keroppy_maeda#未来10 of VOBO4

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ケロッピー前田 ARCHIVE

未来変態放談 #10

BEYOND THE FUTURE BIZARRE
BY KEROPPY MAEDA & GABA GABAKO




仮想の「オナニー三昧」から抜け出して
生身の女に肉棒を突き立てろ!!


「えっ、『マトリックス』って、そういう映画だったんでしたっけ!?」(ガバ子)


ケロ「リアル・ドール専門誌『アイドロイド』[注1]編集長の河村さんが、映画『マトリックス』[注2]の研究本を編集しているので、今回はそれについて話してみようかなと」


[注1]2000年刊『AI(エーアイ)JAPAN』を前身とするリアル・ドール専門誌。2010年『アイドロイド ベスト』が刊行されている。


[注2]1999年制作、ウォシャウスキー兄弟監督作。仮想世界と現実世界におけるコンピューターと人間の戦いを描いたSF作品。



ガバ「いやー、凄かったですね。ようやく観たんですよ、『マトリックス』…。えー、『リローデッド』じゃない、普通の方だけど、感動しちゃいました(笑)。全然、意味とかわからなくても、いけますね!!」



ケロ「今度、河村さんが出す本は『マトリックスの哲学』というタイトルなんだけど」



ガバ「でも、私、『マトリックス』を娯楽大作として楽しんじゃったから」



ケロ「『マトリックス』という映画自体が、仮想の世界から現実に戻ろうという作品だけど。その研究本を作るのが、仮想エロの最前線『アイドロイド』の編集長という」



ガバ「『マトリックス』とエロが繋がってくるんですか!?」



ケロ「前も話したことなんだけど、雑誌とか、ビデオとか、インターネットとかで、エロのイメージが凄く大量に生産されていくと、現実の行為は減っていく。あるいは、現実の行為が減っているから、よりエロのイメージを求められて、増えていくと」



ガバ「そうですね」



ケロ「だから、『アイドロイド』という雑誌は、人間がまったく出てこない。リアル・ドール(等身大フィギア、あるいは高級ダッチワイフ)のエロ本になっていて、エロのイメージの究極までいっちゃってる」



ガバ「エロの対象が人間でなくていい」



ケロ「そうそう。ヘタな人間よりも、凄く精巧に出来ているリアル・ドールの方が、頭の中で考えているエッチなイメージに合致するなら、その方がいいと」



ガバ「完全に理想通りですからね」



ケロ「まあ、生きてないんだけど。だからその『生きてない』ということに、凄く仮想性がある!!」



ガバ「購買読者ってどんな感じなんですか。やっぱり凄い変態マニアとか?」



ケロ「編集長の河村さんによると、リアル・ドールって、凄く変態っぽく見えるけど、実はノーマルな人がハマりやすいジャンルなんだって」



ガバ「へえー」



ケロ「だから、凄く普通の人たちにエロのイメージが充満して、行き着く所が、理想通りに作られた人形という。だって、もっと別の変態性癖に走っている人の方が、生身じゃないとできないことが多いじゃない。SMとか、匂い系フェチとか」



ガバ「まあ、人形は出来る範囲が限られてますからね」



ケロ「だから、リアル・ドール愛好者は、変態のようで変態じゃない。マニアのようでマニアじゃない。ある種のオタク系だけど、今や、オタクも普通の人の一部でしょ」



ガバ「そうですね」



ケロ「だから、本当にごく普通のサラリーマンが、性癖的には変態性はないのに、普通の性癖のまま、エロの対象を人間からリアル・ドールに置き換えてしまうという」



ガバ「頭の中でオナニーする延長だと、いつか行き詰まりそうなんですけど。なんだか後ろめたさがありますね」



ケロ「『アイドロイド』で書いたことがある話だけど、もし生きてる女の人じゃなくて等身大の人形だったら、全身だと置き場に困るし、『顔だけでいいや』とか、『手だけでいいや』とか、『下半身だけでいいや』とか、そういう風になっちゃうんじゃないかって。精巧に出来ているから、顔だけとか置いてあると、余計、気持ち悪いんだけどね」



ガバ「でも、凄い需要があるんですね」



ケロ「それも河村さんとよく話すことだけど、リアル・ドールの人気が出た秘密に、ソニーの『AIBO』[注3]があるんだよね」


[注3]1999年、SONYから発売された犬型のエンターテインメントロボット。日本のロボットブームの火付け役となるが、2006年に最終モデルが生産終了となった。



ガバ「えっ、犬の」



ケロ「最初の『AIBO』が25万だったじゃない。あれ買ってもそんなによく動くわけでもないし、それなら、等身大の精巧な女の子の人形がいいと、ロボットじゃないけどね。『AIBO』以降、高級ダッチワイフに、20万円というお金出す人が増えてきて、ジャンルが成り立ってきたらしい」



ガバ「へえー、そうなんですか。でも、確かに、ビックリするぐらいホンモノっぽい!!」 



ケロ「だから、愛好者も急増中」



ガバ「でも、『アイドロイド』の世界は、仮想というよりは、プラモデルの延長?」


ケロ「でも、この人形でオナニーしたり、セックスしたりしているわけじゃない。他の変態性癖でも現実から隔絶した部分があるけど、人形までいっちゃうと他人がいらない」



ガバ「まあ、そうですよね」



ケロ「そして、他人とのコミュニケーションがないから、個人の中に閉じ込められていく。だから、凄く気持ち悪い」



ガバ「限界がありますよね」



ケロ「ギリシャの哲学者プラトンの話で『エロス』についての説明がある。それによれば、人間は、イデアの世界(現実世界に生まれる前の世界)では、みんな二人が一組、足が四本、手が四本、首が二つの動物で、神様が、それを現実世界に送るときに全部半分にちぎった。だから、僕ら皆常に『片割れ』であって、現実世界では、イデアの世界で一緒だった『片割れ』を探すことになる。それが『愛』であり『エロス』であると」



ガバ「そう考えると、常に他人と関係を持とうとする本能があるわけですよね?」



ケロ「そうそう。だから、人間は1人だけだと、『片割れ』だという前提で考えているから。当然、一生懸命、相手を探さなくちゃいけないし、それを見つけることでやっと安心する。その相手と一体化(セックス)したいという。つまり、『エロス』の語源は、『片割れ』を探す行為のことだから」



ガバ「いい話ですね。こう、26歳女子の心にはグッとくるものがありますね」



ケロ「だから、ヴァーチャルな世界がいけないというんじゃなくて、人間が頭の中に閉じ込められているという状態は、相手がいないし、『愛』もないし『エロス』もない」



ガバ「何にもフィードバックしない」



ケロ「でも、僕らが生きている消費主義社会は、僕らに、『物を買う』行為だけに快楽性を見出して欲しいと思っている。つまり、次これ、次これと、相手との関係性がなく、際限なく物を買い続けるという。社会全体の経済効率を考えたとき、理想的な消費者というのは、なるべく孤立してて閉じこもって、黙々と物を買い続けてくれるのがいい。

この社会は、僕らに2つの異なる要求をしていて、一つは『いい消費者』になれ、もう一つは『どんどん物を売れ』と。だから、僕らの社会自体が『マトリックス』のコンピューターみたいに、そこに属してる人たちがどんどん物を作って、売って、買うのを繰り返してくれるといいと思っている。

でも、ホントにこんな物欲しいのか、ホントにこんなに働かなくちゃいけないのか、僕らは何かに奉仕させられてるんじゃないか。結局、物を売る方も買う方も、何かに方向づけられているから」



ガバ「その連鎖から、一回離れたいときがありますよね」



ケロ「だから、みんなで本当の『変態』になって、その連鎖からハミ出そうと(笑)」



※『ニャン2倶楽部マニアックス VOL.11』(2003)掲載

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