エロ年代の想像力 第二回

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エロ年代の想像力

#02 『シリーズぴこ 』

アニメルカ出張版



 18禁アニメを視聴し、0721文字をカクこと。エロアニメと批評との間で、筆を握り往復運動を繰り返してイクこと。そして、カカレた批評自体がカカレた18禁アニメへと漸近すること——。


 そうした運動の内に、エロ年代的想像力を照射せんと目論む当コラムだが、しかし、第1回レヴューの最後でも示唆したBLアニメの場合は、その独特なコードを前に男性視聴者は戸惑いを示しがちだ。


 だがその一方、BLアニメと男性向けポルノアニメとの境界領域に位置する「女装ショタアニメ」をめぐっては、その男同士の同性愛というBL的構造にも関わらず、熱烈な男性愛好家が多いという、一見奇妙にも見える現象がある。


 例えば『ぼくのぴこ』(2006年)、『ぴことちこ』(2007年)、『ぴこ×CoCo×ちこ』(2008年)からなる『シリーズぴこ』は、その女装ショタアニメの代表作として挙げられる作品だ。われわれはここから、男女両性からなる特殊な需要の狭間で、まさに男/女の性の狭間で揺れるキャラクターたちの内に、エロ年代的想像力を発見することができる。




『シリーズぴこ
(監督:谷田部勝義 製作:ナチュラルハイ、全3巻、2006-2008年)





 女装ショタアニメであり、男性同士の同性愛(BL)を描きながらも女性よりは男性からの受容が先行している『シリーズぴこ』作品を、昨今の男の娘萌えブームにおける端緒の一つと見なすことは、あながち間違ってはいないだろう。女装少年ブームから男の娘萌えブームへの歴史的転換地点に、この作品の功績を位置づける視座も同様である。



 ところで、そうした男の娘萌えが発動する理由の一つに、当の女装キャラが自分は男でしかあり得ないという端的な事実性に葛藤すること——身体と精神の乖離に困惑するという、いわゆる「葛藤萌え」が存在することはよく指摘されるが、その点の処理においても本シリーズの試みは貴重だ。というのも、よく知られるように、主人公の「ぴこ」という中性的な名は実は「ぴんこ勃ち」の文字りであり、また別の女装ショタ「ちこ」にしたところで「ちんこ」および「恥垢」に由来、「モッくん」にいたっては参照元が「イチモツ」という有様だ。このように、登場キャラたちは皆、暗に「男性器の擬人化キャラ」として生ないし性を付与されており、言い換えれば、彼らはその女性的な志向とは裏腹に、命名の時点からして既に、徹底して逃れがたい男性性の呪縛の元に存在していた。つまり彼らには、その葛藤の根源がはじめから〈名〉という呪いとして刻印されており、本作はそんな残酷な手法を駆使してまで、男の娘萌えの本質を抉り出さんとする実験場として視聴されねばならない。



 また今後の性別表現を見据えるうえで、本作の脚本を担当した高山カツヒコが、その後『夏のあらし!』においては男装女性を、続く『バカとテストと召喚獣』では男性とも女性とも異なる「性別:秀吉」という、さらなる境地へと達している点も見逃せまい。






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『ぼくのぴこ』
2006年



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『ぴことちこ』
2007年




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『ぴこ×CoCo×ちこ』
2008年





 以上0721文字。ショタに萌えるという特殊な想像力、そして男性視聴者が男に欲情するというBL的構造——こうしたエロスには、未だ抵抗を覚える方が少なくないのかもしれない。しかし、これらの作品群は、むしろそうした方々にこそ体験されるべきものだろう。BL理解への実践的前戯として、そして(男)ヒロインたちのアナルが拡張されたような自身の想像力の拡張のために。





PROFILE
反=アニメ批評(@ill_critique
アニメ批評同人誌『アニメルカ』責任編集。
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』責任編集。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。
『アニメルカ』オフィシャルサイト
反=アニメ批評



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