「ヲタコミュから学ぶ童貞的メンタリティ」 久保内信行インタビュー

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久保内信行インタビュー

ヲタコミュから学ぶ童貞的メンタリティ




今回、童貞街道まっしぐらのわたくしチェリー平尾が取材させて頂いたのは編集プロダクション・株式会社タブロイドの代表取締役、久保内信行さん。オタクカルチャーにも造詣が深く、『メガストア』(コアマガジン刊)という雑誌でオタクの生態を徹底的に掘り尽くす『オタクの生き様』を執筆していらっしゃった方です。事務所にはいつも数人のヲタ浪人が床に転がっているそうで、「オタクとはなにか」を聞くにはうってつけの人物。ということで、「オタクと童貞」についてインタビューを開始。オタ界に生きるお方ならば童貞にもきっと寛大なご意見をお持ちであろうと思っていたのですが…、そんな希望的観測も虚しく、待っていたのはそれはそれは厳しい「現実」というやつでした…。(取材/チェリー平尾)




─本日はよろしくお願いします。

久保内(以下、久) ここはいつもヲタが溜まっている巣窟で、僕はヲタを童貞のまま生殺すコミューンの主だということで話を聞きにきたのかな(笑)

─(笑)。では、早速質問を。ヲタコミュニティの童貞率ってどれぐらいなんですか?

 世間一般より少しは高いと思います。30歳で5人中2人くらい。でも、30歳過ぎると一生卒業しない可能性が高いですね。童貞を守ることに意味を見出しはじめたらもうヤバい(笑)。

─あぁ、図星かもしれません。「童貞であり続ける」という修行は意味のないものなんですか。

 童貞だからこそ面白い人っていうのもいるにはいますけど、大抵の童貞はただの童貞ですよ。童貞こじらせるパターンは多くても3種類ぐらいしかないんで飽きちゃいました。それよりもこじらせた奴の喪失する瀬戸際、「童貞観」の問われる瞬間の方が面白いと思います。昔、知り合いの童貞がメイド喫茶のバイトになって洗い物とかしてたんです。そしたら、半年後にメンヘルのメイドと駆け落ちして(笑)。ただ、四六時中電話かけてくるような女だったんで、にっちもさっちも行かなくなって、「僕が間違ってました。童貞に戻りたい」ってポロポロ泣いた事件はありましたね。こじらせると変なカーブの切り方しますから、すごく面白い。だって、こじらせた童貞じゃない限りそんな女の子とは付き合わないじゃないですか。

─でも、30超えたら…。

 性欲自体が減退しますからね。あとアニメ見てても、主人公のお母さんに萌え出して、終いには、完全に保護者目線で放送を見るようになりますよ。人は童貞でも親になれるんです(笑)

─話していて「あっ、こいつ童貞かも」って分かる瞬間ってあるんですか?

 一般的規範を主張する奴は大抵そうな気がします。2ちゃんねるで悪口言いまくってるような奴は童貞ではないですね。むしろ、イベント会場にサイリウムを多めに持って行ってまわりの人に分けて「一緒に応援していきましょう」とかって奴の方が怪しい。「ライブ中はサイリウムを持っているのが普通だ」というよく分からないヲタ独特の規範のもとに生きていらっしゃるので。

人生そのものも、手垢にまみれた時代遅れな規範を今でも尺度として採用してますから、「一戸建てに綺麗な奥さんと住んで犬も飼って」なんてのたまうんですよ。じゃあ、お前の家に大量にある『ストライクウィッチーズ』のフィギュアはどこにいくんだよ、嫁との寝室にはそんなもんないだろって話なんですけどね。

─図星なところが多すぎて気持ち悪くなってきました…。そういう浮世離れした感覚を持つ人って男子校出身者が多かったりします? ちなみに僕もそうなんですけど。

 社会人になってもヲタを引きずっているのは男子校出身者が多いと思いますよ。共学出身者は学生ではなくなるタイミングでヲタ卒できる傾向があるように思います。共学って「あぁ、かったりー」とかって言ってる生身の女子が周囲にいる生活じゃないですか、でも、男子校は『スーパー写真塾』がある生活で(笑)。自分の周囲に異性がいないことの方が自然で居心地がいいのであれば、そりゃ、ヲタ側の世界に安住しますよね。社会人になって異性の友人がなかなかできないことに悩むこともない。

でも、言っておきたいのはですね、女から隔絶した世界に生きているからって、決してストイックな生活をしているわけではないということ。部屋の隅に積み上がってるアイドルのCDを見て「愛の高さ」なんて自慢してるけれども、それ、要は握手したかっただけじゃん!

─確かにそのよこしまな気持ちは否定できません。でも、その話からも分かる通り、ヲタとか童貞とかって草食系だなんだって呼ばれて淡白だとか称されますけど、決して性欲がないわけではないですよね。

 満たされていないという点では、リア充よりもむしろ性欲が強いと思います。そう思いたい(笑)。友だちにモーニング娘。のヲタがいるんですよ。昔、モー娘。でしかオナニーしないという誓いをたてていた変なやつなんですけど。彼のブログを読んでいるとですね、文章の最後に「市井1、安倍2」とかってメンバーの名前と謎の数字が必ず書かれていたんですよ。それで、不思議に思ったんで本人に聞いてみたら「その日ズリネタにしたメンバーと、そのオナニーの回数」だって。それ聞いて一同震えあがって…。ただ、面白がっちゃった他の友人がそのデータをエクセルで自動的にグラフ化するプログラミングをつくって『ヌッキモニ』なんて名前までつけちゃったりしたんですよ(笑)。で、その回数見てると彼が精神的にやばくなる時期になったりすると、異様に増えたりするんですよねぇ。

─わ、分かりました。ヲタだって性欲強いぞということですね。



—童貞っていうのは規範的にものを考えるからダメなんですよ



─ここ数年、秋葉原ブームなんかの影響もあってか、いわゆる「オタク」と呼ばれる人も若く、おしゃれになっているように感じます。

彼らはモー娘。のブレイクを子どもの時に経験している世代ですから、オタクに対する偏見なんかもないんでしょうね。ただ、20代も後半になると、「オタクである」ということは普通ではなくなるのですが…。

─うぐ…。心が痛い。ところで、アイドルのライブなんかに行くと、ファンのコミュニティがやけに体育会系だなって感じるんですよね。

 そうですね。ヤンキーの精神とオタクの精神って実は相通じるところがあります。それは両方とも「自分の異様性」を誇示する場だということですね。不良がとんでもないヤンチャをしでかした時の「やっべー」も、オタクがすごい痛車で街を走っている時の「かっけー」もどちらも褒め言葉じゃないですか。

─頭のおかしいことを自ら率先してやって楽しんでいるんですね。

 でも、そういう人って実はライトなオタクなんですよ。だって、「自分が他の人とは違う」ということをあくまで「人が認める尺度の中」で誇示しているんですから。群れているうちはまだ正常ですよね。自分の世界にこもりはじめた時、人は本格的にやばくなる。具体的にいえば、サイリウムをみんなと一緒に一心不乱になって振り回しているやつよりも、ライブ中なのに夢中になってメモとっている人の方がやばいでしょう(笑)。

─確かに。一匹狼はやばそうですね…。逆に、皆をまとめあげるカリスマヲタっていうのもいますよね。

 いますね。でも、よくよく考えれば、「トップヲタ」を目指す行為って倒錯してますよね(笑)。オタクの中で一番になったってアイドルと結婚できるわけじゃないし、むしろ、アイドルからどんどん遠ざかっているわけですから(笑)。まあ、「オタクになる」というのはどれだけスタイリッシュに自分の病気を自慢できるかの勝負なわけだからいいんですけどね。これを崇高な愛だとか感じはじめたらもうおしまいですけど(笑)。

─あと、前々から不思議に思っていたんですけど、オタクの人同士ってすぐに友だちになりますよね。

 すごいアクティブなんですよね。一般人よりも絶対に友だちの数は多いはずです。コミュニケーション能力は高いんですよね。

─じゃあ、彼らの営業成績もいいんでしょうね。

 飛び込み営業には弱いけど、ルート営業には強いっていう感じなんだと思います。いったん顔見知りになると強いっていう。

─ほうほう。

 知り合いのオタクに製薬会社の営業やっている人がいるんですけど、その人はメチャメチャ成績いいですね。オタクって相手の趣味にも寛容だし、マニアのツボっていうのも分かるんで、釣竿が壁にかかっていたら、「あれはどうなってるんですか? 」とか言って話すきっかけをつかめたりしますからね。

─やっぱり、オタクコミュニティって安心できるし、面白いですね。もうしばらくこのままオタクの童貞でもいいかな…。

 でも、28歳ぐらいになってくると、童貞捨てない・女の子と付き合わない理由が増えてきますよ。「こいつと付き合ったら、この娘と結婚しなきゃいけないのかなぁ」っていう風になってきますからね。ひたすらアイドルのライブに行き続けて育ってきたことにより上がりきったハードルは下がりませんよぉ。例えば、なんとなく仲良くなってご飯を食べに行くような娘ができたとしますでしょ。そしたらあなた、多分、悶々としてベッドで寝返りを打ち続ける一夜を過ごすことになりますよ。その女の子とはまだ手もつないでないにも関わらずにね。

─あぁ…。あぁ…。

 セックスに興味はあるけれど、毎週末「会え」って言われて自分の時間なくなっちゃったらどうしようとかいらないことを考えはじめてしまいますよね。恋愛で相手に歩調を合わせるなんて面倒くさいとか言い訳して、彼女つくらない理由をでっちあげたりして…。まだ付き合ってもいないのにね(笑)。

─返す言葉もないです。

 童貞ってとにかく規範的な考え方で生きる傾向がありますから、「恋愛関係とはこうである」という勝手なイメージに縛られがちで、「ただ一緒にいると気持ちいいから共に過ごす」といった身体的な感覚には疎いんですよね。

─なぜ、童貞は規範的な考えにとらわれる傾向があるんでしょうか?

 童貞は心の中でまだ学校の卒業式を終えていないんですよ。ほら、「放課後ティータイム」って言葉とか大好きでしょ(笑)

─えっ? (笑)

 それは冗談ですけど。学校の中ではいかに規範的なお題目を守っていくかが大事なわけじゃないですか。そこでシステムの穴を利用して上手く立ちまわる奴はズルいやつ。その規範がいまだに心の中に生きている。実際の世の中は学校とは違うと薄々感づきながらもね。でも、それって童貞だけにいえることじゃなくて、官僚精神・サラリーマン根性にも近くて「マジメ」なんですよね。

─なるほど。

 あなた、東大出て官僚になった男と、慶応出て大手商社に勤めてる男、どちらが嫌いですか。大手商社の方でしょ。なんか「ズルした」とか「うまくたちまわった」とかいう言葉を使って批判するじゃないですか。でも、それって、ズルでもなんでもないですから。そういう思考のフレームワーク自体が問題なんですよ。

ー分かりました。まずはこの腐った性根ときちんと向き合ってみたいと思います。今日はありがとうございました。

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※本記事は『スーパー写真塾』(コアマガジン刊)からの転載です。

久保内信行
株式会社タブロイド代表取締役。ビジネス・インターネット関連の書籍を多く手がける。また、タブロイドと愉快な仲間たち名義で『超解読 涼宮ハルヒ』を刊行したり・ハロープロジェクト関連の楽曲をかけるクラブイベント『爆音娘。』の初期に携わっていたりと、アニメ・アイドルといったオタクカルチャーにも深く関わっている。





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