「ぴんから対談・前編」 都築響一 × リリー・フランキー 1

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書籍版『妄想芸術劇場』出版記念企画

都築響一 × リリー・フランキー 

ぴんから対談 前編

文・構成/辻陽介


本誌創刊以来の人気連載、都築響一氏による『妄想芸術劇場』が遂に書籍に!

松本弦人氏率いる「BCCKS」というプロジェクトを利用し、都築氏の自費出版という形で出版された書籍版『妄想芸術劇場』。今(12/6時点)のところ恵比寿NADiffのみでの販売となっているが、12月16日には電子版が、来年1月には印刷版が、それぞれ「BCCKS」サイトより発売となる予定だ。タイトルに「001」と付されているように、本書は既にシリーズ化も決定、エロ本発の真正アール・ブリュットが、この国のアート界を真っ向から挑発する。

記念すべき書籍化第一弾となる本書は、全国に隠れファンをもち、日本のヘンリー・ダーガーとの呼び声も高い「ぴんから体操」の作品集。過去20年にわたり弊社へ投稿された膨大無数のぴんから作品の中から、都築氏が選りすぐった数百点(それでも膨大!)の作品が贅沢に収録されている。ぴんから作品の凄絶さについては何をかいわんや。百聞は一見にしかず、まずは本書をお手に取って、あるいは幣誌掲載分の作品を観て、カオティックで超マニッシュなぴんから体操の脳内コスモスを体感して欲しい。

2010年代もそこそこに、早くもディケイドを代表することになるであろう奇書の誕生。これはマニアならずとも必見だ。

さて、本欄はその出版を記念するスペシャル対談である。お相手を務めるのは20年来のぴんからウォッチャーであり、またかつてぴんから体操の個展を開催したこともあるという、ご存知リリー・フランキー氏。業界屈指のぴんからフリークである二人による、他ではありえないぴんから対談。ぴんから作品の変遷、ぴんから体操の人物像、そして投稿絵師という生き方を巡り、前後編二回にわけてお届けしたい。



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『妄想芸術劇場001』(編・都築響一)





(2011・11/23・恵比寿 NADiff a/p/a/r/tにて収録)



リリー まさかぴんからで一冊の本ができるとは…(笑)。感慨深いですねぇ。それにしてもこれだけの作品がよく残ってましたね。

都築 ニャン2でイラストコーナーを担当している方が好き者で(笑)。個人的に保存しといてくれてたみたいなんですよ。そのおかげで破棄されていてもおかしくなかったものがこうして世に残ったわけです。

リリー 僕が20年前、ぴんからの個展をやった時も、『投稿写真』で似顔絵コーナーを担当していた塾長って人が個人的に所有していたものを借りてやったんですよ。

都築 普通なら捨てちゃいそうなものじゃないですか。編集部が引っ越した時なんかに一斉に断裁されかねない。それがそうならず、20年間分が保存されていたというんだから、これはすごい。たしかリリーさんが渋谷で開いた展覧会で展示されていたぴんからの作品はニャン2に送られたものではないですよね?

リリー あれは『投稿写真』に送られたものですね。「似な顔塾」っていう似顔絵コーナーがあって、そこにアイドルの似顔絵を点描で送ってきていたのがぴんから体操だったんですよ。

都築 点描期ですね。


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点描期の作品


リリー 僕はその点描期から、ぴんからを認識したんですけど、都築さんの本を見ると点描期以前というのもあったんですね。

都築 ここらへんが僕たちの知る限り、最も初期の作風なんですよ。フラットなマンガ期とでも言いましょうか。


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初期の作品



リリー 「錦の国星」のパロディなんでしょうかね? でもここ数年のぴんからはまたこの感じになってきている感じがしませんか? 最近のニャン2に掲載されている作品を見るかぎりですが…、書きなぐってる感じ。


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近年のぴんから作品


都築 ミックスされてきてる感じがしますね。リリーさんが開いた展覧会では点描画が中心だったんですか? 

リリー そうですね。点描画だけです。あとは文章。展覧会後もしばらくは他のエロ本でもぴんからをフォローしていたんですけど、ある時期からぱたりと見掛けなくなり、そして次に見た時がこの感じでしたね。

都築 ぬるぴょん(笑)


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ぬるぴょん期の作品



リリー 「難解になってきたな、この人」って思いましたよ(笑)

都築 ぬるぴょんはインパクトありますよね。でも普通に考えるとさ、ぬるぴょんが最後にくるでしょ。でも事実はぬるぴょんで一回抽象にいったにも関わらず、再び具象に戻るっていう…。

リリー 深いですよねぇ。

都築 深いね(笑)

リリー でも、どあたまから会田誠的とミスター的というか、現代美術めいた雰囲気はありましたよね。

都築 ノートとかの紙をそのまま使ってたりするんだけど、罫線がそのまま入っててるんですよ。でも、それを上手く絵に取り込んでるっていうね。

リリー すごく現代的。書けるところにはどこでも書いちゃう。しかも、ここからいきなり点描期に入るわけですから。となると画力があるのにわざわざこういう絵を描いていたってことですよね。

都築 めちゃくちゃ画風にバリエーションがある。あとリリーさんご覧になってるか分からないけど、ここに出せなかったものとして、アイドルコラージュものもたくさんあるんですよ。

リリー 写真ですか。

都築 そうそう。アイドルがウンコまみれになってたり、ウンコ食べてたりするのをコラージュで作ってるんです。今日持ってくればよかったな。

リリー へぇ。それは見たいですね。

都築 もうね、横尾忠則の初期みたいな感じですよ(笑)

リリー さすがですねぇ(笑)

都築 宇宙をバックにアイドルとウンコとカマキリが飛んでるみたいな。すごい面白いですよ。よくこんなの作ったなって思います。

リリー ぴんからの中の宇宙は凡人の理解を越えていきますからねー。

都築 (笑)。あと、ぬるぴょん期には小説の投稿もあるんです。

リリー この人の文章は素晴らしいですよね。ぴんから文章に関しては絵を実際に借りるまで認識できていなかったんですけど。


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ぴんから文章



都築 文章は掲載されませんからね。

リリー そうですよね。でも実際には絵の裏面だったり、便箋に同封されたメモであったりに秀逸な文章が綴られてる。展示会の時は文章の拡大コピーも展示してたんですよ。

都築 それ重要(笑)。多分、普通の人は雑誌しか見てないわけですから、文章については全く知らないわけじゃないですか。あれ読むと、まぁぴんから狂ってるな、と分かる(笑)

リリー 一時期、ぴんからがアイドルNの似顔絵をずっと描いて送ってきてた時期があったんですけど、あるとき、それがパタリと止まったんです。で、止まる前、最後に送られてきた絵が、一切の揶揄も入っていない、ただぽつんと壁の前に立っているNの美しい作品だったんですよね。で、例のごとく、裏側に文章が書いてあったわけですが…、それがまた秀逸なんですよ。「骨まで、骨まで、骨まで愛した、あんた誰?」と。

都築 すごい、現代詩だ(笑)。しゃぶりつくして透明になっちゃったみたいな。

リリー 泣けてきましたよ、ほんと。「人の心には死んだ殿様が住んでいる」っていう書き出しから始まる散文なんかを見ても、ほんとに秀逸なんですよね。

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<INFO>

現在、恵比寿NADiff/a/p/a/r/tにて書籍版『妄想芸術劇場001』を特別先行販売しております。また現在NADiffでは、都築響一氏の写真展『暗夜小路 上野~浅草アンダーグラウンド・クルーズ』(2012年1月9日まで)も開催されております。

(NADiff Gallery 都築響一「暗夜小路」)