器具田こするのオナホール戦記 第三回

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txt 器具田こする教授(Kiguda Lab.)


第三話






■ きっと何物にもなれないアダルトグッズ


 1950〜60年代の「大人のオモチャ」人気は大変なもので、男たるもの、とりあえず挿入前に女性をモーターパワーでイカせてみるべし、というそれまでなかった新たな性の作法すら生み出した。インターネットの無い時代、通販は信じられないという声もあり、アダルトショップのリアル店舗は小さな街にもあるほど普遍的な存在だった。

 当時の性具マーケットは決して野放しではなかった。質の悪いグッズを誇大広告で売っても炎上しないかわりに、第二回記述の厳しい風紀統制がある。エロ本も含め、アダルト業界は現在よりも摘発リスクが高いアンダーグラウンドなものだった。このリスクプレミアムを取れるのは、企業コンプライアンスと無縁なアウトロー勢力だ。アウトロー間で自主規制をしているフリをしつつ、市場は不健全に形成されていく。そのプレミアム分は、たかがローター付きのソフビオナホールが1万数千円という当時の商品価格に響いていた。
 そんな高額でも、当時はそれに見合った「セックスのファンタジーを増幅する」という価値がきらめいていた。

 さて、振動するというだけであんま機の仲間にされてしまった電動アダルトグッズ。薬事法での取り締まりに対しメーカーが控訴した結果、1974年、東京高裁は「バイブはあんま機に当たらない」として無罪判決を下した。この逆転裁判で、電マと電動ディルドーの間に一定の線引きがなされたとも言える。
 これを受けて1985年、風営法改正の際にアダルトショップは「性風俗関連特殊営業」と定義され、正式にアダルトグッズが国に認められた。

 かくしてアダルトグッズ製造者は薬事法から逃げ、コケシやフグなどと伝統モノを偽装する必要からも解放された。何にも分類されない商品となったとはいえ、あからさまにわいせつを訴求すれば、また官憲に取り締まりの口実を与えることになる。この時期はおそるおそる、デザインを模索していったのだろう。わいせつの定義はいつか時代が変えてくれるものだ。摘発リスクのなくなった業界にはリスクプレミアムの旨味もなくなり、市場プレイヤーも一般企業化していくことになる。



■ 性的パンクとしてのグッズデザイン論



 伝統工芸品のコケシも、元は性具から派生したと言われている。が、逆にディルドーの裏スジ部に顔を彫ってコケシだと主張するのは、規制側への皮肉を込めたカウンターパンチだったとも解釈できよう。エロ排除を突き詰めて、行き着くところまで逝ってしまったオナマシンをひとつ紹介してみたい。



「新サイロ」


 もはや生き物ですらなく、擬人化もしていない、ガチの【建築物】である。それもかなりマニアックな建築物だろう。なぜ家畜の飼料やセメントを備蓄するための建築物にチンポを挿入して気持ちよくなろうという発想に至ったのか、そしてなぜ商品化のゴーサインが出てしまったのだろうか。ワタシは「これでもわいせつと言うのか、逮捕したくばしてみやがれ」というメーカーの強烈なパンク精神と微笑ましいユーモアを感じるから、大好きだ。復刻版が出たら、間違いなく買う。

sairo02.gif図版:1

 「サイロ」シリーズは1980年代末期〜90年代前半にヒットしたオナマシンで、「サイロ」「新サイロ」「パワーサイロ」と3段階の進化を果たしている。単2電池4個を使い、玉袋にローターの振動を与えるだけでなく、堅牢なギヤボックスで模型用小型モーターの回転運動を直線往復運動と絞め運動、申し訳程度の亀頭バキューム機構に変換する複雑な動作を実現していた。キャッチコピーは「ウナギの寝床」。挿入孔は、サイロの地面部にぽっかり開けられている。サイロを天地逆にして上に乗るも良し、横倒しで手で支えて挿入するも良し、である。
 ウナギの頭部を模した亀頭サックがおまけについていて、内部の亀頭がくる奥深い位置に、Cの字型のスポンジ部品がセットされている。このスポンジ部品が上下に往復運動する。ワナに掛かったウナギがうごめいている状態だと喩えたのだろう。根元部にはリズミカルに絞めるハサミ状のパーツ。このくらいの仕掛けをしないと右手に勝てない、と考えて作られたのだろうか、当時の開発者に話を聞いてみたいところではある。


onaho.jpg図版:2

参考文献:図版1:当時エロ本に必ず入っていた性具通販ページ(サイロ)【「ニャン2倶楽部」1993年1月号(コアマガジン)】
参考文献:図版2:新サイロの構造断面図【「sextasy」平成6年9月5日発行(白夜書房)】




■ マシンのもたらす異次元性感とは



 恐ろしいのは、これだけの複雑なメカニズムを備えていながら、往復運動のためにギヤボックスへの防水対策がまったくとられていなかったことだ。言い換えれば「正しい」使い方をすれば、使い捨てになるというめちゃくちゃなマシンだったのだ。コンドームをして、使用時にローションを漏れないように最小限に塗れば再使用はできるだろうが、性感は激しく損なわれる。ワタシは当然ナマでそのポテンシャルを完全に味わい、故障覚悟でざっと水洗いし、ギヤが錆び付くまでの1週間を楽しんだ。お金がもたないので、何個も買い替える前に廃盤になってしまったけれど、学生時代のバイト代はかなり新サイロにつぎ込んだ。

 現代のオナホールとちがい、ガバガバの筒があって、亀頭の部分にやさしくC字スポンジが撫でてくる。圧力はほとんど感じない。当たっているのかもよくわからないけれど、なぜか性感だけが「上がって」くる。その「上がる」感覚を2段階しかないギヤチェンジのスイッチでコントロールし、脳内のオカズとリンクさせていく。マシンにイカされるとはこういうことだ、と初めて実感した経験だった。

 新サイロは、オナニーの刺激方法を工夫し、射精を延長させるというワタシのライフワークに多大な影響を与えた。この快感を知ったあとは、手しごきオナニーなど溜まったものを抜くだけの作業も同然だった。

 それにしてもある日、数日放置した新サイロを使おうと箱から取り出したらハエが出てきて、内部をよく見たら幼虫がびっしりくっついてたのは驚きましたね。
 ちなみに米国のピストンオナマシン「ロボサック」は洗える設計だが、まったく別物の刺激だ。




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著者紹介


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器具田こする教授


マッドサイエンティスト。ドールとホールのR&Dアートユニット「器具田研究所」を主宰。隠匿野外自慰器具「オナーパンツ」でオナニーの世界に革命を起こし、複雑系ホール構造やオナマシン設計などアダルトグッズのテクノロジーを追求し続けている。「ゆっくりしていってね スローオナニー入門」(コアマガジン)でCEOを担当。発音は「きぐた」ではなく「きぐだ」と濁る。

webサイト http://www.kiguda.net/
Twitter @kiguda








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