keroppy_maeda#1 of VOBO

000


3000.jpg




ケロッピー前田 ARCHIVE

三千世界異聞 #01

Text = Keroppy Meda




『ニャン2倶楽部』編集部勤務を経て

フリーのジャーナリストとなったケロッピー前田は

投稿マニアの世界から出発し世界の最前線の変態たちとの交流を通じて

ピアス、タトゥー、身体改造といったエロとカウンターカルチャーの境界領域を開拓してきた。

ここに改めて「未来の変態」を先取りするために更なる前進を続けることを宣言し

深遠なる「変態」の世界に西暦3000年の人類の未来の姿まで映し出そうというのだ。




未来の変態を占う5つのキーワード



1 エロの境界線


『ニャン2倶楽部マニアックス』の連載は、
もともと『ニャン2倶楽部Z』の創刊号より10年近くに渡り連載された「変態カタログ」の後を継ぐ形で始められた。

「変態カタログ」の連載は、
海外の最新の変態情報をアングラ雑誌を中心とする出版物より調査報告する形式で始められた。

しかし、
世界の変態の最前線を追ううちに、
それらの変態マニア情報は、
現在のエロの先取り情報となった。

つまり、
現在はごく少数の変態たちが追求するものであっても、
その情報が広く知られるようになると、
数年後にはより一般的に理解され、
受け入れられるようになる。

例えば、
「性器ピアス」のように、
妄想世界の究極的SM行為として興味を持たれていたものが、
実現可能な行為として実践者を生み出すようになると、
エロの一つのジャンルとして認知され、
一般的にも受け入れられるようになった。




2 真の変態たち


『ニャン2倶楽部Z』の「変態カタログ」の連載終了後、
『マニアックス』の「未来変態放談」に移ってからは、
Z時代から長年担当を務めてくれたガバ子ちゃん[注1]と、
“真の変態こそが未来を作る”との方針のもと、
身体改造マニアから手足の切断の実践者、
さらには犯罪ギリギリの重度のマニアの世界を探索し、
「普通の人の理解の範囲を超えた領域にまで突き進んでしまう人たち」こそが真の変態であることを確認した。

また同時に、
私自身、
最先端の身体改造実践者たちとの交流を通じ、
本当にやりたいことをやっている変態たちは非常に明るく親切で紳士的であることを知り、
さらなる変態の最前線を追い続けてみたいと思わせたのだった。

[注1]ガバ・ガバ子:『ニャン2倶楽部Z』編集部にてケロッピーを担当。『別冊ブブカ』に移籍後も05年まで担当を続けた。



3 『歴史』は語る


10年に渡る「変態カタログ」の連載は、
変態の最前線を知ることができたと同時に、
およそ過去100年にわたる変態性癖の登場と世の中の変化の関わりについても教えてくれた。

今からおよそ100年前の写真の登場により、
のちに「ピンナップ」と呼ばれる女性のエロティックな写真(その当時はまだヌードではない)が童貞のまま戦地に送られる若い兵士たちを慰めたという歴史的事実が生み出された。

そして、
その後写真でオナニーする行為は、
視覚的性快楽として「フェティシズム」と呼ばれ、
女性そのものよりスカートやストッキング、
ハイヒールといったものに性的執着をも生み出すことになった。

そのような変態性癖は第二次大戦時、
ジョン・ウイリーが投稿マニア雑誌の元祖『ビザール』を創刊することによって集大成されるわけである。

また、
その同じ時代に社会主義思想から生まれた「ヌーディズム」を紹介するために、
女性のヌード写真が社会主義思想の機関誌を飾り、
出版物における女性のヌード写真の解禁を大いに助け、
後に男性向けヌード・グラビア誌の登場や「ポルノ解禁」への流れを生み出した。

戦争や社会思想の影響によって世の中や人々の考え方が変化し、
エロ出版物の隆盛を助け、変態のバリエーションを拡げていった。



4 エロ・メディア論


エロに限らず、
メディアに関して語られるとき、
私自身も大きく影響されているのは、
マーシャル・マクルーハン やその弟子 ブライアン・キイ の諸説である。
私の言葉でまとめるなら、
人類はテクノロジーやメディアの進歩に対してその感覚比率を変化させることで順応してきている。

そのことをもっと簡単に説明するならば、
生身の女性とセックスするように写真でオナニーできるようになることは、
写真というものをよりリアルに感じる感覚比率を手に入れたことになるのだ。

同様にインターネットの世界をよりリアルに感じるためには、
その世界とまぐわうように感覚比率を順応させ、
まさにバーチャルな世界に精液をはきかけなければならないというわけだ。

そう考えるならば、
テクノロジーやメディアの進歩に対し、
それに順応しようとする人類の営みが数々の変態を生み出しているともいえるのだ。



5 変態へのジャンプ台



20世紀後半は、
まさにテクノロジーとメディアの飛躍的な進歩の時代であった。

しかし、
21世紀に入り、
我々はもっと複雑で変化の見えにくい中心のない世界に投げ出された状況にある。

テレビ、
雑誌といったマスメディアによる中央集権化された世界では、
エロ・メディアもまた大衆的なエロの世界とアンダーグラウンドな変態の世界とに分かれていた。

しかし、
インターネットと携帯が情報ツールとしての主流となった今、
人はともすると何も分からぬままネットに氾濫する変態情報の洪水に溺れ、
全く道を見失った性の漂流者となってしまうかもしれない。

改めて現在のエロ本の使命が漂流者たちの「エロの教科書」的な道しるべとなることだとするならば、
本コーナーは真の変態へと覚醒しようという読者たちを勇気づけるコーナーとして、
その「変態へのジャンプ台」となる役割を果たせればと思う。




フェティシズムの呪縛

フェティシズムとは、
「物を拝むこと」を意味する。
エロ写真でオナニーをするという目の快楽は、
まさに「物を拝む」ことであり、
フェティシズムの発祥となった。

つまりフェティシズムとは、
自分のイマジネーションを物に投影している行為に過ぎないのだ。




オナニズムとエロティシズム


女性の自立は女性のオナニズムへの芽生えと関連があったという。

女性たちも自立を通して自らの変態性に気付くようになった今、
運命的なパートナーとの出会いこそが、
彼女たちにとっても変態探求のスタート点となるだろう。



真の変態とエセの変態


本物の変態とは、
どうすれば自分が気持ち良くなれるかを知っている人であり、
エセの変態とは、氾濫する変態情報に翻弄された性の漂流者のことである。

「自分探し」の性の漂流者を続けるよりも、
「ひとつの願い」を求めて真の変態として幸福をつかんで欲しい。



バーチャル・エロの可能性と限界


今まで禁断の変態行為といわれてきた性の妄想が次々に視覚化、
現実化されていく流れの中で、
妄想という仮想の世界の中では何をしても良いという自由を行使していくと、
めくるめく夢の世界に酔うと同時に、
ついにはその妄想の「囚われの身」となっていく。



人間主義(ヒューマニズム)を超えて


21世紀に入り、
人間が思い付く変態行為は全て出尽くしたと思われるかもしれないが、
その時代時代の変態たちが常に同時代人の理解を超えて探求を続けたように、
これからの変態は「人間」の枠を超え、
未来の快楽を求めていくだろう。






エロ・メディアを理解する5つの覚え書




写真登場の意味

およそ100年前に登場した写真は、
1910年代に始まる第一次大戦下、
「ピンナップ」として童貞兵士たちにオナニーの快楽を教え、目の快楽としての「フェティシズム」を目覚めさせた。



ヌード写真解禁の裏側

社会主義思想から生まれた「ヌーディズム」や「フリーセックス」の理念が、
出版物でのヌード写真を解禁し、
第二次大戦後には戦争反対の名のもとに欧米での「ポルノ解禁」の流れを作り上げた。



マニア投稿誌の原型

1940年代、第二次大戦下より、
アメリカのジョン・ウイリーが『ビザール』という雑誌を自費出版、
「フェティッシュ」「SM」「ボンデージ」を含む変態マニア投稿誌の原型となる。


インターネット登場以降

インターネットの登場により、
あらゆる変態情報が解禁されたと同時に、
エロ本を中心とした中央集権化したエロの正統が失われ、
何が自分にとって気持ちいいのか発見できない性の漂流者たちが急増した。



エロ本が守るべきもの

インターネットや携帯が情報ツールの主流となった今、
氾濫する変態エロ情報に翻弄され続ける人たちに、
エロ本は「正しいセックス」「正しいオナニー」「正しい変態」を教えることが使命だ。


※『ニャン2倶楽部マニアックス VOL.21』(2006)掲載


次の回を読む>>





400.png