「ぴんから対談・後編」 都築響一 × リリー・フランキー 1

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書籍版『妄想芸術劇場』出版記念企画

都築響一 × リリー・フランキー 

ぴんから対談 後編

文・構成/辻陽介

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『妄想芸術劇場001』(編・都築響一)



都築 今このエロ本お絵描きシリーズを連載でやってて、ぴんから体操に始まり、すでに20人以上の絵師をとりあげてきてるんです。毎回、それぞれ作風は興味深いわけで、こちらとしてもどんな人間が描いてるか当然気になるじゃないですか。でも、ぴんからのみならず、全員が会うことを拒否するんですよ。

リリー そこが上品ですよね。信用できますよ。

都築 控え目というのか…。だって20年間コンスタントにニャン2に絵を投稿し続けてるわけですから、ある意味、彼らにとってもニャン2は心の拠り所だとさえ言えると思うんですよ。そこから頼まれても「来るな」と言う。そもそも、この絵って送っても返却されるわけでもないんですよ。それを20年間送り続けるって一体どういう心理なんだろうと思いますよね。

リリー 本当に描いて捨ててるようなもんですよね。

都築 排泄でしょ。写真なら焼き増しとかできるからいいけど、絵の場合は全てオリジナル、一点ものですもんね。ぴんからの点描画だって、何時間もかけて描いて送ったはいいけど、返ってもこない。さらに文章に関しては掲載すらされない。でも描き続けるっていう。

リリー 絵を描く意味合いが、そのへんの絵描きとは違う。見返りなんてほとんどないわけですもんね。

都築 そう。ただ、そんな中で一人だけ会ってもいいって人がでてきて、それがカツ丼小僧さんだったんですよ。

リリー (ニャン2を見ながら)あぁ、この人ですね。


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カツ丼小僧の作品



都築 まぁ最初から「家を見せてくれ」って言ったら警戒されるなって思ったんで、まずはお茶でもという感じで会いにいってね。

リリー いかんせん都築さんは家にいきますから(笑)。絵を描いてるんだったら、描いてるとこ撮らせろって絶対になるでしょ。

都築 それがないとねぇ(笑)。まぁ駅前でお会いしてね。普通の方なんですよ、見た目は。超気持ち悪い人がくるのかと思えばそんなこともなく。で、年齢は47歳。話を聞いてみると、ひきこもりをしてるっていう。で、「ひきこもりってことは家にひきこもってるんですよね?」と。「ちょっと見に行ってもいいですかねぇ」と(笑)


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カツ丼小僧氏
(photo by Kyouichi Tsuzuki)



リリー もう都築さんの場合は本人よりも部屋の方が見たいんじゃないですか(笑)

都築 そりゃそうですよぉ、本人はシャイですし。それに部屋の方が本人を語ってるんです。まぁ見事な汚部屋みたいな感じでしたね。そこに10年くらい一人で住んでいるらしいんですが、なんか本当にエロ本しかないんですよ。ベッドすらない。

リリー ダーガーの部屋が出している雰囲気と近いんですかね。

都築 ダーガーよりも変。あんなんじゃないですよ。狭いワンルームのマンションで、絨毯のはしっこのところで毛布にくるまって寝てるみたいな。起きてる時はずっと絵を描いてるって言うんですね。さらには47年間で一回も働いたことがない、と。

リリー 本物ですねー。やっぱり。どうやって食ってるんです?

都築 お父さんからの仕送り。友達ももちろんいないから、携帯も三ヶ月前に初めて買ったっていう。

リリー にしては、この人の作風って明るいですよね(笑)。お笑いマンガ道場みたいな。カオスがないんですよね。

都築 中学生の頃から漫画家になりたくて、出版社に持ち込みとかすれども断られ、みたいな生活を30歳くらいまでやって、一度も上手くいかなかった、と。で、絶望したわけですよね。自分には才能がないんだって。で、死のうと思ったって言うんです。そんな時に、エロ本の投稿ページがあるのを知って、ダメもとで送ってみたら、載ったんですよね。自分の絵が初めて印刷物になった。それで死ぬのをやめた。それからはずっと投稿だけを書き続ける日々。

リリー 最近の、特にDVDがメインになっちゃってるようなエロ本って、読者が絵や文章を送ったりっていう、そういうページすら設けてないじゃないですか。結構、拠り所になってるんですよね、投稿ページって。

都築 素人投稿エロ本なんていうのは、世間的には雑誌界においての地位が低いと思われてるわけですよ。変態さんっていうのも世間からすれば日陰の存在でしょ。でも、投稿イラストコーナーっていうのは、そんなただでさえ日陰の世界のさらに辺境なわけだよね。そもそも投稿写真を送れる人達には相手がいるわけじゃないですか。そこが決定的に違いますよね。

リリー ぼくはニャン2に写真投稿してる人達って絶対に自分より人生を楽しんでる人間だと思うんですよ。攻めの人生じゃないですか。以前にZで「投稿批評」っていう、失礼な連載をしていたんですけど、でも結局は何を書いたところで羨ましさだけが残っていくんです。ただ、この投稿イラストページを見る限り、まったく違う感想です(笑)。尊敬はあっても羨ましくはない。絶対に届かない芸術を感じる(笑)

都築 でしょう(笑)。世間的に言えばもうカースト外みたいな感じだと思うわけ。

リリー 凡人の世間からすれば、「要注意人物」として扱われる層ですよね。

都築 決してメインになることがない。雑誌のなかでもどうでもいい扱いを受けてる。でもその中に光るものがあるわけですよね。ニャン2の読者にしても、このイラストページを毎月楽しみにしてる人ってものすごい稀だと思うんです。

リリー でも、ニャン2を最初からずっと読み続けて、このイラストページに至ると最も独特なオーラがあります。ここに比べるとウンコ食べてる写真なんかの方がよっぽど健康的に思えてくる。

都築 写真はハッピーですよ。行為をできてるんですから。イラストには陰がある。この人達だって、相手がいたら写真を送ってくるとも思うんですよ。その分の怨念がたまってる。

リリー でもそうやって何にも見返りもないにも関わらず20年くらい送り続けていれば、やっぱこういう風に本にしたりということをしてくれる人が現れるっていうのは、これご褒美ですよ(笑)

都築 喜んでくれるかどうかはともかく(笑)

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<INFO>

現在、恵比寿NADiff/a/p/a/r/tにて書籍版『妄想芸術劇場001』を特別先行販売しております。また現在NADiffでは、都築響一氏の写真展『暗夜小路 上野~浅草アンダーグラウンド・クルーズ』(2012年1月9日まで)も開催されております。

(NADiff Gallery 都築響一「暗夜小路」)




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