エロ年代の想像力 第四回

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エロ年代の想像力

#04 『Grope ~闇の中の小鳥たち~ 』

アニメルカ出張版



 ただひたすらカキ続けるしかない。それが今、われわれに唯一のデキることだ。



 今回はエロスとタナトスのあいだで文字通り揺れる、危機的=批評的状況を活写する作品を取り上げる。




『Grope?闇の中の小鳥たち?』
(監督:横山ひろみ、製作:鈴木みら乃、全2巻、2007-2008年)





 ウォーターフロントに建設された高校を、突如、規格外の巨大地震が襲う。生き残ったのは男女2人ずつの計4人。倒壊し極限状態にある校舎の中で、主人公・慎一は親友の貴章に恋人を寝取られていく??。



 本作を語るにあたり、そこから表現面での見所を探すのは難しい。一般にエロアニメでは、まるで地震の最中に制作されたかのような不安定な作画が頻出するが、その例に漏れない本作でも、崩れた作画が崩壊した都市と見事に呼応してしまっている、といった指摘がせいぜいである。だがその反面、作品コンセプトにおいては、極めて今日的な問題をハランデいることが見て取れる。



 瓦礫の山となった学校で女の子を順に攻略していくという原作エロゲを、なぜか寝取られアニメとして大胆に翻案した本作は、しかし、その作品テーマと照らし合わせれば、この「寝取られ」という要素が、震災時における日本社会をシミュレーションするための効果的なギミックとして導入されていることがわかる。なぜなら、ここでの寝取られは、未曽有の混乱の中、貴章が流す風聞に惑わされ、各人の間で疑心暗鬼が加速することによって起こる。巧みに情報を統制・隠蔽し、人々を欺き、その一方で、貴章は女の子の前で棒を露出させ、その棒を燃料に女の子を快楽で制御しはじめる。つまり、ここで問われているのは、非常事態下での正義であり性技である。



 またタイトルである “Grope”という単語が、意図通りの「女性の体をまさぐる」という意味と同時に「模索して見つける」という意味を持つことも極めて示唆的だ。今、数十年に一度の大きな転機を迎えている日本社会で、われわれは女体をまさぐるポルノ作品の内にも、未来への新たな想像力を模索していくべき時なのだろうから。






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『Grope?闇の中の小鳥たち?』
1st.『M?エム?』




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『Grope?闇の中の小鳥たち?』
2nd.『S?エス?』



 以上0721文字。いま実感しているのは、カクという孤独な作業はどこか祈りと似ているということだ。力ないわれわれには、せいぜい『エロ年代の想像力』が生んだ金銭的利益を全額寄付する程度のことしかできていないとはいえ、エロ年代の臨界点を迎えつつある今だからこそ、われわれは変わらずにカキ続けていくより他ない。



PROFILE
反=アニメ批評(@ill_critique
アニメ批評同人誌『アニメルカ』責任編集。
思想恥部シリーズ『エロ年代の想像力』責任編集。
『エロ年代の想像力』のほうは現在、ジュンク堂 新宿店、MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店、COMIC ZIN、タコシェ、および通信販売で好評発売中。
『アニメルカ』オフィシャルサイト
反=アニメ批評