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文=荒玉みちお
写真=石島祐士



ミラ狂美。マジック、流血針、サスペンション、顔面パンチとあらゆる要素を作品に織り交ぜたハード映像を世に送り出し、魑魅魍魎蠢くSM世界の急先鋒を走っている。しかし、その本性は未だ謎に包まれている。数々の異名をもつミラ狂美とは一体何者なのか? インタビューでその本性を暴き出す。



 このところ「鬼畜系」としてSM専門誌を賑わしているミラ狂美だが、実際に会ってみるとむしろ「優男系」と言いたくなるほどに上品で優しげだ。しかし現実はM女を殴り倒し、ヴァギナや乳首に針を刺しまくり、血まみれの女を見て微笑みを浮かべているのだから、鬼畜系と言われたら認めるしかない。しかしそれでいて舞台ではマジシャンとして魅せてくれるときもあるのだから、とらえどころがない。わかりやすい言葉で「ミステリアスな緊縛師」とでも言えばいいのだろうか。

 その人の色というものは、自分で積極的に染めにいく、いわゆる自己演出の成果の場合と、周囲が勝手につける場合があると思うのだが、彼の場合はどうだろう。

「鬼畜系と言われることをどう思うか?」といった質問に「いや~」と笑った。もちろんミラ狂美、独特の微笑みである。

「鬼畜ではないですよ。ちゃんと安全第一にやってますよ」

 思わせぶりな微笑みを絶やさない。

―そうすると、手加減して殴っている?

「何の怒りも持ってない相手を叩くのって、けっこう難しいんです。だから結果的に、手加減してると思いますよ」

 なるほど、そりゃそうだ。そうすると、鬼畜系と言われるのは心外ではないのか。

「いや、まぁ気に入ってますよ、鬼畜系。一時期はキレキャラにはまっていたんですけど。急に怒ると相手(M女)の目が丸くなるのが面白くて。だから、やってたんですけど、今はヘラヘラ系で。そっちのほうが鬼畜度が増すんじゃないかと」

 担当編集M氏が「狂美さんの作品を見ていると、大きなトラウマを抱えたM女さんたちが、狂美さんからさらに大きなトラウマを貰って解放され、そして癒されているっていうイメージなんですが」と言った。これもなるほどだ。取材前に見たDVDの女も「これまで付き合ってきた男はひどい暴力男ばかりだった」と告白し、その直後に狂美氏にボコボコにされていた。ただ、そんな「SM=癒し」的な見方は好まないのか「そういうものもあるんでしょうけど、まあ基本的に明るい子が多いんでね。抱えながらもまあいいか、みたいにみんな明るいんですよね」と言った。

 ミラ狂美的SMのもうひとつの特徴は、身体改造マニアとの融合だろう。『ゲトリスト4~生ヅメ針刺し拷問!』というDVDでは、文字通りの生爪針刺しなどの「鬼畜系」プレイの他、天使の羽に見立てたサスペンションを取り入れている。何か意味ありげなシーンで、表面的な鬼畜系とは違ったものを感じるのだが、素人にはとても理解できない何かなのだと思う。

「あれは普通の女の子なんですか?」

 この程度の質問しかできない。

「普通ですよ。サスペンションってなに? って聞いてくるくらいの。普通に“ちょっと痛いんだけど”って言ってましたよ」

 淡々と、しかし微笑んで解説した。かつて、ニャン2の世界観にピアスが入り込み、そして自然な流れで強烈な身体改造ワールドが入り込もうとしたとき「これはもうエロではない」との意見があり、結局、両者が融合することはなかったような気がするが、ミラ狂美の世界では違和感なくSMと身体改造が融合している。もっとも本格SM世界の人に言わせたら「あれはSMではない」との意見が出るに違いないのだろうけど。

「まあ、僕なんかが、SMとはみたいなことをやってもしょうがないんでね」

 サラリと言った。そして「今日はちょっと滑舌が悪くてすみません。舌を切ったばかりなんです」と。ペロリと出てきた舌は2枚に裂けていた。スプリットタン。

「10日ほど前にイベントでやったんです。サプライズ企画として」

 舞台で舌を切った。

「痛くない? 血は?」

 素人だからこの程度の質問しかできない。

「血は6時間くらい止まらなかったかな。でも思ったほどは出なかった。それよりも自分の血をそのまま飲めるってことが結構良かったですよ。あとは3日目ぐらいから腫れてきて、それはけっこうキツかったですけどね」

 ほう、と感心して頷くしかない。

「子供の頃から…」変な子だった聞くのも失礼なような気がしたので言葉につまると、狂美氏は察して優しく答えてくれる。

「SMというより、アブノーマル全般に興味があったみたいですね。漠然とですが」

 漠然としたアブノーマル世界感から、具体的にSMを抽出したのは、今から11年ほど前のことだった。

「その頃ちょうど、ピアッシングのクラブイベントなんかに行って、何となくここは自分の居場所なんじゃないかと」

 当時、ラーメン屋でバイトをしながら芝居をやっている貧乏な演劇青年だった。

「ラーメン屋でもおネエちゃんを調教したりしてて。厨房でオシッコさせたり、カウンターの下でいじったり。バカですね」

 そのおネエちゃんはマスターの娘だった。可能性としては「ミラ狂美」ではなくラーメン屋の二代目(養子)という人生の選択肢もあったわけだ。いや、なかったか。

「最初、仲が悪かったんです。だけど、手込めにしたら大人しくなりました。それからは向こうが積極的になって。奥に一畳くらいの更衣室があったんですけど、客が途切れるとそこに行こうと、誘ってくるんです。さすがに店では縛りはしませんでしたけど」

 もちろん手込めにした女は同時進行で何人もいたに違いない。そんな女のなカの本格的なM女の一人と、イベントにでた。

「なんか、縛りをいれたパフォーマンスをやりたくて、たまたまパートナーがいたんでクラブでやってみたんです。そのときは踊りながら縛るという。縛り方なんかめちゃくちゃだったんですけど。綿ロープで、ただ螺旋状に巻いただけの。それがわりとウケて」

 プロになるきっかけだった。遡って、具体的にSMに興味を示したのは何だったのか?

「まあ、普通にSMは好きでしたね。ベタですけど、伊藤晴雨とか見て。だから本当は、そういう和風なところから入ったんです」

 明智伝鬼の緊縛ショーを見て衝撃を受けた。

「初めてみたときは、後光が差して見えましたよ。神様かと思った」

 そういう、ある意味では一般的なSMの入り方をして、今のような世界へ流れてきたのは、やはり根っこから独特の世界観を持っている人だからだろう。

「たぶん、最初に自分の変態性を感じたのは女装願望からですね。それと男性への興味。小さい頃にピンクレディが流行って、それの振り付けをマネしたりしてたんです。新宿2丁目には、ピンクレディ好きの人が多いですからね。再結成のときなんか、ライブに大挙して行ったらしいし。だからそういうところ、一緒なんだと思います」

 取材のときは「意外な展開」と思ったが、実は自然な展開なのかもしれない。

―実際、男にも興味あり?

「まぁ、ちょっと…ですけど」

―女装は実際に実行した?

「昔はプライベートで女装して、外を出歩いてましたね。いまはその気はないけど」

―女装は勃起する?

「…しますね」

―外出は一人で?

「もちろん。イベントに女装して行くこともありましたけど、醍醐味はやっぱりひとりでやって出歩くことですよ。ナンパ、されましたね。たぶん分かっていて声をかけてくるんだろうけど。ただ後ろ姿だと分からないようで、満員電車なんか乗るとけっこう触られるんです。電車ってこんなに凄いんだと思いました」

 クラブで踊りながら緊縛するというパフォーマンスをデビューと位置づければもうキャリアは10年になる。

「いつの間にか、ですね。けっこう時期が良かったようで、始めて1年くらいでバイトしなくてもいいようになった。ショーは、最初はイベント系で面白さ優先で、それからまぁいろんな要素を入れるようになって、4年目くらいからマジックをするようになった」

SMとはいえ、ショーでやるからにはエンターテイメントをめざす。

「いきなり、理由もなく鞭が出てきたり、バイブが出てきたりっていうのは、あんまり好きじゃないです」

 マジックも本格的だ。

「ほとんど独学ですけど、最初は東急ハンズで買ったグッズから入り、それから専門ショップへ行くようになり、マジックのコンベンションに出入りするようになり、そこで知り合ったマジシャンに自分は本当はSMをやっていると言ったら、異常に興味を示して自分の店(マジックバー)でやってくれと、食いついてきた人がいて。だからそのまま100円ショップでSMに使えそうな道具を調達して、その日の夜にマジックバーでSMショーをやったこともある」

 SM以外のエンターテイメントは極力観に行くようにしているという。

―もうエンターテーナーですね。

「なりたいんですけどね。最近はマイケルジャクソンの踊りとかもやったりして」

 相変わらず、とらえどころのないミラ狂美的微笑を絶やさない。

―そうするとSMという、しかも鬼畜系なんていうジャンルで括られるっていやじゃないんですか?

「いや嬉しいですよ。それあっての自分だと思ってるんで」

 ミラ狂美といえば「美少女系のM女を多く抱えている」という印象が強い。実は担当編集M氏が一番聞きたかったポイントは、そこだという。ミラ狂美はなぜモテる!

―Mの女の子は大体何人くらい持っている?

「15人…くらいですかね。ほとんど自分のイベントに来る子に声をかけて…まあ、楽をしてますよね」

 実は「鬼畜系」とはいえ、かつては女装に興味ありの中性的な部分を持ち、見た目は優男風だから近付きやすいのだろうか。

―そういう子たちと男女の関係になることってないんですか?

「いや、それはないです」

―じゃあ調教してくれという願いだけ?

「最初はそうですね。でもだんだん、普通に遊び友達みたいな感じになっちゃうけど」

 担当編集M氏が「モテるコツ、M女たちをコントロールするコツってありますか?」と力強く質問した。

「僕の場合ですけど…極力触れる、でも干渉しすぎない。トラウマなんか抱えていそうな子でも、聞かないんです。そしてあくまでも普段はゆるく…。ギャップがないとね、ただの鬼畜だと誰も来ない(笑)。あとやっぱり、相手の女の子を認めてあげる、というか受け止めるというね」

 頷きながらあ自分の中で反芻しているM氏を尻目に、これからのことを聞いた。

「可能性を模索している。SMの可能性になんで今まで気がつかなかったのか。ただ形式的に縄やってバイブやってというのは面白くない。みんなそうなんですけど、SMを本当に愛してるのであれば、可能性を探ってもらいたいですね。マジックをやるようになってから気付いたことがあるんです。マジックって、物をどこに置いてどこでリラックスするか、すべてに意味があるんです。責めも意味があるほうがいい。何でここで鞭を打つのか、どうしてここで縛りなのか。はいバイブ、はい次は鞭、というのは美しくないですよ」

 具体的に展開したいプレイは?

「切り取りたいですね。乳首…まあ可能なのはラビア、耳たぶ、お尻の肉かな」

 と、ミラ狂美的微笑を浮かべる。最後は、やはり鬼畜系で締めてくれた。昨年は台湾のサークルに招かれてショーをやってきたという。それらしきサークルのレポートをネットで見つけた。そこには「ミラ狂美 新世代的邪愾美魔術縄師」と紹介されていた。世界的に、不思議な縄師という印象なんだな。


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PROFILE
ミラ狂美(みらくるみ)
♂ AB型 6/9生まれ