《ボンクラ童貞編集者からの人生相談》 高野政所 「エナック思想」を広めるのがボクの仕事だと思っています!

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ボンクラ童貞編集者からの人生相談

DJ•クラブオーナー 高野政所

「エナック思想」を広めるのがボクの仕事だと思っています

取材/童貞編集者チェリー平尾



女性とキスはおろか、話すだけでも緊張してガチガチになってしまう童貞編集者。その女性に対する免疫の低さは、プライベートどころか業務にまで支障をきたす有り様であった。今までさしたる困難もなく、のうのうと生きてきたボンクラ青年に降りかかってきた人生最大の試練。壁にぶちあたり途方に暮れた彼は、悩みを解決する光明を得るべく、待へ繰り出していったのだ。果たして彼は救われるのだろうか? 明日はどっちだ?


ー先日、政所さんがDJしていたイベントに参加したんですけど、メチャクチャヤバかったです! ボクのイケてない人生を、どうしたら政所さんみたいに輝かすことができるのか、教えてください!

政所 それって要するに「IT革命」……つまり「生きてて楽しい革命」をいかに起こすことかってことですよね。分かりました、これから順番に話していきますよ。

ーよろしくお願いします。

政所 ボクの青春なんて、そりゃヒドいもんでしたよ。小学校の低学年の頃は、けっこうヒエラルキーの高いヤツらと付き合っていたんですけど、5、6年になると異性の目を意識するようになるじゃないですか? すると、女の子とうまく話すことができなくなり…。そんな状況のなか、ボクが普段<バギー>と呼んでいるような、サッカー部とかバスケ部とかに入るようなイケてる連中とは断絶していくようになりました。そんなこんなで、女性とまともに話せるようになったのが、大学卒業してから2、3年した頃だから、もうほとんどビョーキですよね…。今、ラジオで綺麗な女性アナウンサーと一緒に仕事してるんですけど、けっこう無理して相手のことを意識しないようにしてるんですよ(笑)。で、バギーたちは女のコにバンバンちょっかい出してるんだけど、ボクはどうしたらいいかわからないワケ。ボクがいても戦力外だから、女のコがいる場には絶対に呼ばれないんですよ。

ーそう、ボクもそうでしたよ!

政所 小学5年の時につるんでた連中と「くらやみ一族」ってのを結成したんですけど、小学生だから漢字書けないのでひらがなで「くらやみ」と書いて(笑)、そいつらとチャンリコで川原に行ったり、駄菓子屋に行ったり、小・中の頃はそんなてことばかりしてたんです。かといって不良でもないんですよね。不良って怖いから(笑)。そんな状況で高校生になって、深夜ラジオを聞くようになるわけですよ。当時、電気グルーヴがオールナイトニッポンをやっていて、この人たちスゲー面白いし、女のコにもモテるハズなのに、全然モテない的なことを言ってたから、勝手に親近感抱いちゃって。この人たちの言うことは全部本当だ!と思ってどんどん傾倒していったんです。そしたら学校で楽しそうにしているヤツらとオレは違うんだ!って意識が芽生え、世の中を斜めから見るクセがついて、どんどん孤立していくんですよね(笑)。

ーわかります。ボクもそんな感じでした。

政所 中高と男女共学だったから余計キツイんですよね。まわりにチャラチャラしているヤツらがいっぱいいるワケじゃないですか。ちょうどコギャルの元祖が出てきたあたりですよ。乱れるヤツはとことん乱れ始めていく時代で、まわりのヤツらはチーマーとか、ストリート系の若者にどんどんなっていく。そういうヤツらとの断絶はスゴかったですよね。

ーそうそう、キツイ、キツイんですよ。

政所 大学デビューって手もあったけど、全然デビューできず、電気グルーヴの影響もあったんで、バイトして機材とか買ってちゃんと音楽作ろうってことになっていくんですけど、音楽やってたって女性と話ができるようになるわけでもなく、ひたすら特撮番組とか香港映画からサンプリングして、それをテクノミュージックに落としこんでました。そういうの「ナードコア」って言うんですけど、当時の大学の音楽サークルはロックが主流だから、そこでも居場所がない。なので、家に帰って再放送のアニメ見たりとか、そんな生活。当時、ちょうど「エヴァンゲリオン」やっているのをリアルタイムで見て、一人しかいない友達に電話して「スゲ~ヤバイのやっているから見て!」とか(笑)。とにかく時間はスゲ~あったから、ヤケになって香港映画を年間に200本見るとか、暴走族のビデオを地方まで買いにいくとか、そんなことばかりですよ。ずっと居場所がなかったんです。

ーなるほど…、そうでしたか…。

政所 そんな中で大学2、3年の頃、やっとインターネットに繋がるんですよ。そしたら、特撮とかアニメのネタを使ってテクノをやっているヤツらが全国に同時多発的にいて、「オレみたいなヤツがたくさんいる、ガーン!」ってなったんです。そいつらが繋がっていってことで、ナードコアがちょっとしたムーブメントになっていって、そこでようやく自分の居場所が見つかった感じになりましたね。ただ、その中にも女はいなかったんですよ! いたとしても全部メンヘル。いや、ボクはメンヘル女ともしゃべれなかったんですけどね(笑)。メンヘル女とヤッちゃって変な方向に行っちゃうヤツはたくさんまわりにいましたね。

ーせっかく居場所ができたのに、ダメだったんですか。童貞期間、ものすごい長いですよね。

政所 結局、童貞26年やってましたからね。キミは今何才?

ー25歳です。

政所 よし、今のところボクの勝ちだな(笑)。でも、わかるよ、今のキミの状況。ボク、17、8歳の頃から足に鉄球がついて、どんどん大きくなっていく感じがしてました。キミの鉄球も相当でかくなってるでしょう?

ーはい。かなり重いです。

政所 26歳の頃にもう、完全に動けなくなるくらいデカくなっちゃって、地元・川崎のソープランドに一人で行く決心をしたんですよ。これじゃ、オレは一生セックスできないんじゃないか、これ以上童貞続けていたら頭おかしくなるかもしれないって思ったから、お金出してヤれるんだったらヤっておこうかな~って。どうせ行くなら、いいところに行こうと思って、2時間くらいかけて検索して、総額で7万円のソープに行ったんです。

ーな、7万円ですか! スゲ~ッ。どんなところなんですか?

政所 たしか「シルクハット」って名前の店。ソープに行ったのはそれっきりだから、どんなレベルかも分からないです。正直、セックスできれば誰でもよかったから、「こういうところは初めてなんで、そういう人を相手にするのがうまい人をお願いします」って言って出てきたのが、27歳って言ってたけど、たぶん30超えた女性で(笑)。「こういうところ初めて?」って聞くから「初めてどころか、セックスするのが初めてです」って、全部正直に話したの。そしたらまったく本気にしてくれないんですよ。で、最後まで信じてもらえずに一通り済ましたんですけど、初めてセックスした感想は「ああ、こんなもんか」くらいなもんでしたね。

ーえっ、26年間も童貞だったのに……。

政所 そこで初めて自分の中でセックスファンタジーが超巨大化していたことに気づき、そこから少しずつ鉄球が小さくなり始めるんです。で、28歳の頃に初めて彼女ができて5年くらいつきあったかな。でも、童貞を捨てても彼女ができてもこれまで超セックスしてきたヤツらに対する怨みはまったく消えないんですよ!


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ーやっぱり長いこと童貞をこじらせるとそうなっちゃうんですね(笑)。

政所 なんとかそういうヤツらに復讐できないかな~って思ってたら、ヤツらから金を巻き上げられれば、それが復讐なのではないかと思い立ち、それで、28歳のときに仲間と一緒に大岡山に「アシッドパンダカフェ」という小さなDJバーを作ったんです(現在は渋谷に移転)。そこでオシャレなヤツらが酒飲んでくれたらオレのところにお金が入るから間接的に復讐することになるだろう、なんてセコイこと考えていたら、自分たちの趣味があまりに出すぎちゃってオシャレなヤツらがまったく来なくなっちゃいまして(笑)。結局、自分たちみたいなヤツらしか来ない(笑)。

ー仲間に復讐してしまったと……。

政所 でも、面白いヤツらが集まってきたから、そいつらの発表の場にしようと思って、イベントとかやっているうちに今の状況になっていったんですよね。で、数年前に、インドネシアの「ファンコット」っていうクラブミュージックと出会ってガツ~~ン!!ってやられたんですよ。ファンコットって欧米のハウスミュージックがインドネシアに入ってきたとき、より気持ちいい方向に魔改造をしていった結果なんですよね。トラックをデコトラにしちゃう感覚みたいな。ファンコットには、「仮面ライダーBLACK RX」の主題歌やマイケル•ジャクソンの歌をリミックスしたものがあって、その両者がまったく並列なんですよ。今までボクは「オタク」とか「ボンクラ」とかの自分の立ち位置にこだわって物事を斜めから捉えることに特化してやってきたけど、そんなの関係ねぇじゃんって。ファンコットの価値判断の基準は「アガる」「カッコイイ」ってことだけなんですよね。

ー日本だとアニメや特撮の音楽入れると、お笑いになっちゃいますもんね。

政所 彼らには日本語なんかわからないワケだから、ただ「アガる」ことだけが勝負だ!みたいなところにたどり着いたんでしょうね。インドネシア語に「エナック」(ENAK)って言葉があって、彼らはご飯を食べて美味しかったときも「エナック」、いいセックスをしたときも「エナック」、サッカーでいいシュートが決まったとき、いい音楽を聞いたときも「エナック!」なんですよね。それに共通するのは「気持ちいい」「アガる」ということ。ギャル語でいうところの「アゲポヨ」、若者たちの「ヤバイ」と似てるかな。ケータイ小説ってバカでも理解できてバカでも泣けるじゃないですか。あれも一つの正しい姿だと思うんですよね。アガるもんはアガるじゃん!みたいな人がもっと増えればいいと思うんですよね。あやまんJAPANの「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー」が流行ったりとか、PSYの『江南スタイル』もそうだけど、ただアゲるだけ!っていうものの需要が今はけっこうあるような気がしますね。ファンコットって、いわゆる欧米の洗練された音楽よりもダサイってよく言われるけど、そうじゃなくて、アガるかアガらないか、ヤバイかヤバクないかってことなんだと思うんです。それがインドネシアでいう「エナック思想」なんですよね。ここ数年でそれに気づいて、生きてて楽しいこと=エナックであること、ということになったんですよ。

ー復讐からエナック思想にたどり着いたと。

政所 結局、人生もアゲとサゲしかない。いい状態と悪い状態が繰り返すだけじゃん。だったらどんどんアガっていこうよ、って思うようになったんですよ。この「エナック思想」を広めていくのがボクの仕事だと思ってます。

ーインドネシアの若者たちってどんな感じなんですか?

政所 彼らは週末になると巨大ディスコに行ってファンコットでアガるんですよね。そこは地下がディスコで1階がカラオケ、2階がスパ、3階がマッサージ、4階がホテル、その上がレストラン…みたいな快楽の総合商社なんです。そこに行けば一晩中快楽にまみれられるワケ。ジャカルタのコタ地区なんかには、そういうエナックビルが何件もあるんですよ。

ーいいですね~、日本にもエナックビルを建ててくださいよ。

政所 将来的にはぜひ建てたいですね。日本なら温泉があったほうがいいかな。

ーボクもエナックな人生を送るために、普通に女のコと話ができるようになりたいです。

政所 実は、いい方法があるんですよ。ボクが童貞をこじらせているとき、仲間にもう一人童貞がいたんですけど、「申し訳ないと」(ライムスターの宇多丸氏、ロマンポルシェ。の掟ポルシェ氏、電撃ネットワークのギュウゾウ氏などを擁する、日本語曲オンリーでパーティーを盛り上げるDJ集団)の総裁・ミッツィー申し訳さんの企画で、ボクとそいつがゲームをすることになったんですよ。命題は「1ヵ月中に素人の女のコをデートに誘うこと」。で、できなかったら「3億円払うか死ぬ」ってルールなの(笑)。まぁ、3億円なんてあるわけないんですけど、負けたら、ミッツィーさんに「死」に匹敵するほどの恥ずかしいことをさせられるのは判ってたから、必死で女のコに声かけまくったわけですよ。そしたら、アレ?オレ、女のコに相手にしてもらえるじゃん、ってことにだんだん気づいて、その勝負に勝ったんですよ。どんなボンクラだって、厳しいルールを自分に課すことによって無理矢理自分をブーストアップしてやれば絶対にイケるんですよ! このゲーム、「恋愛デスレース」って呼ばれてるんですが、ボクのクラブに出入りする若いヤツらに何回かやってるんです。そこで自信をつけるヤツもいれば、脱落してもっと鬱屈しちゃうヤツもいて、実はボク何人か若者をダメにしてるんですよね…。

ーあら~っ、ボクはそっちかも……。

政所 ダメでもさ、ヤレばヤレる!って自信をつけることが大事なんだよ。すると鉄球がどんどん小さくなってくるから、ガッツキ感がなくなってくる。その状態で普通に暮らしているとモテたりするかもしれないんだよ。キミも今度、ウチの若いモンと「恋愛デスレース」してみない? いつでも歓迎するぜ!

ーあっ、はい。その時はよろしくお願いします。今日はエナックなお話、ありがとうございました!




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(この記事はコアマガジン刊『スーパー写真塾』からの転載です)

高野政所

たかの•まんどころ/1977年生まれ。渋谷にあるクラブ「ACID PANDA CAFE」店主。インドネシアのダンスミュージック「ファンコット」を日本に広めた第一人者。アイドルポップス史上初のファンコット曲として、川島海荷が在籍しているアイドルグループ「9nine」のシングル『イーアル! キョンシー feat.好好! キョンシーガール』のアレンジを手掛け話題となった。DJとしての腕だけでなく、トークの面白さにも定評があり、TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド•シャッフル』への度重なるゲスト出演のほか、同局で放送していた『ザ•トップ5』のパーソナリティーも務めた。現在は、自身でプロデュースとミックスを手掛けたJ-POPカバーミックスCD『最強神速J-MIX~FUNKOT EDITION~』や、アイドルグループ「hy4_4yh」の楽曲の編曲に関わるなど、ファンコット伝道師として勢力的に活動している。



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