お腹が空いたよ。グルメ漫画

2011-06-09-13.16.35.gif

食事が出てくる漫画が大好きである。いわゆる「グルメ漫画」と呼ばれる長い歴史を持ち、数々の名作を生み出してきたこのジャンルのファンは多い。味も匂いも無いにもかかわらず何故、僕らはこんなにも心惹かれるのだろうか。様々な作品に登場する料理からその魅力を作品から紐解きたいと思う。(Hda)

〜1皿目〜

『ステーキとお弁当』


41V6k1PJICL._SL500_AA300_.jpg

極道の食卓」立原あゆみ

立原あゆみ先生が描く「任侠」×「グルメ」×「学園もの」という贅沢すぎるテーマの傑作漫画。なんでもっとグルメ漫画特集で取り上げられないのか理解に苦しむほど飯描写が秀逸。ヤクザとしての稼業の傍ら、夜間学校で勉学に励む組長クジラが作る料理は酸いも甘いも経験してきたヤクザらしい豪快なものである。傷ついた子分を労う為のクレソンたっぷり付け合せた分厚いステーキ、母親を亡くした同級生のために作った思い出の弁当、そこには戦ってきた大人の男のダンディズムと、親孝行できなかったヤクザ者の母性への哀愁が、見え隠れする。飯を語るならこういう男になりたいと切に願う。傑作。




合わせて観たいこのDVD
クジラ 極道の食卓


●まさかの映画化。主演は松平健。

〜2皿目〜

『山岡のプライベート飯』


51Y2MJH3WHL._SL500_AA300_.jpg
(美味しんぼ/原作:雁屋哲、作画:花咲アキラ)

豪華絢爛な料理や、様々な多様な料理が登場するグルメ漫画ブームを牽引する代表的作品でありながら、飯漫画好きからこんなに嫌われているグルメ漫画も珍しい。いや、本当は皆好きだったのだ。アウトローな空気を漂わせる東西新聞社の不良記者、山岡士郎は、実は料理に対して天才的な味覚センス、知識を持つ希代の芸術家、海原雄山の息子だった…! 母を虐待した父を憎み、埋められない深い確執がありながらも、その天才的な血は確かに受け継がれ、料理対決を通して雄山に近づいていく……そう、連載当初はテンション上がりっぱなしの熱い展開だったにもかかわらず、巻を増すごとに、山岡のキャラはアウトローからかけ離れ、ヌルい三枚目キャラに変貌。人助けを繰り返すうちに目もどんどん垂れてきた! 「お前、そんな奴じゃなかったじゃないか!」と失望した読者の怒りの矛先は、パートナーであり、現在山岡士郎の妻である栗田ゆう子に向けられる。「あのビッチ! 最初は士郎の後ろでアタフタしてるだけの小娘だったくせに、いつのまにか士郎をコントロールしようとする悪女になりやがって…! あいつが全部悪い!」と。読者に反感を買いつつも、結果、親子を仲直りさせようと長期に渡って裏で画策する栗田ゆう子の狙い通りに、二人はやんわりと和解し、士郎と雄山は完全に牙を抜かれ、すこぶる評判の悪い環境問題編、日本全県味巡り編へと突入していく。

そんな真面目になっていく山岡に失望した読者に贈りたい料理が43巻に収録されている。
そう、山岡がサルモネラ菌で死にかけ、その後、栗田にプロポーズしたあの巻だ。

病院のベッドの上で医者に昨日何を食べたのか聞かれたときに答えたあのメニュー。
目玉焼き、ソーセージ、牛肉の刺身、親子丼、レバ刺し…作中では絵も登場しない、究極でも至高でもない、僕らが食べてるものと変わらない、なんでもないメニューの数々だが、昔の独身時代の山岡の自由なプライベートの生活、当初の自堕落さを感じさせてくれるのだ。


合わせて読みたいこの一冊
「美味しんぼ1巻」/原作:雁屋哲、作画:花咲アキラ


●改めて読み直そう。

〜3皿目〜

『スキタイ流』

51FFWDATCGL._SL500_AA300_.jpg
(ヒストリエ/岩明均)

紀元前のヨーロッパを舞台にした歴史漫画であるため、登場人物が食す料理は富裕層や王族であっても、現在の食生活に比べるとかなり質素である。そんな作中で皮肉にも一番美味しそうに見える料理が、好戦的なスキタイ民族が意趣返しとして差し出した「ある肉」である。何でも手に入る現代人が決して食べることのできないその「肉」は一際印象的。
真似しちゃダメだよ。


合わせて読みたいこの一冊
「寄生獣」/岩明均


●マルマルモリモリよく食べてらっしゃいます。

〜4皿目〜

『四葉のクローバーのサンドウィッチ』

31J9XTC2QFL._SL500_AA300_.jpg
(ハチミツとクローバー/海羽野チカ)

ご存知な人も多いと思うが、海羽野先生の漫画には「食卓」のシーンが多い。ローマイヤ先輩のハム、アパートの同僚で先輩の忍が大量に買い込んだコロッケ、貧乏学生である主人公・竹本の空腹を満たすと同時に、一人暮らしの寂しさを慰める。作品中、仲間たちが囲む食卓は、それぞれの夢を目指し、様々な困難に傷つく登場人物たちを癒す。その一方、ヒロインである花本はぐみ、山田あゆみ二人が作り出す女子料理はサバト(魔女料理)と称され、カボチャとチョコミントを組み合わせた「カボミント」、「グレープフルーツの炊き込みご飯」など、物語の序盤から最後までトンデモ料理として漫画の中では徹底的にギャグとして扱われ、竹本を始め男子勢を苦しめる。

しかし、作品の最後、本当に最後の最後に登場する『四葉のクローバーのサンドウィッチ』に竹本は号泣する。ハチミツを塗ったパンに四葉のクローバーを挟んだ最後の「トンデモ料理」が甘酸っぱい恋愛の記憶と大切な友人と過ごした思い出をフラッシュバックさせるのだ。

人を感動させる料理は味ではなく記憶、というのを十二分に堪能できる切ない料理である。


よくよく考えると二人の料理の腕はともかく、料理自体は「トンデモ料理」ではない。どれも料理として成立している。ジャイアンシチューのような、とても食えた物ではない、わけではないのだ。決して残飯にはしない。(実際、男子たちは瀕死になりながらも完食する)

そこに海羽野先生の食への愛を感じる。



合わせて読みたいこの一冊
「放浪の家政婦さん」/小池田マヤ



●「ひじきとグレープフルーツのお寿司」とか出てくるけど本当に美味しそうな一例。料理は、腕だ。「ピリ辛の家政婦さん」と合わせてどうぞ。

shinsotu.gif

皆さんも知られてない美味しい漫画がありましたら教えてくださいね。(Hda)

次号後編につづく!