コイトゥス再考 前山田健一 a.k.a ヒャダイン 2

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?二次元のキャラクターに萌える、もしくはアイドルのライブで熱狂する、それはとてもクリエイティブなこと


―ちなみに前山田さんが歌にする上で理想の女性ってどんな女性なんですか?

前山田 今まで自分の書いた曲で一番理想の女性を書けたのは、月島きらり starring 久住小春の『はぴ☆はぴサンデー! 』なんです。(ピンクのリップクリーム/初めてつけてみたんだ/鏡に映るワタシ/変になってないカナ/大丈夫カナ/似合ってるカナ/きらわれるカナ) という歌詞です。そんな女の子が嫌われるわけないじゃないですか。14歳ぐらいの思春期にありがちなエヴァンゲリヲン的自意識をもった女の子を描くのが好きなんです。

―それはご自身の青春時代に関わるものなんですか?

前山田 かもしれません。思春期の頃、恋に憧れていたけれど男子校だったので恋というものができなくて。まぁすごくイライラしましたし、鬱憤が溜まっていたわけです。そんなトラウマがまだトゲとして残ってる。中二病的な自意識過剰な女の子の歌をつくるのが好きなのは、それが理由なのかもしれませんね。

―でも、それはリアルな女の子の姿ではない。

前山田 そうですね。だから、それらの歌は、竹下通りを歩いているような女の子たちに共感されるようなものではない。では、誰が喜ぶのかというと、僕と同じように、恋に焦がれているけれど、それが叶わなくて妄想ばかりしている、同じ傷をもった同志、ヲタさんたちなんですよね。描写しているのは、実際の女の子ではなくて、「こうであって欲しいな」という男の願望ですから。

―じゃあ、前山田さんの歌詞の中に出てくるのは、前山田さんの理想の女性なんですね。

前山田 つんく♂さんにしろ、秋元先生にしろ、僕の師匠である松井五郎先生にしろ、歌詞を読み比べてみると、それぞれ理想の女性像は違うなと感じるんです。ということは、自分も含め作詞家というものは、自分の作品の中で理想の女性・トラウマとなっている女性を露呈するという大変に恥さらしなことをやっているんですよね…。でも、自分にとって完璧な女性像を可愛い女の子に歌を通して演じてもらえるんですから、最高に幸せな人種だなとも思うわけですが(笑)

―トイレにも行かないのがアイドルの理想とのことですが、とはいえ「アイドル」というものは完全に無垢ではダメなわけで。もちろんアイドル本人はそれでいいんですが、市場を大きくしていくためには運営側の戦略としてセクシャルな要素をうまく入れ込んでいくことが必要になってくるんですよね?

前山田 AKB48なんかまさにそうですよね。純粋無垢なキャラクターのメンバーもいる一方で、小嶋陽菜や篠田麻里子のようにセクシーな魅力をもったメンバーもいる。特に中高生のファンを獲得するためにはそういった戦略も必要なんだと思います。

―特にAKB48のブレイク以降ファンの年齢層も下がり、握手会が口説きの場になったように感じます。特にぱすぽ☆(注)などは「なんだかキャバクラみたいだなぁ」と思う時すらあります。アイドルとヲタの距離が縮まったことでより強くなった疑似恋愛要素を歌詞のフックとして取り入れることも可能なのでしょうか。

前山田 確かに擬似恋愛要素は強くなりましたけど、ヲタは一般人であり、アイドルとは決して交わってはいけないと思います。ファンとアイドルが付き合うなんていうのは、僕の思い描くアイドル像ではありません。でも、もしも、僕がぱすぽ☆の担当ならば、歌詞にもそういった擬似恋愛のフックを入れ込みますし、もっとやるなら、トップヲタの名前をメタファーとして歌詞の中に忍ばせることもやると思います。

注:プラチナム・パスポート所属の10人組ガールズロックユニット。5月4日に発売されたデビューシングル『少女飛行』にて3万枚以上を売り上げるスマッシュヒットを放った。

ーわぁ、すごい。よくそんなスラスラと企画が出てきますね。その曲すごく聴いてみたいです。

前山田 「コレ、あいつの名前入ってんじゃんね? ザワザワ」とかって書き込みが2ちゃんねるにあがったりね。そうしたら、次の曲に入るのは俺だ、みたいな感じでもっと現場が盛り上がるかもしれませんし。

―またCDが売れてしまいますね(笑)話を「売れるためにはセクシャルな要素を入れなくてはならないのか」というテーマに戻します。それは時代を越えて普遍的なものなんですかね?

前山田 んー、ただインターネットにより情報がなんでも手に入ってしまう今の時代、エロスを表現するにはある種の「計算」が必要だと思うんです。エロが簡単に手に入ってしまうんですから、ただアイドルが水着になっているだけではズリネタにはならない。今や、やまぐちりこみたいにアイドルがAVに出てしまうことすらある時代ですからね。

―計算ですか…。

前山田 例えばAKB48でいえば、今までは制服で歌っていたのに、『ポニーテールとシュシュ』では水着になり、『ヘビーローテーション』では下着になった。急に露出が多くなったその落差・ギャップがエロなんだと思うんです。今までは隠されていて想像するしかなかったものが露わになったということですよね。

―なるほど。

前山田 これだけ直接的に情報が入ってくる時代になると、逆に想像力を使って間接的にものを見たいという願望が人々に生まれてきていますよね。無修正ビデオよりもモザイクが入っているものの方がいいみたいな感覚で。だから、これから先自分の歌詞の中に性的な要素を入れるとしても、あくまでスパイスとして、そこから何かを想像できるぐらいに抑えようと思っています。ただ「うふーん、あはーん」しているだけでは何も面白くないですから。

―確かに。ところで話は変わるんですけど、草食系男子的な存在についてはどう思いますか? 前山田さんが曲を提供していらっしゃるアーティストのファンの中には、内部志向が強くて実際の女性とは関わりをもてずにいるような男性も少なからずいるように思うんですが。

前山田 国益のことを考えたら、全然よくはないことだとは思います(笑)。ただ、個人的には「なにがダメなの?」っていう。草食系男子について全く否定的な意見をもっていないんです。生身の女性と交わり射精することではなく、二次元のキャラクターに萌える、もしくはアイドルのライブで熱狂する、そういったことが性欲の代替品として機能しているのであるならば、それはとてもクリエイティブなことだと思うんですよね。だって、そのためには色々な脳内補正をしていかなくてはいけないわけですから。

―加護ちゃんはたばこ吸っちゃうわけですしね…。

前山田 あと、今は「幸せのかたち」が多様化した時代だと思うんです。twitter、mixi、2ちゃんねるといったメディアを通して色々な人と相互に意見を交換できるようになりましたから。これまでは、結婚して子どもをつくって、という幸せのロールモデルみたいなものがありましたけど、そういった固定観念に縛られずとも意義ある人生を送ることはできると皆気付きはじめたんですよね。だから政府もそういうことを念頭に少子化対策をしてかないとですよね。まあ、僕は政治家でもなんでもないんで、知ったことではないですが(笑)。でも、先ほども申し上げたとおり、国益を考えると由々しき問題ですよね(笑)

―そうですね(笑)。どうも本日はありがとうございました。最後に新曲『ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C』について一言コメントをいただけますでしょうか。

前山田 僕の得意分野である、思春期の自意識過剰でヒリヒリした、でも、全てが新鮮でキラキラ輝く恋の歌です。そんな14歳の頃を思い出しながら、思い出しながらって僕そういうの経験してないんですけど…。憧れと追体験で仕上げた曲です。楽しんでください!



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ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C
2011 4/27発売


前山田健一(まえやまだけんいち)

作詞家、作曲家、編曲家。1980年生まれ。大阪府出身。ニコニコ動画では、「ヒャダイン」名義で、ゲームBGMを自分でアレンジ・作詞して歌う歌い手として知られている。アニメソング、アイドルソングなどをはじめとする幅広いジャンルの楽曲プロデュースを手掛ける。2011年4月に『ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ‐C』にて、自身が歌手として「ヒャダイン」名義でメジャーデビューしている。

ブログ ヒャダインのチョベリグ★エブリディ