ヒロイン手帖 × 高月靖

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ヒロイン手帖 その9

高月靖 

広大にして深遠な「ロリコン」という言葉

文/荒玉みちお 構成/うぶモード特ロリ班




世界とは違う独自の少女文化を生み出した日本。法律改正で「単純所持」まで禁止されそうないま、改めてロリコンについて考えさせられる一冊だ。話題の研究書『ロリコン』を通じて見える少女嗜好ワールドの現実とは!? 否定も肯定もせず、それでいて緻密に、徹底的に、1人の男が少女嗜好の歴史と現状を解き明かす!



?ロリコンの方への興味はもちろんありましたが“ロリコン“を犯罪視する人“にも興味を持ったんです



挨拶もそこそこに編集S氏が「高月さんご自身は少女好きですか?」と聞いた。


いきなりの質問に高月氏はやや戸惑ったものの「いや、たぶん違うと思います。すみません」と、申し訳なさそうに自分の立ち位置を示した。


「中学、高校のときはアニメが流行っていたので、そういうのに行ったことはありますけど(ロリータの)写真集を買うようなことはなかったです」


その返答は織り込み済みである。では『ロリコン~日本の少女嗜好者たちとその世界~』を書くきっかけは何だったのか。


「内容はマニアの方ですとか、詳しい人ならご存じの話ばかりなんですけど、こういう形でまとまったものがなかった。特に一般の方でも興味を持って見られるようにしたかった。それと〝児童ポルノ法改正〟とか言われているなかで、議論があまり建設的ではないように感じたんです。そういう中で、こういうのがあれば話は進みやすくなるのかな、という思いもありました」


建設的に議論して欲しいと?


「どんどんやって欲しいとまでは思っていないんですが、こうした欲求の本質といった核心の部分が何となくスルーされているのもどうかと。また二次元でいえばクールジャパンとして国内でも称賛されているものが、一方ではロリコンと不可分だったり。それも妙だなと」


ロリコン種族に対する個人的な感情はどうだったのか? 本を書く前と後では印象は変わったか?


「いろいろ調べる前はやっぱり犯罪と結びつけられることが多いという現実に……それに近い先入観はあったかもしれない。まあ、そんな固定されたイメージもどうかという感覚もあったんですけど。表現物が短絡的に描かれた通りの犯罪に結びつくわけじゃない。だからロリコンと呼ばれる人たちよりも、逆にそれを犯罪に結びつけたい人たちを調べても面白いのかなと」


児童ポルノ法の改正を国に急かす日本ユニセフ協会にも話を聞いた。取材は約1年前。どのような印象だった?


「当時は、単純所持禁止を法制化しようと混乱しているときでしたから、けっこう強い主張をされるのか思っていたんです。だけど実際にはそうでもなかった。広報の方は〝絶対にいけないと明確に言ったわけじゃない〟と。業界の自主的な審査機関に任せてみてはとか、ネットだったらプロバイダに規制してもらうとか出来ないか、という話でした。正直、意外でした。だけどいずれにしても単純所持そのものをなくしていかなければいけない、とはおっしゃってました。表現の自由も絡んでいて、ここはここで風当たりが強いんだろうな、という印象でした」


幅広い取材を重ねて完成したロリコン解説書。極力、個人的な感情は出さないようにしたという。では、純粋な感想はどうだろう。


「ロリコンと言っても、一言では括れないなと感じました。言葉の意味が広すぎる。だから都合良く、便利に使われるんでしょうけど。少女が絡んだ事件が起きると〝ロリコンが悪い〟と言えばいい。それで世間は納得する。でもたとえば古いアニメ雑誌のコレクターもいれば、少女人形を集めている人もいる。普通の子供の写真を集めている人もいる。それとは別に少女を対象にして罪を犯す者もいる。本当に様々な人がいますよね。そういうのを全部まとめてロリコンとして括って排除しようとする側はどんな意図でそうしているのか、逆にそっちのほうが興味深かったです」

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