ササタニーチェとの放談

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DVDマガジン『メイコグ』編集長

ササタニーチェとの放談

聞き手・文/辻陽介


本取材の当初の目的は、若干25歳にしてインディペンデントのDVDマガジン『メイコグ』の編集長をつとめる新進気鋭の映像作家・ササタニーチェ氏の存在を、世に広く紹介することにありました。

当然、取材内容もササタニーチェ氏の来歴、あるいはその作品群にフォーカスされるはずであり、またそうあるべきでしたが…、なんと言いましょう、もちろん『メイコグ』の比類なき面白さの所以についてはたっぷりとお話をお聞きすることができたのですが、いま改めてインタビュー全体を通して読んでみると、単純に、逸れてます。話題が、逸れてます。さらに言えば、私、逸らしました。

もっともらしい言い訳を二点ほど述べさせて頂けば、まず同世代のクリエイターさんへの取材ということもあり、いつもの取材よりやや気持ちが弛緩し、聞き手たる本懐を失念、オフ気分で喋りすぎてしまったということが一点。そしてもう一点は、ある人物について、その作品や人柄の魅力を記事として伝えようとした時、いかにも情報的な紋切り型の提灯記事を書くことが最適な方法だとは到底思えないということ。

二つ目の言い訳にはやや詭弁臭さを嗅がれる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、本稿を最後までお読み頂ければ、これがある理念の実践であることがご理解頂けようかと思います。おのが編集力不足を体のいいエクスキューズで誤摩化そうとしてるわけでは無論ございますん。

さて、前口上はこれぐらいに。今を煌めく若手映像作家との命題なき放談。話題はDVDマガジン『メイコグ』についてを皮切りに、エロス論、メディア論、そして次代のあるべき表現について―




ー『メイコグ』全シリーズ見させてもらいましたが…、いやめっちゃ面白かったです。

ササタニーチェ いや、恐縮ですわ。

ー正直言うと、見る前はもうちょっとつまらないのかなと思ってたんで、そしたら凄い面白くて…、逆に驚きましたよ。

ササタニーチェ そうっすかぁ。

ー特にメイコグ3号目の『すいっちん』、あれは素晴らしいできじゃないですか。



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メイコグ3号 すいっちん-バイブ新世紀- [DVD]





ササタニーチェ あれね、実は70%なんですよ。

ーほぉ?

ササタニーチェ 『すいっちん』の撮影で、ある会社を取材したんですけど、そのとき、最高にいい画が撮れたんです。おっさんが延々とバイブを工場で作ってるって画なんですけど、ただその後、そこの会社とちょっとトラブっちゃいまして、全面撤退されたという。泣いて謝りにいったんですけど駄目でしたね。まぁ俺が悪かったんですけど…。

ーへぇ。

ササタニーチェ あれが使えてたらもっと自信満々で外に出せたんですけどね。

ーいや、充分な見応えでしたけどねぇ。



『すいっちん』予告編(現在発売中)




ササタニーチェ どうなんすかねぇ…、俺自身がテレビ世代で、小さい頃からテレビをよく見てたから、ある程度、画面に動きがないと見てられないというか、すぐ眠たくなっちゃうんですよ。

ー映像作家なのに(笑)

ササタニーチェ そう。でも、結構、あれ画面に動きがないから。正直なとこ、インタビューのシーンなんかでも、対象が正面向いて話してる絵なんてのは極力いらないんです。動きの中に声があるっていう方がいい。ドキュメンタリー作品の美意識みたいなものですが。

―なるほどね。個人的には1号の道祖神、2号の蝋人形、あれらも知らない業界の裏側を見れたって点でも充分に面白かったんですけど…、人形師さんも魅力的でしたし。ただ『すいっちん』に関しては、バイブ職人といういわばニッチな視点から切り込み、もっと大きな男女の問題、ジェンダーの問題もが俎上に乗せられていて、単に面白いってだけじゃなく批評性もある。シリーズ中では間違いなく最高の出来じゃないかなと思いましたよ。



『ファニーフェイスの哭き哥』予告編(現在発売中)



『蝋塊独歩』予告編(現在発売中)




ササタニーチェ ひとまず、色んな人に見て欲しいですよね。クィアフィルム映画祭というのがあって、まぁクィアですから、トランスジェンダーとかセクシュアルマイノリティーとかをテーマとした映画を主に集めた映画祭なんですけど、『昭和聖地巡礼』(※)の時に出品させてもらったんですよ。で、今回の『すいっちん』も上映させてもらったんですが…、ただ、これトランスジェンダーのこと全く考えてないよねって言われて(笑)。あれは男と女が愛しあうっていうジェンダー観を前提に作られてるんで、そこが弱みっちゃ弱みなんですよね。


※『昭和聖地巡礼』…全国の秘宝館を巡ったドキュメンタリー作品。映像作品としてはササタニーチェ氏の処女作にあたる。氏が学生時代に発表し、4500枚を売上げた。


―確かに(笑)。ただ、全てを一挙に描くのは難しいですよね。

ササタニーチェ そうそう。どこまでも言及していってしまったら逆に思考がストップしちゃいますからね。

―ただバイブを起点に男女を語るっていう試みは新鮮でしたよ。男女の問題やらジェンダーの問題やらってのはもう何十年も前から連綿と議論され続けてるわけですが、やっぱ多くは相続問題や雇用問題といった社会制度に即して議論されてたりするんですよね。ただ、こればかりは身の下を無視して語ろうとしても完全に片手落ちですから。

ササタニーチェ そうそう。まぁバイブから切り込んだってのは他にないでしょうね。そう思うとなかなか…(笑)

―うん。例えば作品内にあった、「同じ膣用バイブでも男向けのバイブと女向けのバイブがある」っていう考え方なんて目から鱗でしたね。

ササタニーチェ そうなのかぁ…、正直言うと、俺、バイブ使ったことないんすよね。全くの異世界だったから…、だからこそ客観的に距離をおいて見れるのかもしれないですけど。結局あれを見た後も、使わないんですよね。全然。

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