太陽肛門スパパーン × 音楽とオルガスムス

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音楽とオルガスムス #02

太陽肛門スパパーン

セックスから見るのが、一番よく見える。

文・写真/福田信哉


「太陽肛門スパパーン」の取材は朝から始まっていた。

取材依頼を出した翌日、筆者は電話のコールで起床。「どうも、メールもらった花咲です…」

呂律の回らない寝ぼけた頭に「で、どういうことを聞きたいんですか?」といきなり核心の質問。飄逸自在な人物だ。そして「じゃあ今日の夜どうでしょう」とこれまた話が早い。

さて、一体この花咲政之輔という人物はどういう男なのか。

太陽肛門スパパーンの音楽を聞いたことのある方はお分かりだろうが、悪意と風刺と批判をこれでもかと詰め込んだどす黒い歌詞と、ジャンルを飛び越えクルクルと展開する超絶技巧だがこれまた悪意ある演奏。このふたつを見事にマッチングさせた“現代の“バンド。

さあ、バンマスは何を語る!?






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花咲政之輔(以下、花咲 ごめんなさいね、急に今日とか言って。まあ、いきなりはじめるのもあれなんで、少し馴染んでから


●いえいえ、よろしくお願いします。サイトご覧になってもどういうものかあまり解らなかったですか?


花咲 そうですね、あまり掴みにくい。申し訳ありません。私存じ上げなかったんですけど。見てみたら全て何かしらエロに関係ありましたよね。その、VOBOっていうのはいわゆるボボと掛けてるんですか?


●そうです。かけてるというかモロで恐縮ですが。


花咲 コアマガジンさんだとぼくの場合、スーパー写真塾は知ってましたね、大分昔、版型が小さい時ですね、サイズ的にも好みでしたし、アラーキーさんの写真がよく載ってるイメージですね。あと、ダンスファン(笑)ダンスファンは電車の中から見えるからみんな知ってるんじゃないですかね。山の手線乗ってる人はみんな知ってると思いますよ


●そんなそんな(笑)ありがとうございます。ではまずは、バンドを始められたのはいつ頃から?


花咲 そうですね。高校ですね、中学でもやってましたけど、それは本当コピーバンドで


●高校から太陽肛門スパパーンを組まれてたんですか?


花咲 高校の時はパンクバンドをやってました。ピストルズとか、スターリンとか流行ってたしで、『膣痙攣』ってバンドをやってまして


●おー! いいお名前! それでスパパーンはそれから?


花咲 それは…エート、95年とかそのくらいですかね。その、高校の時の膣痙攣はオリジナルをやってたんですけど、そのあとはフリージャズみたいなことをやってたんですよ。で、今みたいに人数多くて歌ものの…まぁフランクザッパですね。フランクザッパみたいなのを日本語でやろうと」


●では、結成から今のような型で。歌詞は最初からえげつない言葉でいこうと?


花咲 はいはいはい。そうですね。コンセプトはやっぱりセックス問題、セックス問題から世相を斬るっていう。あと当時、1990年代、特に中頃とかってセックスを軸にした事件とかすごい多かったんですよね。宮台さんのインタビューでも言われてましたけど


●援交とか大ブームでしたしね


花咲 『金妻』(金曜日の妻たちへ)みたいなのとかもあって、そういうわりと郊外の、サバービア問題、郊外での犯罪とかっていうのがぼくらの身近でもあったんですよ。それでバンドのメンバーにも町田の人間とかもいて


●ああ、リトル渋谷、援交の街。


花咲 そう、それである種、あの辺に現代社会の問題点が集約されてるっていうところで、そこを描く場合に、セックスっていう局面に解りやすく出るっていう。で、実際に建て売り住宅系の、一部上場企業の部長みたいの嫁さん、すずかげ台とかあんな感じのとこの、普通の主婦が援交してるっていうのがね、ファミレスでそういう打ち合わせして旦那いない家でヤッたりとかっていうのを知り合いの知り合いとかで見て…そこやっぱりセックスだね


●(笑)


花咲 そう、セックスから見るのが一番よく見える。で、歌って短いじゃないですか。構造的に重層的な、長編小説とか戯曲とかでやるんならまた別なんでしょうけど、切り口をパッて見せないといけないっていうのだと、性の切り口だろうな、というのはバンド結成時からありましたね


●それで困ってらっしゃることもあると朝のお電話でもおっしゃってましたが…


花咲 そうですね。勘違いとかはされますよね、あと、リテラシーの低いリスナーが多くて、そこにすごい絶望感を感じて、2枚目の『テロリストブッシュと人間』でちょっとヒヨったかなと」


●あれでヒヨったんですか?


花咲 うーん、ヒヨったというか、わかりやすくしようと。バカなリスナーに合わせようとしたんですね。それにはやっぱり内心忸怩たるものがあるし、未だに作品としてのレベルは『馬と人間』の方が上だと思いますし、それはちょっと問題だな、と。それなんで今3枚目を作ってるんですけど、それはヒヨらないで、馬と人間の時みたいにいこうと思ってますね。…ただ、あまりにねぇ! 大体一回聞きゃあ解るだろっていう、チンコ、マンコってとこだけ着目してね、お前、詩読めよ! ってそういうヤツが多くてね、ちょっとそれには衝撃を受けましたね


●やっぱみんなチンコ、マンコって好きですもんね


花咲 好きだけどね(笑)だけど、でもチンコ、マンコだけ言ってるわけじゃないですからね、最近もツイッターに書き込んできた、はじめてCD買ったってやつがね、単に下ネタを言ってるバンドみたいな、詩はしょうもないんだけど、演奏はキレキレ! みたいなことを書いてて、ふっざけんなよ! 詩がいいんじゃねえかよって! 詩を読み込む気が全然なくてね。まぁでもフランクザッパでさえ未だにしょうもない歌詞と高度な演奏力の同居みたいな論評されてたりして誤解を受けてる。逆に言えばそういう性的言語の怖さっていうか、『チンポ』って言った瞬間に聞いた人間の思考がフリーズするっていう、思考が止まるか、逆に喜び過ぎちゃう、取り扱い注意な言葉ではありますよね。」


●確かに下系の言葉は破壊力ありますからね


花咲 そう、難しいですね。クリトリスでも、恥垢って言っても、膣って言っても、チンコマンコって言っても同じですね、思考がフリーズしちゃう。逆に完全な破壊力を持つ言葉があるならいいんですけどね。ちょっと医学用語とかいいのかも知れないですね、曲の中に『クリトリス組織』ってのがあって、クリトリスはクリトリス単体じゃなくて全体でひとつの組織になってるって有名な学説があるんですけど、そうやって組織って付けると少しは思考させられるっていうことがあって、ちょっと横からいかないといけないのかな、と


●でも、それだとやっぱり言いたい事を曲げるってことになるんですかね


花咲 そうですねぇ、直接的でも曲の流れの中で言ってるんだから解れよ、とは思いますけどね。『膣派クリトリス派』っていうライブでしかやってない曲があって、これなんかは1970年代くらいから未だずっと言われてるフェミニズムの有名な論争ですけど、そこから膣派かクリトリス派かっていうのを延々掘り下げていくっていう30分くらいある組曲なんですよ。これは逆にバリバリのフェミの人とかハードレズの人とかには解ってもらえたりするんですよ。花咲くんさ、とか言って缶ピースとか吸いながらね(笑)あのシークエンスはあれでしょ、73年時の彼女のあの論説から取ってるんでしょ。なるほどね、私は膣派よ。とかってフェミニズム論争の細かい所から攻めてきてくれたりするとぼくも嬉しいですよね(笑)


●それは膣派とクリトリス派の論争自体知らない人だと解らないですよね


花咲 そうなんですよね。だからMCの時にステージからレジュメみたいな『膣派クリトリス派の論争史』みたいなのを書いて配ったりもしたことあるんですよ。でもそれは本当ならやりたくないんですよね。それは作詞家としては敗北ですからね


●やっぱりリテラシーが下がってるっていうのは現代の問題でもありますよね。それに繋がって太陽肛門スパパーンはアルバム毎に時流を斬られてるわけじゃないですか。そこで思う現代の問題点ってどこだとお思いですか?


花咲 なんかね、最近の若い20代のヤツとかってみょうにいいヤツなんですよね(笑)会社の先輩の飲みとかにもちゃんと付き合うし親とも仲いいし、歌っていう短い時間に抽出できる問題点が見つけにくいんですよね。逆に言えば薄っぺらいっていうか。なんかフェイスブックのザッカーバーグが『フラットでオープンな社会』とか言ってますけどそれヤバいと思いますけどね。昔だったら援交の女子高生とか話してもなんか勃起するようなものがあったんですよ『オナニー週何回やってんの! マジぃ!!』みたいな(笑)セクハラ的な喜びみたいなのが、今は、オナニー? 週5よ、とかあっけらかんと言っちゃったり」


●確かに、昔は、絶対してるんだけど、オナニーしたことないって言わなきゃいけないみたいなのありましたもんね。女の子はオナニーなんかしないんだよみたいなのが。


花咲 そうそう、恥じらいがないんですよね。90パーセント以上の子がやってるのに絶対やってるって言わない。そこをなんとか言わせようっていうセクハラ的な喜びがね


●あの、膣トレとか知ってます?


花咲 ああ、知ってます。あれもねー。でもまぁ、ぼくの場合、遅漏なんで全然膣トレはひろげてもらいたいですよね(笑)あ、ちょっとすいません



ーーーーここで中座する花咲氏。帰り道の途中だったという太陽肛門スパパーン、ベーシストの矢野氏を案内し、矢野氏、合流。



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