるいはピュアと思われるかもしれないし。

―なるほど。

照沼 百合の花を買ったんですけど、私にとって百合は少しセクシーなイメージがあるんです。それに比べると、例えばマーガレットなんかはもっと少女でピュアというか…。あと一重咲きより八重咲きの方がセクシーな感じもあります。でもこの前、百合の花の花柱から汁みたいなのが出てたんですよ。今にも垂れそうになっていて…、それを見た時にゾワっとしたんです。つまり、私にとってエロっていうのはセクシーとか可愛いとかとはちょっと違うものなのかな、と。エロって可愛くなくて、ゾワゾワしたもの、シリアスなものな感じがする。

ー官能ってそもそもドロっとした、湿気のあるものかもしれないですね。

照沼 私は結構夢見がちだし、少女趣味だし、だからエロっていわれると「うっ」って感じになる。ただ、その分、魅かれていくんですよね。

ーまぁ嫌悪感を一切覚えないエロってのはそもそも…

照沼 エロくないですよね。

ーですよね。

照沼 私、AVだと“ぶっかけ”とか“メッシー系”が好きなんですけど、普段は潔癖な位キレイ好きなんですよ。潔癖なら本来は“ぶっかけ”とかありえないじゃないですか。でも、例えばもとから精子をかけられるのが平気な人っていうのは、逆に“ぶっかけ”プレイを好きになりようがないんですよね。

ー気にならないってだけですもんね。

照沼 「嫌だ」って思いが強ければ強いほど、それがなぜか快感になっているところがあって。だからエロについても、自分的には「可愛くない」ことだから余り考えたくないって思ってるんですけど、そう思えば思うほど、考えた時にすごい燃えちゃうんです。そのギャップが自分にはあると思ってますね。

ー今時にしては珍しいタイプですよね。

照沼 自分でもそうだと思う(笑)

ー最近はエロに対する嫌悪感や苦手意識が希薄な子が多い印象がありますが、女性としてそこらへんはいかがです?

照沼 AV女優という仕事についても、私自身は未だに罪悪感をもってしまう。不良的な行動というか、社会の日陰者的な意識があるんですよ。でも、周りの人はそんな私を励ますように「今はエッチな仕事とかしててもテレビ出てる子も多いし、それに人の役に立ってる仕事なんだから恥ずかしがる必要なんてないんだよ」とか言ったりしていて…、でも、私はどんなに仕事真面目にやってても、裸とかは女性だったら恥ずかしいのが普通だと思う。

ーうしろめたさのような感覚?

照沼 それがあるからやってるし、やり続けられてるんだと思う。

DSC_0064.jpgファリーザさんはそもそもどうしてAV女優に?

照沼 きっかけはAVを見ていてですね。初めてAVを見た時に衝撃を受けて、それからAVのことがずっと気になっちゃって。初めて見たAVというのは高校の制服を着た、どう見ても高校生じゃない女の子がいきなり家に入ってきて男をフェラ抜きするという設定で、ヤラセっていうのが露骨に分かるようなやつだったんですけど。金玉がどうのとか言いながら、フェラして帰るっていう内容。よくカメラの前でこんな姿を晒して、さらには金玉なんて人前で言えるなぁと。私はそもそもそれまでに「金玉」なんて口に出して言ったことないですから、これはすごいことだぞって思ったんですよ。気持ち悪いとか、エロいとかいうより、もはやビックリ映像みたいな感じ。そこからこっそりAVを観るようになって。「こんな子もいるんだ」って発見していくことに凄い世界の広がりを感じたんですね。

ー性的に興奮したとかでは全くないんですね。

照沼いや、空を飛んでいる人の映像を見たような感じ。それである時、私だったらここでこんな風に言うのになぁ、もし私が出演したら、、とか思ってしまって。それがヘアメイクの専門学校をちょうど卒業するタイミングだったんです。ヘアメイクの仕事をするか迷っていたというのもあって、その勢いでAV事務所みたいなのに連絡して。


ーなるほど。お話を聞いていて思ったんですが、現在の写真家としての活動も、感覚的にはAVと地続きなのかな、と。

照沼 単純に「こんな子もいるんだよ」みたいな。そういうのは全てにおいて共通しているかもしれない。元々、自分が真面目だし、潔癖なところもあるんだけど、ハメを外す快感みたいなものを知っちゃったから…、それが凄い楽しかった。

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