器具田こするのオナホール戦記 第一回

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txt 器具田こする教授(Kiguda Lab.)


第一話




序文



■ 人工女性器から性の未来が見える

 男性の大半は結婚しても、変わらずオナニーに励む。それは配偶者とのセックスに安住せず、さらなる高みを目指したいからだろう。一方、童貞のままオナニーを突き詰めるオタク道にあっては、愛する脳内嫁とのセックスを高度にシミュレートしている。


 現実の家庭だの、子孫を残すだの、義務のように考える人がいるが、そんな事は他の誰かがやっている。自分は本当は何をしたかったのか、問い直すのも大事だと思う。


 生殖を考えなければ、セックスは女体を使ったオナニーだとさえ言える。セックスはオナニーで、オナニーはセックスなのだ。双方は合わせ鏡のように、理想的な性体験を求める人類の歴史を紡いできた。理想とは、言い換えれば性癖。現実を無視した、人それぞれの身勝手なこだわりである。われわれは性体験を生殖のままに終わらせず、自らの脳内に理想の性行為時空〈イマジナリ・ヘヴン〉を創発し、飛び込んでいく。


 その性行為時空と現実時空をつなぐリンク・メソッドのひとつが、本連載の軸となる人工女性器——オナホールである。性器を人工的に作ってしまえば、都合の悪い現実から自由になるというわけだ。


 すでにオナホールの話は恥ずかしいものではなくなっている。イケメン俳優やミュージシャンが普通に「テンガでオナニー」などと発言しても許される時代だ。

 しかし、それはカジュアルな側面が注目されただけ。オナホール業界の奥底では、性器の完全再現を目指し、さらには性器を超え最高の性感ツールを作ろうとする人たちが死闘を繰り広げている。


 そんなオナホールの歴史や周辺事情をたどりつつ、現代人の性文化を解き明かしていこう。





■ 女性器に祝祭性はあるのか






 人工の女性器を作る目的は大きく分けると、観賞用と実用だ。


001.jpg太古の女陰図 前者は3万〜1万年前から、世界各地で裸体全身が神像として作られるるかたわら、そのエッセンスとして性器部分だけのレリーフなどが同様に崇められていた。エロい造形は岩や木などに刻まれ、礼拝者は賽銭を払ってそのブツを撫で回していく。名作ほどよく撫でられるもので、撫牛同様に表面が摩耗、手脂でツルツルになり、それが匠への評価となったという。


 日本にも、神輿に人工チンポを載せて担ぐお祭りがある。性欲は生き物の根源。たとえ恥ずかしくとも隠し通せるものではない。各時代の権力者に規制されながら、性器オブジェ文化は細々と続いてきた。エロくても歴史なら仕方ない。そう説得できればこっちのものだ。


 歴史とか伝統を大義名分にするやり口では、1970年代に「秘宝館」という観光施設が多数作られ、ブームになったことがある。巨大な男根や女陰の像などを教養っぽく展示した性のテーマパークである。


 これら観賞用の人工性器は、保存性が最重要だ。撫でたくらいで神が簡単に崩れては困る。だから堅い素材で作られ、勃起した男性器が多い。反面、女性器は座ったり寝かせて股を開かないとその全貌がわからない。構造が難しいためデフォルメされやすく、立体的な作品は少ないのだ。女性のパーツなら、むしろオッパイやケツを作る方向に行く。


 岩に刻まれた女性器は、古代のヤリチン男が童貞にマンコの形状を教え、自慢しただけの可能性もある。祝祭どころではなく、童貞は悔しいばかりだろう。

参考文献:古代の性的シンボルを訪ねて(堀上英紀)




■ ガチの実用道具は引かれる






  人工女性器を、柔らかく触って気持ちいいことに重点をおいて作れば、挿入も可能になるし、すなわち実用目的となる。器具とか道具と言い換えると、俄然生々しくなる。その本質は、女性器と女性を別物として捉え、プレイを再構築することだ。性行為は生身の人間同士でイタす、女性と女性器が不可分である事が前提の社会において、道具で性感を究める求道者はなかなか理解されない。


 材料にしても、1950年代に石油化学製品が普及するまでは、人間の膣に似た質感の軟質素材といえば食品くらいしかない時代が続いた。この時期を天然素材の時代と呼ぶことにしよう。


chingu1.jpg左上から2番目に吾妻形 コンニャク、延びた麺類、臓物を抜いたイカ、小穴を開けて加熱したメロンなど。片栗粉Xも同じ系統の道具に入る。獣姦は現代のレベルから見ても非常に高い膣再現度だろうが、抜きネタを書き換えるインパクトのため、オナホールの代わりとするのは困難だ。


 こうしたわけで、道具は男性の自己完結を目的とする以前に、まず女性を責める小道具が発達した。人工男性器、ディルドである。男根ならば、多少堅くても良い。萎え気味の本物チンポの前座として活躍してくれる。初期の素材は青銅、象牙や芋茎=ズイキであった。


前述の通り、男の代わりは作りやすい。男の本質など、棒っきれでしかない。片方、女性器再現のための要求スペックは高い。江戸時代のオナホール「吾妻形(あづまかた)」は、鼈甲の外装に絹ビロードを内貼りした高級素材の逸品だ。感覚は、毛足の長いレーヨン布巾をチンポに巻き付けてしごいてみればだいたい想像がつく。そんなもので抜くのだから、当時の賢者モードはさぞかし辛かったことだろう。


参考文献:日本人の性生活(フリートリッヒ・S. クラウス (著)、安田 一郎 (翻訳) )



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著者紹介


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器具田こする教授


マッドサイエンティスト。ドールとホールのR&Dアートユニット「器具田研究所」を主宰。隠匿野外自慰器具「オナーパンツ」でオナニーの世界に革命を起こし、複雑系ホール構造やオナマシン設計などアダルトグッズのテクノロジーを追求し続けている。「ゆっくりしていってね スローオナニー入門」(コアマガジン)でCEOを担当。発音は「きぐた」ではなく「きぐだ」と濁る。

webサイト http://www.kiguda.net/
Twitter @kiguda








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