器具田こするのオナホール戦記 第七回

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txt 器具田こする教授(Kiguda Lab.)


第七話



■ 抽象概念をホール化せよ


  オナホールのパッケージは大きくわけてキャラクター、コンセプト、物理要素の3つから成り立っている。

  キャラクターは萌え絵、AV女優などオカズとなる具象であり、コンセプトはそのキャラクター設定や世界観などの抽象である。これにより、細分化が極まったユーザーの性嗜好の中から対象層を限定、訴求する。そして外観や素材質感、オチンチンを刺激する内部などの物理的説明がある。簡易・中型・大型などの区分も含まれる。

 企画プロセスには各社独自のノウハウがある。一例としては性嗜好を的確に表す抽象キーワードを決め、そのキーワードを工業デザイナーが物理的な形状に落とし込み、キーワードを代表するキャラクターを設定し、適任者をキャスティングするといったトップダウン型がある。アダルトグッズの工業デザイナーは裏方の存在だが、女屋姦八(トイズハート→トベルカに移籍)やロイ・キンゲン(アクアスタイル)の名が知られている。

  内部構造に注目しよう。20世紀のオナホールは機械的ではあるにせよ、ネジヒダはミミズ千匹、イボは数の子天井、くびれた部分は三段締めなどと形容され、女性器の再現を意識していたはずだった。それ以外の特殊構造があっても確たるコンセプトはなく、単に工作機械で遊んでみた程度のゲテモノで終わっていた。


  今世紀初頭に入ると、その内部構造の考え方に異変が起こる。


  2003年、「サルヴェーション」「キングダムホール」「サティスファクション」(ともにトイズハート)と立て続けに出されたワインディング構造である。膣道が波打っているのだ。「ハニーラブ ミミズ千匹」(エースゼロワン/日暮里ギフト)もこの時期のワインディングである。


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※これがサルヴェーションの断面図! (http://daimaoh.kir.jp/ho/salvation.htm



  オナホールは筒状の金型の内部に、中子(なかご)と呼ばれる空洞形成用の型パーツをセットし、熱で溶かしたゴムを圧入して作られる。冷えて固まったら筒状金型から外したあと、中子を引き抜いて完成だ。膣穴がまっすぐなのは、中子を引き抜くためであり、当たり前のことだった。

 それをいとも簡単に、ぐんにょりと曲げて世に出したのだから業界は驚いた。

 引っかかって抜けないのに、どんなマジックなんだ?

 よく考えればオナホはやわらかいのだから、中子が曲がっていても引き抜くことはできる。コロンブスの卵である。

 しかしながらホンモノの膣はそんなに曲がってはいないはず。そんなところにオチンチンを入れたらどうなっちゃうの! 当時のユーザーは、未体験の性感を期待し、飛びついた。

 特殊構造の前では、何千人経験したヤリチンだろうが童貞と同じ。ひとたび経験すれば童貞でありながら性の達人と化す。その厨二さ、都合の良さ。日常では冴えない主人公が、突然世界を救う勇者になるラノベのようだ。オナホは、アキバ的コンテンツの消費者と親和性が非常に高いことがあらためて確認されたと言えよう。トイズハートのワインディング三部作の商品名も、厨二センスと見れば合点が行く。

 実際、膣道がワインディングしていると、ホール素材にテンションの偏りが生じて新しい「味わい」が出る。

 もっと特色のある「味わい」を出したい、あるいは使いやすくしたホールはないか。マーケットは膣とかけ離れた特殊構造を歓迎するようになった。オナホパッケージにおける物理要素、とくに内部構造・ギミックの説明の重要性はこの2003年頃を境に、ますます高まっていった。

 要は他社との差別化、見せ所である。スタンダードなものも良いけれど、ユーザーにどうアピールし、なぜそれが良いのかはメーカー側がしっかり説明せねばなるまい。


■ 人工女性器は人体を超える


 2005年にスタートしたTENGAは、キャラクターを廃すること=具象性の排除自体がコンセプトとなり、結果として物理要素の重要性を高めて構成されている。非常に精緻な人工的内部構造である。この戦略では性嗜好を限定しないので、マーケットが広くなる。またライト層向けの使い捨てオナカップに注力したため、洗って再利用する従来のオナホールと市場競合を避けることにも成功した。


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言わずと知れたTENGA「ディープスロートカップ」 TENGA公式サイトへ





 オナカップもオナホールも、今や裁断構造図無しのパッケージはあり得ない。

 購入前から挿入感を夢想することはオナホユーザーの大きな喜びのひとつである。玄人になると、入れずとも裁断図だけで性感が読めたりできる。この能力、人生のどの場面で役立てるかはあなた次第だ。

 究極のオナホールを目指すにあたって、二つの大きな方向性がある。

 第一回で示したように、セックスとオナニーは合わせ鏡である。どちらに注目するかで、「オナニーはオナホを使ったセックスである」という自己暗示から女性器の完全コピーを目指すセックスシミュレーション指向の保守派

と、

「セックスは他人の身体を使ったオナニーである」という達観からくるオナニー至上主義、つまり気持ち良ければ女性器でなくともいいじゃん、むしろ女性を超える構造にチャレンジしようぜ、と考える改革派

に分かれるようだ。

 いずれも尾崎放哉風に言えば「SEXをしてもひとり」で、男女間の断絶は深い。むしろ、オナホールを通じた職人とユーザーのホモソーシャル的な関係が浮かび上がってくる。ちょうど、男性向けエロ本で作家も読者も男しかいないのに女体だらけなのと同じ状況だ。

 女体は、男同士が「コレって良いよね」と例示し対話するためのメディアにすぎない。そして、メディアの役を果たせば女でなくとも良いのである。さらに言えば対話相手に性別を限定することも本質ではなく、好みに共感して深めてくれれば、女性のオナホ職人も可能であろう。

 人体を超えるオナホ構造革新の波は、保守派の女性器再現系オナホにも影響を及ぼした。それがオナホ業界の巨人、日暮里ギフトの代表作「名器の品格」である。

 2007年初夏に発売。素材配合を従来よりやわらかく、穴ではなく裂け目とし、扁平につぶれたリアルな膣内部をかき分けながら貫く「無次元構造」と呼ばれるスタイルは大ヒット。完全コピー方面でもやるべきことはまだまだ残されているのだ。

 その無次元構造をさらに改革派が取り入れて、三次元の螺旋にねじった「ぐちょ濡れMONSTER G」(マジックアイズ、2011年)など、現在も意欲的な動きが続いている。


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名器の品格・下付き、断面図。たしかに本来オマ○コには穴が空いていない、挿入で割り割くものだ。





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Powered by Kiguda Lab.!!!!! 東京・中野のアダルト店ホットパワーズ
(http://www.hotpowers.jp/)にて、器具田研究所の技術提携によるオリジナルオ
ナホールが2012年5月23日に発売予定です。「追想螺旋夢霧 双奏ノ調」と書いて
「ダブルスパイラル」と読ませる厨二なネーミング。マッタリ系新感覚素材で
ぎゅいんぎゅいんだよ! 手持ち型で国内最大サイズ・最複雑構造を誇る、オナ
ホ上級者向け&デカチン向けのクレイジーなホール。よろしくね!



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著者紹介

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器具田こする教授


マッドサイエンティスト。ドールとホールのR&Dアートユニット「器具田研究所」を主宰。隠匿野外自慰器具「オナーパンツ」でオナニーの世界に革命を起こし、複雑系ホール構造やオナマシン設計などアダルトグッズのテクノロジーを追求し続けている。「ゆっくりしていってね スローオナニー入門」(コアマガジン)でCEOを担当。発音は「きぐた」ではなく「きぐだ」と濁る。

webサイト http://www.kiguda.net/
Twitter @kiguda








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