《魔法少女×アイドル論》1.魔法の天使クリィミーマミ論 / 大塚幸代

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《魔法少女 × アイドル論》

1:魔法の天使クリィミーマミ論

文章;大塚幸代






ここ数年、再評価を受けている80年代アニメ『魔法の天使クリィミーマミ』(1983年7月?84年6月まで全52話放映)。10歳の少女が17歳の少女に変身をして、華やかな80年代アイドルになるという、夢のおはなしだ。

これは、初潮前と初潮後の、女の子の身体の物語なのだと思う。

80年代美少女変身モノを全部知っているわけではないが、私の記憶だと、多くの場合「変身後」の彼女たちは、ナースやCA等、多種の職業について、話ごとに状況が変わる。変身後の人格に、他人が関わっていくことは、あまりない。その場限りのヘルパーでしかない。

しかし、マミは「アイドル」という、ひとつの職業に就いて、それを継続的にこなしていく。動機は「アイドルへの憧れ」よりも「恋愛」。好きな年上の男子、俊夫が、変身後の自分に恋してしまったから。女扱いしてくれず、妹としか見てくれなかったあの人が、キラキラと憧れの瞳で自分を見上げる。マミは俊夫より背が高い。折れるほどに華奢な、でもしなやかな身体、ほんのりふくらんだ胸、化粧もしていないのに入っている青いアイシャドー、大きく巻かれた髪、短くふわりとしたスカート。ミニーマウス並の、曲線美の集合体で、エロティックだ。

10歳の初潮前の女の子・優が「17歳の美少女」という入れ物に入ったとたん「これはオイシイぞ」と、胸のふくらんだ身体を乗りこなしてしまうのがすごい。女というのは強い。

俊夫が必死で言う。「どうしたらまた逢えますか?」マミは上目遣いで、余裕でこたえる。「貴方の年下のガールフレンドに優しくしたら、逢えるかもしれないわね」 。

もちろん俊夫には、マミがそう言った意味が、分からない。

優=マミは1年の間、不思議な魔法の力で、10歳と17歳を行き来する。優は「いい子」なので、マミになっても「身体という女力」以外は、変わることがない。誠意をもって数々の問題を解決する。

ひょんなことからアイドルデビュー、ひょんなことから売れっ子になった彼女は、自分の魔法のタイムリミットに胸を痛める。マミが消えることで悲しむファンに申し訳なく思う。

でも仕方がない。いずれにせよ、彼女の少女の時間は(マミの時間も優の時間も)終わるのだ。魔法でオトナにならなくても、自分がオトナになってしまうのだから。

最終話、ラストコンサート。優=マミだとバレてしまうと、強制的に魔法の力を取り上げられてしまうのだが…、それを気づいたのは、いちばん気づいて欲しかった、俊夫その人だった。客席にいない優を探す俊夫。大好きだったアイドルのラスト公演だというのに、会場周辺を走り回り、叫ぶ俊夫。

コンサートが終わり、優の影が見えてくる。「優がクリーミィー…」 。彼女は彼の言葉をさえぎる。「優は優だもん!」 。

彼女は彼をつかまえる。変身美少女姿ではなく、妹分でもなく、ひとりの女性として、はじめて認識してもらえた瞬間。

物語のエンディングでは、その後の二人が描かれる。恋人になり、結婚して、可愛い子供が生まれる…という嘘のような順調さで二人は家族になる…。

「変身する君も、しない君も好きだよ」これが、魔法少女の中で、一番完成された概念だと思う。これは、普通の恋愛と同じかもしれない。女の子は誰もが、トランスフォームする生き物で、胸がふくらんでいない頃の「彼女」も、青春を謳歌する「彼女」も、年老いていく「彼女」も、ただのゆっくり変身する/しない、魔法少女だ。

すべての女子は魔法少女だ、ってことをなんとなく把握しておいて、受け入れ態勢を作っておけば、男子はモテる……と思いますよ?



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『PAM POPPUM! 大好き!魔法の天使クリィミーマミ』



大塚幸代(おおつか・ゆきよ)

埼玉出身。高校時代に音楽ミニコミ作りに誘われ、出版に興味を持つ。フリッパーズ・ギターのファンジン『FAKE』と音楽フリーペーパー製作をキッカケに、カルチャー雑誌『クイック・ジャパン』(太田出版)創刊編集長・赤田裕一氏に拾われ、学生ライターに。のち96年?01年まで5年間、『クイック・ジャパン』編集部に在籍、11号?38号まで編集・企画・執筆。2002年よりフリーランスに。ウェブコンテンツ・雑誌を中心に活動中(読み物サイト「@niftyデイリーポータルZ」は立ち上げ時の02年より参加)。

blog「日々の凧あげ通信」http://blog.hibi.her.jp/