高木壮太の失敗した芸術家入門?島根の看護婦さん、見てますか??

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高木壮太インタビュー


高木壮太の失敗した芸術家入門
?島根の看護婦さん、見てますか??


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当サイト宛にPヴァイン・ブックスさんからFAXが、
(引用・転載は自由)と明記されているので、少し引用させて頂くと、





 町田康、中原昌也、菊地成孔……文才あるミュージシャンの系譜に、mixi、twitter発の脅威の新人現る!!!

 著者は、GREAT3やボニーピンク、YUKI、エルマロから和田アキ子までのサポート、世界十カ国での巡業経験もあるが、基本は無職として、その日をやりすごしてきた、キーボード奏者・高木壮太。
 ヒマにまかせて、考えてきたことや蓄えた知識、ブラックジョークを、mixiやtwitterで綴ったところ、思わぬ大反響! 不謹慎な言葉に潜むユーモアや本質を、「けしからん!」と楽しんでいただければ幸いです。






との、こと。

こんな、海の物とも山の物とも知れない、黒地に白い文字のウェブマガジンに頂いたビッグな取材依頼。

冒頭からぶっちゃけすぎのきらいはありますが、我々がパブ記事を書くとこうなります、というわけで、高木壮太氏、Pヴァイン・ブックスの方の思惑通りになっているかはわかりませんが、ロングインタビューを掲載致します。



「風が吹けば桶屋が儲かる」と、あるように、きっと誰かの役には立つ至極金言の数々。

というか、このインタビューを面白がれない人とは、ぼくは友達になれない気がしています。


取材:辻、福田
文:福田






編:まずは、謹呈で見本を頂きましてありがとうございました。今日のお話はこの「プロ無職入門」を中心にお伺いしていきたいんですけど、これを書かれたのは最初から書籍化を見据えてなんですか?

高木壮太(以下、高):これはもう2年くらい前から、装丁と編集をやったエモリくんっていうのが、ずっと動いててくれてて、その間もずっとネタは増えていくんですけど、書籍化の話は具体化しないで、でも、去年の秋くらいからやっとゴーサインが出てそこから一気にバタバタバタッとできましたね。

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プロ無職入門 高木壮太の活ける言葉 (P-Vine Books)

編:内容はとしては帯にもありますが、ツイッターに書かれたものが多いですか?

:半分はツイッターに書いてたやつで、もう半分はmixiに昔書いてたやつですけど、mixiのやつはほとんど書き直してますね。

編:売り上げはいかがですか?

:そういうことはぼくの所には入って来てないですね。本のことはさっぱり分からないです。

編:(笑)

:著者謹呈も2冊しかくれないんですね…。

編:そうなんですか!? 普通もっともらえると思いますけど。

:CDは出したら何十枚ってサンプルで配る用にくれるんですけどね。だから3冊目からは定価の7掛けで買ってますよ。手売りの分は。

編:そうなんですね(笑)そもそも、ネットに文字を書き始めた最初は何を期待しておられたんですか?

:まぁ、勝手に好きなことを書こう、と、それだけですね。でも、割と、ツイッターをはじめて、すぐぐらいから本にしようという話にはなったんですけど。

編;mixiとツイッターで違いってありましたか?

:ツイッターって普通、多分0.1秒くらいしか見ないじゃないですか。だから視認性をよくするってことですか、それにはテクニックが出ますよね。漢字を少なくするとか。端折って端折って短くするってことは心掛けてますけど。

編:ネタ的なつぶやきが多いと思うんですけど、やっぱり笑わせることを目指してるんですか?

:もちろん。100%笑かそうと思って書いてます。

編:でも、勘違いする人とかいませんか?

:いますけど、そういうのは基本返事しないんで、自分の感情は排して書いてますから批判はあればあるだけいいです。本当は批判と賞賛が半々くらいになれば一番いいですけど、なかなか、そうはいかないですね。荒れれば荒れるだけいいと思ってるんですけど。自分が性格が優しいからですかね。個人攻撃も得意じゃないし、人と論争したりもぼくはあんまりできないですし。

編:それでもやってく内に、こうすれば荒れる、とかそういう響くものってなにか判ってきたりするんですか?

:あります、あります。こう、自分が書くモノで、純粋なネタとトリビア的なものと自分の好きな趣味の事を書くとか何種類かに分けられると思ってますが、ぼくが一番書きたいのはナンセンスを書きたいんですね。でも、そういうのは一番ウケないですね。

編:(笑)そうなんですか。それは理解されないってことですか? 求められてないってことですか?

:求められてないんでしょうね。

編:(笑)ちなみにこの本の中で高木さんのナンセンスのお気に入りってあるんですか?

:どれですかねー、大体ナンセンスを中心に選んで、全部で3000個くらいのツイートに星を付けて、5つ星から1つ星までで、3つ星以上を載せてるのかな。で、こういうのは好きですけどね。

編:あー、やっぱり1ページ目のやつが。


俺とアーサー・C・クラークの予想では、人間の次はエビが知的生命の頂点に立つ。そのとき、かに道楽がどうなっているか心配



:おれ、本になってから読んでないんで、どこに何が出てるか分かんないんですよねー。

編:そうなんですか(笑)

:一番リツイート数が多かったのがこれなんですけど、


千葉かどっかの大学の生物実験室で学生がウニの卵子に自分の精子ぶっかけてみたんだと。顕微鏡で観察してると、ちゃんと受精して卵子が分裂し始めたんで、怖くなってシャーレに硫酸注いで殺したんだと



これはおれ、どっかで聞いた話ですからね。何千リツイートとかいきましたけど、ネットかなんかで見たんですよ。ほんとかどうか分かんないけど。

編:(笑)

:ほんとか嘘かっていうのはほとんど考えてないんですけどよく、あれってほんと何ですか? って聞く人いますけど、そんなの言ってもしょうがないし、世の中にはホラ話と嘘の区別がつかない人が多いみたいで、そういうのは勉強になりましたね。まぁ、でもずっとやって、反応を見てるんでウケる方に自分で知らない間にシフトしていったかも知れませんね。そういうところはストイックにはできないもんですね、人間がやってる以上ね。

編:mixiからツイッターっていう、書く基盤は変わってらっしゃいますが、書いてた時期で、人にウケるものが変わったみたいな印象ってありますか? 今だからウケるみたいなこととか。

:まぁ、そんなに変わってはないと思いますよ。時事ネタっていうのはありますけど、おれ、この本だってツイッター本だって売るのは大反対だったんですよ。将来的にはその部分から古びちゃうじゃないですか。これぐらいの密度の本は二度と書けないと思いますから、それにツイッターっていう枕詞が付いちゃうと、その時の流行に便乗しただけってことで忘れられちゃうと思いますし。だから時事ネタは省いてますよ、何十年経っても面白いように。

編:でも140文字って制約があるから面白いってこともあるかも知れませんよ。

:あー、それはあるかも知れませんね。たしかに140文字で伝わらないことってほとんどないですよ。140文字あったら何でも伝えられますね。最近そう思いますよ、連投とかもほとんどしませんからね。しても読みませんし。

編:ツイッターっていうメディアそのものにはどういった印象をお持ちです?

:あー、ツイッターっていうか、インターネットそのものですけど、投稿をするメディアとしてはそんなに画期的とは思わなくて、昔から投稿モノだけでできてる雑誌とかいっぱいあったじゃないですか。ビックリハウスとか。おれはビックリハウス(※1)に小学校の時から投稿しはじめて、ネットでは2ちゃんねるとか、もっと前のあめぞう掲示板(※2)とか、あやしいわーるど(※3)とかのころから居て、ずっと書いてますけど。

※1、ビックリハウス:1974年から1985年までパルコ出版より発行されていたた、読者投稿雑誌。

※2、あめぞう掲示板:あめぞう。開設者はあめぞう氏。日本初とされるスレッドフロート型掲示板の集合体からなる電子掲示板群サイト(インターネット百科事典ウィキペディアより)

※3、あやしいわーるど:かつて日本最大であったアンダーグラウンドサイト群で多数の匿名チャットなどから成り立つ。(インターネット百科事典ウィキペディアより)あめぞう、あやしいわーるど共に、利用者は、2ちゃんねるより民度が高かったといまだに嘯く。



編:じゃあもう、投稿をするっていうのは生活の一部みたいな感じで、ツイッターもその流れということですか?

:はい。2ちゃんねるではすごい鍛えられたと思いますね。2ちゃんねらーだと思ってます。自分では。iPhoneにしてからは全然見なくなりましたけど、なんかハネられるんですよ、おれのソフトバンクのサーバーから。

編:やっぱり書き込まないと意味ないですか?

:書き込みっていうか、スレッドを立てる。おれ、スレッドは何千個も立てたと思うんですよね。スレッド立て師だったんです。

編:素朴な質問ですけど、その楽しみってなんだったんですか?

:やっぱり、情報って発信している人に集るじゃないですか。有益な情報って自分から発信してるところに集るっていうのは実感してたから。情報を集めるツールとして。読むってのはほとんどないですね。ツイッターも他の人の全然読まないですね。

編:なるほどー。確かに、発信してるところに情報が集るっていうのは、ぼくも実感します。では、ここに書かれたものは状況も動機も区々な断片ばっかりだとは思うんですけど、これを「プロ無職入門」ってタイトルで括ろうと思ったのはどうしてなんですか?

:このタイトルはほんとにギリギリで決まって、とにかく扇情的なタイトルにしようと思って、中身はプロ無職入門でもなんでもないですから。だいたいおれプロ無職でもなんでもないですし、確定申告の時もミュージシャンって書いてますし。“東京ラーメンマップ”でも“ゲイはなぜ面白いのか”でも“日本人は全員ヤンキーである”でもなんでもよかったんです(笑)色んなタイトルいっぱい考えたんですけど、ここに落ち着いたんです。内容関係なくタイトルさえ面白ければいいんじゃないかと思って。プロ無職って言葉もおれが考えたんじゃないですから、どっかネットで見つけたんです。

編:そうなんですか(笑)ビックリしました。プロ無職ではないんですね(笑)では、ご自身は世の中的にどういう立ち位置だと思いますか? 著作を拝見してると、世の中を俯瞰して語ってらっしゃるところなんかも見られますが。

:でも、男だけで飲み屋なんか行ったら、天下国家を語るじゃないですけど、世の中のグランドデザインを語るみたいなところってあるじゃないですか。だからよくある男の子属性だと思いますけど。

編:でも、そこに、全体に漂う厭世的な雰囲気があると思うんですが?

:どうなんですかね…、厭世感。たしかに世の中の常識になってることの裏を付くみたいなのは好きですね。ええ、キレイ事みたいなことがとにかく嫌いなんで。そういうところは出てると思います。

編:既成概念が受け入れられないとか?

:いや、おれ、既成概念マニアだと思いますよ。だからそれの逆説が書けるってだけで。自分ではそうだと思ってます。ただの社会科が好きな男っていう。

編:なるほど、社会科が(笑)では、高木壮太とは何者か、と問われたら、何とお答えになりますか?

:失敗した芸術家じゃないですか。

編:(笑)すでに過去形なんですね。

:いやー、失敗してるでしょう。この歳になってなんの業績も残してないですし。後世に残るものは何も作ってないですし、これからも作れるとおれは思ってませんですからね。ピカソが言ったじゃないですか、「芸術家は絶対に成功しなくちゃいけない、それが最低条件だ」って。おれもそれはそうだと思います。その言葉を知ってすごい楽になりましたね。

編:(笑)楽になったんですか。

:ええ、失敗、失敗って(笑)だから失敗した芸術家ですよね。これは気に入ってます(笑)

編:はははは(笑)成功する見込みとかもないんですか?

:見込みとか、そんな甘いもんじゃないでしょうね。だってほら、総理大臣になる人って子供の時から「おれ、総理大臣になる気がする」って言ってたとかって言うじゃないですか。そうだと思いますよ。

編:高木さんとしては今後も失敗した芸術家として生きていこうと?

:いやー、それはでも、自分の心情としては悲しいじゃないですか。おれってここで終わりかー、とかっていうのは。まぁ、それは現実としてしょうがないですけど、第三者的に見たら、失敗した芸術家…、しかり! って感じですね(笑)

編:(笑)…しかり。自意識としてはどうですか?

:自意識としては、最近はもう齟齬がないようになってます。

編:(笑)ははは。で、これは、はじめての書籍ってことになるんですよね? 失礼ですけど今おいくつになられるんですか?

:今、44歳です。

編:44歳で初書籍っていうのは遅いよって感じですか?

:遅いっていうか、なんか、だれかの足の裏舐めてでも昇り詰めてやる! っていう気持ちが全然ないですからね…。もう、隠居というか、後進の指導にあたろうかな、と。

編:やっぱり、売れて評価されてナンボなんですかね?

:そうじゃないですか。自己満足以外なら。

編:例えば、通にはウケる、みたいなことってあるじゃないですか。ジャンルは問わず芸術の世界には一部のフリークには熱狂的に支持されてるんだけど、一般的には全然浸透してないみたいな方もいらっしゃるじゃないですか。

:おれの考える成功ではないですよね。こんな本、典型じゃないですか、こんなの誰も読まないですよね(笑)おれ、よくバンドの話でも、なんでも、マニアじゃなくて一般の人、そういう人を例える時に「島根県の看護婦」っていうキャラクターがあるんですよね。もし、ここで対面しても5分も話が続かないと思うんですよ、島根県の看護婦に自分のやってることを説明しようとしても、絶対できないと思いますし、そういう人に向けてコレです、っておれはできないですから、その時点で失格じゃないですかね。

編:確かに島根県の看護婦はこの本は買わないかもしれませんね(笑)でも、非常に的確な基準で、島根県の看護婦が買うものってすごい売れてるもののような気がします(笑)

:あまりにも島根県の看護婦のことを考え過ぎて、朝起きて鏡見ながら「今日は島根県の看護婦で」って思ったら身も心も島根県の看護婦に成り切ることできますからね(笑)島根県の看護婦になって街を歩いて街を見ることもできます。

編:だったら、その島根県の看護婦に成り切って、島根県テイストを入れて制作すれば自ずと成功するんじゃないですか?

:そうですよね! でもつまんないんですよ(笑)島根県の看護婦の内面なんて。やってても全然楽しくないですよね。

編:では、もし、島根県の看護婦にウケるものを、って発注が来たらどうしますか?

:それは、おれはずっとスタジオミュージシャンとしてCMの音楽作ったりとかもやって来ましたから、音楽でだったらできます。でもそれは職人として。ただ、島根県の看護婦1000人を前にして「おれのメッセージを聞いてくれー!」みたいなことは照れくさくて絶対できないですね。

編:島根の看護婦さんの感性に合ったものを自分も楽しんで制作できる、というのがもはや才能なのかも知れませんね。

:そうだと思いますよ。やっぱりおれは自分のことは極北だと思ってますから。

編:分野でいうとご自身が一番得意なのはなんだと思いますか?

:演奏だと、何も苦しまずにできますからね。バンドはほんとに生活の一部になってますから。文章はお金もらって原稿も書いてましたけど、締め切り守るっていうのがどうもできないっていうか、あんまり得意じゃないんじゃないかな。音楽はキャリアあるだけ自然にできますね。皆、音楽より文章の方が絶対才能あるって言ってくれますけどね。

編:でも、ご自身では文章はしんどい?

:でも本にもなったし、そう言ってくれる人がいるんだからそうなんじゃないですか。認めてくれる人がいるっていうのは。

編:それは、悲しくはないですか?

:まぁ、人生っていうのはままならないもんでね(笑)自分が思ってるところで思ってるような評価って絶対、得られませんよね。このクラスタにこのネタを?、とか思っても絶対トンチンカンなところで受けますよ。それは自分でコントロールできないんじゃないですか。

編:それは、ピカソのいう芸術家ってそれをコントロールできる人ってことになるんですかね。

:家がとなりに住んでたやつで、今、売れ売れで野音でワンマンとかやるようなバンドマンの22、3歳ぐらいのやつがいるんですけど、話聞いてるとすごいですよ。もう全部ビジョンが見えてたって言うんですよ。楽器買いに行った時から、今みたいになるって見えてたって。

編:へぇ?(笑)でもそれは後付けの可能性ってないんですか?

:ありますよね(笑)その時の発言は残らないですから。ジョンレノンとかも同じようなこと言ってますよね。でも、成功の程度にもよりますけど、ある程度名の売れてるミュージシャンってみんな同じようなこと言いますよね。デビューぐらいのビジョンは見えてたって。

編:高木さんはそういうビジョンは見えてたんですか?

:一切見えてませんでしたね(笑)なんかレコーディングとかしてみたいとかは思ってましたけど、あと、何かモノを作る環境に身を置きたいっていうのは思ってたんで、それはその通りになったと言えばなりましたけど。あと、絶対働きたくない、っていうのもその通りになりましたね。

編:そういう意味では予定通り(笑)じゃあ、そういう成功とか名誉とかに関しては恬淡としてたんですか?

:多分そうだと思います。それが分かったのは、つい最近ですけどね。ええ。成功目指してやってると自分は勘違いしてたのかな(笑)そうじゃなかったんですよね。ただ嫌なものから逃げ回って、音楽という砦に立て篭ってたら今、兵糧攻めを受けてる状態なんじゃないですか(笑)音楽とか文章、映画も表現の世界で生きるって夢は叶ったような感じですけど、客観的に見たら兵糧攻めを受けてる感じなんじゃないですか(笑)おれ、昔、露天商をやってたんですけど、その時の金で株とFXやって、それで儲けた金を食い潰してるような感じですよ。

編:あー、そうなんですか(笑)じゃあ結構経済とか勉強されたんですか?

:いや、もう博打として。多分、おれ今金もったら全部博打に使うと思いますよ。まとまった金持ったこともあるんですけど、例えば、100万円の在庫抱えて商売するより、その100万円の現金を動かした方が全然効率いいじゃないですか。

編:(笑)直接的ですよね。

:ええ。おれは、お金に関してはそう思ってます。どうしてもそうなると思いますよ。大金が入ったら博打に使いますね。


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プロ無職入門 高木壮太の活ける言葉 (P-Vine Books)

定価:1890(1800円+税)四六/並製 216頁 ISBN978-4-906700-16-5

内容(「BOOK」データベースより)
本書は著者が2005年春から2011年暮れにかけてインターネット上に投稿した、愛、呪詛、自己顕示、知識偏重、哀れみ、おかしみ、そしてなによりもナンセンスについての文章を拾い集め再構築したものです。

出版社: スペースシャワーネットワーク




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