都築響一 妄想芸術劇場 第四回

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写真が瞬間芸だとすれば、イラストは独演会だ。

観客ゼロの高座で2時間、汗みどろで語りつづける脳内の発情ランドスケープだ。

写真ページの添え物とさげずまれ、アートともイラストレーションとも漫画とも

認知されないまま、ひっそりと増殖する陰花植物。

欲情の、淫夢の、妄想のもっとも純粋なあらわれとしての、マイクロ・ニルヴァーナ!






# 4 ぴ ん か ら 体 操 4




 ニャン2史上に輝く伝説の投稿アーティスト、「ぴんから体操」の1992年から続く画業を辿る旅。初期のフラットな漫画ふう、そしてモノクロームの点描によるダークなグロテスク・リアリズム作品に続いて、2001年から02年にかけてのある日、突然送りつけられるようになった、予想を超えた新しい画風——「ぬるぴょん」の登場は、裏面のサインがなければ別人としか考えられない、あまりにも劇的な展開だった。2001年から’02年にかけて、孤高のアウトサイダー・アーティストの脳内に、どんな嵐が吹き荒れたのだろう?? そうして2003年の短い休止期を経て、ニャン2編集部にぴんから体操からの封筒が、ふたたび届くようになる。しかしその中に入っていたものは、またもやがらりと作風を変えた、まったく新しいタッチの膨大な作品群だった。


「うんこ少女期」とも言うべきその新作群で突然、ぴんから体操はふたたび具象に立ち戻る。色鉛筆を使った、淡いタッチの画面。その四角い世界のなかで、女学生やOLや女子アナや、さまざまに可憐で美しい、しかし垂れそうなほどの巨乳の女たちが、黄土色の糞便をブビブビと盛大にまき散らす。その糞便を下着として身につけたりもする。そして「豚澤豚子さん 21歳 フリーター 犬も食わないウンコブラ ¥2980」「村井豚美香さん 32歳 主婦 バカカップくそブラ ¥5800 ゲキくさうんこパンティ ¥7000」などと画中に書き込まれた、ユーモラスな説明文・・・。「ぬるぴょん」の抽象世界から、このヒトコマ漫画のようなイラストレーションへの転換は、いったいどうしたことだろうか。


2004年から2005年にかけて集中的に「うんこ少女」シリーズが送りつけられたあと、ぴんから体操は長い休眠期に入る。最近数年間は、編集部にもまったく作品が届かないという。どこかほかの発表場所を見つけたのだろうか。それとも彼の人生に、制作を不可能にするような大きな変化があったのだろうか。編集部から消息を尋ねる手紙をいくら送っても、いまだ彼からはなんの音沙汰もないままだ。


次週はぴんから体操の最終回。今回の記事制作の際に「発掘」された、彼の文章作品をご紹介する。A4サイズの便せん14枚にわたって、びっしりと記されたエログロ大河ロマン。それはいままで我々が思い描いてきた、この知られざるアウトサイダー・アーティストの脳内宇宙を、さらに拡張するビッグバン・ストーリーだった。



(うんこ少女シリーズ)





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ああ~あったかーい 私はウンコと同等の女の子 体中がくさい!!




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すっごくくさい日曜日



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とってもくさいえだ いまさらちょうが腸にからんで いん毛といん毛がからんで 悲しみがチンコにやどる 生きるかちもない




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私の病気がなおらない ほーら見て見て病 まぬけづらしかかけないのんはおれがまぬけだからじゃー



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こんなふうにかかれた彼女はなにも悪くない おれが悪いだけ わけがわからない悲しみだけ





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生きてるのが悲しみでしかないと感じた時 おもわずチンコに手がのびるもの 知らないどこかで主婦たちが チンコカイゴのもよう





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ぬるぴょーんカタログ集




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ぬるぴょーんカタログ集




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ぬるぴょーんカタログ集






ぴんから体操の作品をもっと見たい人はこちら!!
↓↓


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編集・都築響一
『妄想芸術劇場001』

恵比寿NADiff a/p/a/r/tにて絶賛先行発売中。
近日、BCCKSサイトより電子版、印刷版ともに発売されます。










都築響一
1956年、東京生まれ。現代美術、建築、写真、デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集。93年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』刊行。96年、日本各地の奇妙な新興名所を訪ね歩く『珍日本紀行』の総集編『ROADSIDE JAPAN』により第23回木村伊兵衛賞を受賞。 97年〜01年『ストリート・デザイン・ファイル』(全20巻)。インテリア取材集大成『賃貸宇宙』。04年『珍世界紀行ヨーロッパ編』、06年『夜露死苦現代詩』、『バブルの肖像』、07年『巡礼』、08年『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』、10年『天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~』など著書多数。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続行中。






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