黒史郎×宍戸レイ ?此の世で最もエロい怪談を巡って? 前編 

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黒史郎 × 宍戸レイ 怪・猥・対談

此の世で最もエロい怪談を巡って

構成/辻陽介


四谷怪談、牡丹灯籠、雪女伝承…、こと日本だけを見ても、艶のある怪異譚は数多い。

オカルトとエロスが深いところで繋がっているというのは、これまでにも幾度と指摘されてきたことだが、ならば、此の世で最もエロい怪談とは如何なるものか?

やうやう蝉の哭きそめた2011年の東京、夏。不謹慎の誹りにも甘んじお送りする「此の世で最もエロい怪談」を巡る怪・猥・対談。

怪談文学界の気鋭・黒史郎、そして美人すぎる怪談作家・宍戸レイという二人の怪談作家が選出する史上最淫怪談とは? 茹だるような熱帯夜に一陣の涼風をそそぐ淫靡な怪異。前後編、2回に分けてお届けする。



(2011 7/19 高田馬場)



―此の世で最もエロい怪談の選出を前に、まずはお二人が考える怪談とエロスの関係について、少々。




黒史郎(以下、黒) 今日は「此の世で最もエロい怪談」がテーマという風に聞いたので、なんとなくそれに関連しそうな資料を持ってきました。

宍戸レイ(以下、穴) わ、すごい! 私は何も持ってきてないから…、とりあえず脱いでもいいですか(笑)、エロ担当ってことで。

 脱ぐって(笑)。あ、でも僕も湿気のおかげでエロそうな髪型になってきてるかも。

 エロそうな髪型って(笑)。えぇっと…、まずは怪談とエロスの関係ですよね。黒さんはどう思います?

 エロっていうものをそんなに強調せずとも、いわゆる「情念」というものが怪談にはありますからね。自ずと要素として入ってくるのかもしれないですよね。やっぱ女の人が主人公の怪談の方が怖かったりしますし…、そうなると男女関係の情念みたいな、エロティックな要素も入ってきやすい。艶があるというかね。男臭い怪談なんてあんまり聞きたくないし。

 やっぱり貞子のイメージですよね。

 『リング』でイメージを作って頂きましたが、貞子が幽霊だろうか人間だろうか、いずれにせよ逃げますよ(笑)。長い黒髪には怨念めいたものを感じますし、昔から柳の木の下でって言うように、霊的な要素がガチっと合うのは女性だったんでしょうね。取り憑かれたいって話も多いですから。昔の怪談なんかを読むと、書き手は欲情しながら書いてるんじゃないかって思うものもある。有名なところでは雪女も幽霊じゃないですか。でも、凄く美しく描かれていて。



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 なるほどぉ。でも私にとっては、怪談とエロって普通にパっと聞いたら結びつかないと思うんですよ。「え、これがエロいの? 」みたいな感じがあるから、「エロ怖い」みたいな怪談が目を引くんだと思いますし。でも、ちょっと深く覗いてくと、どんな怪談でも実はエロいのかなっていう気はしますよね。

 しますね。例えば昔からあった怪談とかって、エロ的なシーンがあっても、エロ的に表現してないと思うんですよ。でも、もし現代の人がそれをリメイクしたら極エロになるだろうなって怪談は実は結構ある。昔はエロに着眼点を置かず、情念という部分を強調していたんだけど、いまならもうちょっと鮮明に、違う語り方もできるんじゃないか、とは思う。それこそ、昔の幽霊画なんかを見るとエロの要素をもろに取り入れたりしますよね。お岩さんの顔が女性器的になっていたり、で、ダジャレっぽいタイトルになっていたり。

 エログロってこと?

 エログロですよね。他にもろくろ首の絵なんかで、上の首じゃない首が伸びてたりね(笑)。僕自身も、雑誌の特集とかで「エロ怖い怪談」って括りで、意識的にそういうのを書いてみても、そんなに違和を感じないというか、書いていたら普通に融合してくれる。まぁでも普通に怪談を書く時はエロは意識しないですけどね。

 それはしないですね。私は取材して人に聞いた話を書くだけなんで。怪談がエロいと言うより、むしろ私がエロいと思われてる(笑)

 それは怪談とは関係ないよね(笑)

 そう。私が元ポールダンサーだったりするだけで、本当は別に私がエロいこと書くわけじゃなかったりするんですよ。

 そうですよね。逆に僕みたいな奴がエロいこと書いたりする。なんか鬱屈してそうな奴が(笑)

 でも、怪談ってイメージ的には「死」じゃないですか。死とエロスみたいなのは凄い近い気はしますよね。

 うんうん。

 惹かれる気持ちも似てるかも。私、たまに凄い怖がりたくなるんですよ。「あぁ、怖くなりたい!」みたいな(笑)

 ありますねぇ。

 それって中学生の男の子がエロい本とか読みたいって気持ちと一緒なのかなって思う。

 僕も夏になると怖い話番組やってねぇかなって探しちゃうんですけど、中学生とかがよく深夜にエロい番組探しちゃうみたいな感覚と近いものは感じますね。

 逆に言えば、それぐらい強い衝動なんですよね。「怖がりたい」っていうのも。

 ベクトルは同じなんじゃないかな。エロも怪談もある意味では秘め事にされてる部分じゃないですか。そういうものを暴いてくという部分に高揚感が沸く。

 つまり、エロも怪談もタブーなんですよね。秘められてるから怖いし、興奮する。




?少々の予定でしたが、まだまだお話して頂けそうなので、もうあと少々。




 ところでなんですけど、私はタブーはタブーのままにしておきたいって考え方なんですよ。というのは、あんま言っちゃいけないことかもしれないけど、今って東北の震災があったばかりだからあんま怪談とかやっちゃいけないよねって風潮があるじゃないですか。怪談は不謹慎だし、特に東北の怪談とかもってのほかだよねっていう人達がいる。それとは逆に「そんなことないよ」って人達もいますよね。「怪談は不謹慎なものじゃないよ」、「あれは死をテーマにしていても昔から語り継がれてきた大事なものなんだよ」、みたいな。でも私にとってはそういう言い方はきれいごとだなぁと思う。怪談ってやっぱ不謹慎だし、良くないことで、タブーで…、それに、それでいいじゃないかって思うんですよ。

 うーん、まぁ怪談も本当に色んなものが出てますからね。それこそ忌む感じで読むものもあるし、あるいは鎮魂の意味で読むものもあるかもしれないし…。

 いや、私は鎮魂の意味ではとらえられないですね。

 (笑)

rei_sisido.jpg なんか私は、不謹慎だし、タブーだし、その汚れたまんまでいいじゃないか、と。それが私は好きだ、みたいな。不謹慎が好きっていうわけじゃないけど、怪談が良いものである必要はないかなぁ、と。

 なるほどねぇ。

 私ってお化け見たことないんですよ。だから、正直、そういうものに半信半疑なんです。今は見えるっていう人の話を信じて書くようにしてるんですけど…、でも逆に、もし自分がそういうの見えるとしたら書かないと思いますよ。だって怖いもん(笑)。本当に見えたり祟られたりしたら怖いから書けない。つまり、私が東北の人で、お母さんとかお父さんとか皆なくしちゃってたら、色々とごめんなさいってなると思う。エロもそこで終るし、それに怪談とかも無理って。

 ここでエロを食い込ませてきた(笑)

 遠い話だから、他人事だから楽しめるっていうか…、エロも私がまだストリッパーだったら、そんな話してる場合じゃなくない? みたいになるっていうか…。

 まぁ僕も見たことないんですけどね。見たことないなりに、見たことないって気持ちで話を聞いて書くわけだけど…、まぁ僕自身が幽霊を信じているかっていうと、「信じたい」っていう感じですよね。

 あった方がいいじゃん、みたいなね。

 そうそう。というのも、僕は猫が凄い好きなんですけど、動物とかが死んでから来てくれるみたいな話も怪談の中にはあって、そういうことが本当に起こったらいいなって思う(笑)。もしあるんだったら、そして自分がどっかに踏み込んだことによって見えるんだったら、是非見てみたいっていう気持ちかな。それがあるいは禁忌に踏み込むようなことであったとしても。

 でも凄く怖い感じで現れたらイヤじゃないですか?

 それはイヤですよ(笑)

 私、凄い恐がりだもん。無理。

 まぁ怖がりだから怖いの書けるんだと思うしね。僕も血とか出るような、そういう怖いものだったら、全失禁というか、出すもん全部出して逃げ出しますよ。

 (笑)

 怪談書きは意外と怖がりなんですよね。スプラッターとかも映画で観るのは良くても、実際は全くダメだったりとか。でもそれなのに書いてしまうっていう業の中にいる(笑)

 やっぱタブー感ですよね。自分にとってタブーな世界じゃなきゃ怖くもないし。エロもタブー感ですもんね。羞恥心とか

 そういうことなのかもね。そういえば宍戸さんにとって一番怖いものってなんです?

 一番怖いのは日野日出志さんの「奇病」みたいな。すっごい皮膚病で、すっごい畸形で…、でもそういう人って実際にいるじゃないですか。日本にも畸形の人はいるし、世界にはもっといるし。で、もし自分の家族が畸形だったら、もしくは自分が畸形だったらとか想像すると、「怖い」とか言ってられないですよね。それを怪談にするなんてありえないし…。そういう意味でもやっぱ怪談って不謹慎なんですよね(笑) 

 やっぱそこに繋がっていくんだ(笑)

 私の中に禁忌意識や差別意識みたいなのがあるんだろうなぁ、と。そして、そういう気持ちが読者にもあるから、楽しめるんだろうなって思います。




?ここ迄きたので、前編はこの話題で乗り切ってしまおう、というわけで、あと少々。




sirou_kuro.jpg あと、このテーマで言えば、ホラー映画でもセクシーなシーンが絶対でてきますよね。キレイな女の人をムチャクチャ怖い目に併せたい、切裂いて、内臓とか出しちゃって、やってやりたいっていう欲望もありますよね。

 サディスティックな。

 そう。エログロだけど、可愛い女の子を汚しちゃうみたいな。

 男女がキャンピングカーの中でそういう情事に及んでる時にばっさりヤラれちゃうみたいなね。エロとホラーの親和性っていうのは、そういった意味では認められますよね。


キレイな女の人がどんな顔して殺されるのかとか、楽しみにしちゃうとこってありますしね。でも…私はエロの方が怖いですけどね。普通のエロはいいですけど、SMとか近親相姦とか、絵とかでも、内臓の断面図とか出てきたりするじゃないですか。逆に怪談より怖いと思う。

 僕も人生で初めて読んだエロ本が、親父が隠し持っていた外人さんのもので、女性同士でサラミを駆使してる写真だったんですね(笑)。それはもうエロいとかじゃなくて子供心にはただただ怖くて。サラミはその当時、僕も慣れ親しんでいたものだったんで、これはおかしい世界に踏み込んじゃった、しかも親父はなんでこの本を茶箪笥の上に隠してるんだろうって思って。でも、怖いと思いつつ度々見てる自分もいて…。

 お父さんが隠してるものを見るって時点で怖いかも。何かお父さんとお母さんの触れてはいけない部分を見てるみたいで。エロとの出会いに怖さを感じる人って割と多いんですよね。で、段々と、怖いも怖いも好きの内になってく(笑)

 しかも最初に出会うエロってあまり易しいのじゃないですもんね。ドギツいのから事故的に出会っちゃったりする。

 あと、恐怖とエロの関係って話で言えば、私は家で怖くなったりすると、すぐにエロいサイト見る

 なにそれ(笑)

 だって怖さが一瞬は紛れるから(笑)

 なるほどね。でもワケ分からなくなりませんか? 怖いぃって思ってる時に急にエロがきたら。

 結構効きますよ、冷静になれる。「あぁ、エロいエロい」みたいな。

 試してみようかなぁ、今度。僕の場合は怖くなった時は梅干しの画像を見るんですよ。

 なにそれ!? その方が怖いよ!

 見てるだけで酸っぱくなるじゃないですか。僕のパソコンには梅干しフォルダーがありますよ。

 超変態!

 僕はエロサイトって時点で怖いですけど…。架空請求とかされるんじゃないかなとか考えちゃって。

 でも梅干しの方が変だよ。

 一度、試してみてくださいよ(笑)




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