コイトゥス再考 タカノ綾 1

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コイトゥス再考 #02

タカノ綾 

COSMIC EROTISISM

文/辻陽介 写真/久田悠


なんというか…、スケールがでかいのだ。


いや、でかすぎて身も蓋もないというか…、もうその快刀乱麻ぶりに唖然というか…、まさかそこに繋げちゃう? というか…、なにはともあれ、タカノ綾、普通じゃないのである。


村上隆率いるアートの総合商社「カイカイキキ」に所属し、いまやその評価を世界的なものにしている女流美術家が送る、エロも宇宙もバクテリアも瀬戸内寂聴も2012年問題も、全てが超並列のコズミックエロティシズム。


エロ再興の鍵はどうやらガンジス川にあるようだ…。



(2011.3/タカノ綾のアトリエ兼自宅にて)


ーさて本欄は「エロの再考」をテーマに掲げているんですが、なぜいま再考なのかと言いますと、現代、ジェンダーや性のありかた、また表現における性の規制など、エロにまつわつ諸々の状況が変わりつつあると思うんです。そこで、ここらで改めて考え直してみよう、と。


タカノ んー…、私はそういうジェンダー論とか、実は超どうでもいいんです。生物学の実験なんかで、ネズミをぎゅーぎゅー詰めにして育ててると同性愛のネズミができたりするらしくて…、多分そういう人口密度の問題とかによって同性愛とかジェンダーのバランスが変化してるんじゃないかなぁって思う。


ー要因は内側にではなく、環境にあると?


タカノ そうそう。人口調整機能が働くのかなって。


ーなるほど…、そうきましたか(笑)


タカノ 寿命が増えると、反比例して産む数っていうのは減るらしいんです。いまの私たちってなかなか死なないじゃないですか。


ー寿命が伸びていますね。


タカノ 昔はいまよりもっと寿命が短かったですし、いつなにが起こるのかが今よりもっと分からない状況だったんだと思うんです。いまは80ぐらいまで生きる人が多いし、そういう中だと子供を産もうっていう風にはあんまりならないのかなぁって。



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風神雷神図屏風からの派生 2010 Ballpen and watercolor on paper / 300 φ x 40 mm
/ (c)2010 Aya Takano/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.




ー世代を繋いでいく上で子供がそんなに必要ないってことですかね。


タカノ うん(笑)


ーじゃあタカノさんの考え方としてはジェンダーや性というのは人間の精神がどうこうという問題ではなく…、


タカノ 生物学的な問題のような気がします。そもそも頭で色々と考えていることはあんまり本質に近くない気がする。ジェンダーとかって、名称そのものが浅い気がする。


ーなるほど。じゃあ例えば男性の草食化、女性の肉食化なんてことが世間では謳われていますが、そこらへんについても?


タカノ それも人間の寿命が伸びて、生命に対する危険が減ってきたからじゃないかな。男性が男性らしくある必要がないというか…、戦ったりする必要もないし、攻撃性がなくなってきてるんじゃないかなと思う。


ーメスを獲得しようという本能自体薄れてきているということなんですかね?


タカノ それに女性側の男性の好みも変わってきてるじゃないですか…、可愛い男の子が好まれたり。猛々しさはあまりいらないのかなと。


ーじゃあタカノさん自身はどうです?


タカノ 私は別に…、自分のことは別に(笑)


ーなるほど(笑)


タカノ エロってことに関して言えば、私が最初にエロってものを意識したのが、小学生のときに読んだお父さんの小説だったんです。半村良さんの作品で、すごいエロいのがあって。江戸時代が舞台のSF小説なんですけど。


ーへぇ。


タカノ たしか小四くらいだったと思います。表紙を横尾忠則さんが描かれていて、むちゃくちゃカッコ良くて。でも内容はすごいエロい。最初はもうなんだかよく分からなくって。その作品では性交がすごい描かれ方してるんです。性交すればもっと凄い次元にいけるみたいな。性交すると凄い気持ち良さの末に身体から魂的なものが飛び出て、魂同士が合体して宇宙にいってしまうみたいな(笑)


ーなんか凄いですね、それ(笑)。でもその世界観ってタカノさんの作品の中に如実に因子を残してる気がします。


タカノ ほんとですか? なんかその本が私の超ベースにあるんです。だから官能系について考えると全部そこに繋がっていっちゃう。しかも文体とかがすごいしっかりしてるから、国語の教科書なんかより説得力があって…、だから当時は自分もヤッたらこんな状態になっちゃうんだって信じてました(笑)


ーなるほど(笑)。まぁ、その表現はメタファーだとしても、セックスって結局はそういうことなのかもしれないですよね?


タカノ どうなんだろう…、私はすぐそこに辿り着けると信じてたんですけど…。


ーその期待は叶わず?


タカノ あ、分かんないです(笑)


ーはい、分かんないですよね(笑)。そう言えば、うちのカメラマンの人間も「男は射精のたびに死ぬ」ってことをよく言ってます。ちなみにその人間は3000人以上の女性経験をもつ方なんですが。


タカノ へぇ…、あ、でもそういう域に達している人もこの小説に出てくるんです。ヤりながら泣いてたり(笑)。その高みに達せなくて。


ーよく言うことですが、男は射精後、切なくなるんですよ。それはもしかしたら、その高みに達せなかったからなのかもしれないですね。


タカノ そうなんだ(笑)


ーさっきまでとは明らかに違う「ボク」がいるんですよ。まぁマナーとして余韻をとどめた振りみたいなのはしますが。


タカノ でも確かにそれは聞きますね…、知識として。


ー知識として(笑)


タカノ あ、そうだ。その本ありますよ。(別室に取りにいく)


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