高木壮太の失敗した芸術家入門?島根の看護婦さん、見てますか??2

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編:なるほど。そもそも、高木さんの制作にあたっての変遷みたいなものはどこらへんに影響を受けられてるんですか?

:うーん。影響ですか。おれ、小説とか全然読まないんですよ。長い文章が苦手で。しかもストーリーとかそういう読み方、全然しませんからね。映画もそうですけど、何が映ってる、とか誰が出てる、とかいう感じでは見ますけど、本の場合も誰が何を言ったかその1行を探すとか、資料みたいな読み方しかしませんね。おれ、地図が大好きなんです。地図だったらどっからでも、いつ読んでも面白いですね。

編:場所も関係ないんですか?

:世界どこでも、日本だと国土地理院の地図、今だったらグーグルアースでネットでどこでも見られるようになったからいいですよね。地図マニアです。多分のおれの一番コアなとこは地理マニアだと思います。

編:それは地図を見るだけでいいんですか?

:実際にも行きますよ。地図旅行ってよくやるんですよ。ここに面白い形の窪地があるけど、火山性のものなのかな、とか、この岬からあの岬は計算上見えるけど、実際に見えるのか確かめるとか。

編:それは通常の観光とかとは全然違いますよね(笑)では、さきほどから聞いてると、2ちゃんねらーだったり、地図マニアだったり、人と接するよりは、対モノの方がお好きそうですが、一人遊びが好きというか。

:そうですね。一人遊び好きですね。

編:人間が嫌いっていうのは?

:嫌いなのかも知れませんね。というか、バンドだけが唯一の社会との接点です。

編:確かにバンドってある種、小さな社会ですもんね。その、失敗した芸術家の視点から、もっと大きな意味での社会には何か思ってることってありますか?

:そうですね。そんなに社会とか総体とかでは見れないですね。人ってそれぞれ宇宙の広さって一緒なわけじゃないですか。それの重なっていない部分を便宜上社会って言ってるだけで、社会って容れ物が在ってそれが社会なわけじゃなくて、皆が好き放題やってる中の余ってる部分を社会と呼んでるだけ、というのがおれの社会学なんで。各人の小宇宙の緩衝地帯って言うんですかね。この本にも書いたかなー、まず道路を作って、家を作ってから人が住み着いたんじゃなくて、人が集って勝手に家を建てたら家と家の間が路になって街になったのが社会じゃないかなっていう、これも地図を見ていて導き出した考えですね。

例えば、計画的に造られたニュータウンっていうのもありますけど、自然発生的にできた街って、建ってる家の向きもバラバラだったりで地図見るだけで、これ古い街だ、って分かるんですよね。で、昔からある街って自然発生したものがほとんどじゃないですか。

編:でも、それで言うと、昔の部落地帯だったり風俗街とかは谷の下の方だったり、川の横だったりに追いやられがちですが。

:ええ。そういう悪所っていうのはありますよね。ゲットーだったり。そういうのは行政が作ったりとか階層とか、後から出来たものなんじゃないですかね。最初に「これからの社会は、体育会系と文系と理系に分けるぞー」ってなったわけじゃないと思うんですよ(笑)だからこの社会って基本的にすごくアナーキズムで出来てると思いますよ。好き勝手やったらこうなった、っていう。それをどうにかコントロールしようとして出来たのが社会主義って考え方で、それはつい最近出来たんじゃないですか。人間の歴史で言えば。

編:じゃあ、ゴールじゃないですけど、高木さんの幸せってどこにあると思いますか?

:長生きしたいですね(笑)

編:えー!?(笑)

:こうなったら最後まで、150歳まで生きて最後に生き残ったのおれかよ!? ってなって超周りに憎まれてリンチに合って死にたいですね。前の彼女のおばあさんが105歳まで生きたんですけど、もうすごかったですね。怖いモノが何にもない。家にヤクザが怒鳴り込んできてもゲラゲラ笑ってるんですよ。それで、超嫌われてんですよ、超わがままで。自分が105歳っていうのを最大限利用して、最悪に嫌な人間になってるんですよ。そりゃあすごいですよ(笑)

編:それを見てかっこいいなー、と(笑)

:ええ。こうなったら人を手こずらせて死にたいですね(笑)

編:じゃあ、他人にオムツ替えてもらわないといけないとかなっても全然余裕ですか?

:全然、余裕ですね(笑)それは今でもありますよね。「おむつかえてくだちゃ?い」とかそういうモードになる時はありますよ。

編:そのモードは分かりますが(笑)でも、意外ですね。博打がお好きかと思えば長生きを目指すとか、こんなに一人の人間に色んな要素があるとは(笑)でも一見、堅実とは真逆の博打も、健康に気を遣ったりするのも高木さんの中では繋がってるんですか?

:そこは矛盾ですけどね(笑)でも、言ってることとやってることが矛盾してるのが人間だと思うんですよ、その矛盾を繋ぎ止めてるのがパーソナリティってもんだと思うんで、だから全然恥ずかしくないですよ。言ってることとやってることが違うっていうのは(笑)それは皆に言いたいですよね、全然恥ずかしくないですよ、と。そういう矛盾って人から突っ込まれるじゃないですか、でもその突っ込みを受け止めるのは100パーセント自分なんだから、その矛盾っていうのが、人格の別名です。

編:(笑)確かに、普通は矛盾を指摘されると狼狽えますよね。

:まぁ、おれも狼狽えますけどね(笑)「え?、そんなこと言ってた??」って(笑)



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編:まあまあ、それも含めてってことですよね(笑)では、長生きを目指してるという高木さんからしたら今度の震災についてはなにか思うことはありましたか?

:自分の周りの人のことしか分からないんで、何とも言えない所はあるんですが、やっぱり自然の力は人間なんて到底及ばないってことを見せ付けられたわけじゃないですか。それなのにそういう総論から各論、原発がどうの、放射能がどうの、瓦礫の受け入れ問題がどうのって、どんどんどんどん各論に行ってるのが、やっぱり皆、パニクってるんだなぁ、と(笑)もっと自然と文明みたいなことを考えるべきだと思うんですけどね。

編:確かにパニクってましたね。当時、東京も終わりだみたいな話があったじゃないですか。地震の時は東京にいらっしゃったんですか?

:東京にいました。だからおれもパニクりましたよ。おれ、放射能を浴びたら一瞬で全身の毛穴から血を噴き出して死ぬと思ってたんですよ(笑)だから、あ、終わった、と。それで2号機の爆発から2時間の間にレンタカー予約して、バンドで発電機持ってるんで、あの発電機どこにある!? とか聞いたり(笑)実際バタバタしましたね。でも途中、大丈夫だろ! って判断したんですよ。チェルノブイリの時をちょっと覚えてるんで、当時、キエフって街が福島と東京より近いんですけど、キエフで何万人も死んだとか聞かないし、今もそんなの聞かないよな、って。でもそれ調べてる間にもレンタカー予約してたんで、相当パニクってたんだと思います(笑)

編:そこでもまた矛盾が(笑)

:だからそこで天秤に掛けましたね。じゃあ、おれ避難してどうすんの? って。取りあえず名古屋の友達の家に行くとして、汚染が何年にも渡ったりして、でも、ちゃんと自分のベッドで寝たいし、避難生活なんかするぐらいなら死んだ方がましだ、って思って、なんていうか、めんどくさくなりましたね。リアルにシュミレーションしたんですよ、東京から着の身着のまま逃げたとして、じゃあ、レンタカーどうやって返すんだとか(笑)死んだ方がましぐらい兎に角めんどくさくなって、それで頭がショートして。

編:それは、かなりリアルな心情ですよね。本来ならそこから東京一体どうなんだ? って思考を深めていってもいいところなのにめんどくさくて思考停止しちゃうっていう。では、今現在はどうですか? 静観というところですか?

:あの、安全だ、って言う人と、危険だ、って言う人が仲悪くなっちゃったじゃないですか。社会に亀裂が出来て、そういうのは悲しいなって思いますね。おれ西日本と東日本は違う国だ、っていう持論を持ってるんですけど、それを改めて感じましたね。あと、こう言っちゃなんですが、社会学者が一番、飯のタネになったんじゃないですかね。あんなの実験でできないじゃないですか、人がどう狼狽えるかとか、パニックを起こすかのいいケーススタディができたから、どっか偉い人が総括するっていうか、新しい学問が生まれるかもしれませんよね。

編:そこから、未来についてはどうですか? 日本の未来、もしくは世界でもいいですけど。

:人間ってどんな時代でも常に、おれ達は激動の時代に生きてる! とか、今おれ達が生きてるような激動の時代はない! って全員思ってますよ。どんな時代でも。年表になんにもない、14世紀とか日本何にもないじゃないですか、南北朝が治まって、あと何にもない、大きいことが起ってない空白の時代の人も絶対そう思ってたはずなんですよね。今だって、おれ、結構空白の時代だと思ってるんですよ。アメリカに負けたってのはデカかったけど、あれから70年くらい経って、そんなに年表に出るくらいのことって起ってないですよね。震災っつったって、関東大震災と比べたら、比べるのはアレかも知れませんが、比べるものがあるっていうことですからね。

編:確かに、前例があるくらいのことって、ことですね。

:自分の生きてる時代を絶対視しないで、あらゆる時代と等距離の視点で、それこそ宇宙人が地球の歴史を見るみたいに見たら、歴史的には退屈な時代だと思いますよ。逆に言えば平和な時代ですよね。でも、自分が生きてるのにそんなこと思いたくないでしょ、誰だって祭りに参加したいと思うのが人間じゃないですか。そういうバイアスを取っ払って冷静で居たいですね。なんかパニックに巻き込まれて一緒になってパニックに陥るのは、おれはイヤです(笑)

編:イヤです(笑)でも、そういう激動なんだぜ! って言ってる人に、割と退屈なんだよって諭そうとは思わないですか?

:そういうの、結構諭すと嫌がられるんですよね。おれ、レイブパーティーに狂った時期があって、あれって、500人くらい、全員がLSD食ってるわけじゃないですか。そんでおれも一緒になってスピーカーの前で目ギラギラさせて、今日絶対UFOが着陸するぞー! とかって言ってるわけですよ(笑)でも、そっから離れて、極端から極端に行ってみるんですね、会場全体が見渡せる岡の上からマリファナ吸いながら眺めたりするとすっげー面白いんですよ(笑)あそこだけ異常なことになってる(笑)って、そういうイヤらしいことして楽しむ視点はありますね。

編:烏合の衆みたいな(笑)

:ええ。なんだろ、子供の時の体験から来てるんですかね。おれ、徳島生まれで、阿波踊りってあるじゃないですか、あれ日本中から観光バスが来て、4日間町中踊り狂って家業とか全部ストップしちゃうんですよ。その町の真ん中で、演舞場の目の前が実家なんです、台風の目って言うんですかね。おれの親とかも元々徳島の城下の人だし、そういう台風の目に住んでる人で、結構阿波踊りアンチって人いるんですよ。うちのオヤジとかと、下では、ドッカドッカドッカとかってやってるのを屋上から見て、そういう馬鹿騒ぎしてる人を冷ややかな目で見るっていうのは幼少の時に学びましたね(笑)

編:群衆蔑視のような。でも、逆に音楽はそういう状況を作り出す作業ではないんですか?

:混沌を作り出す…。そうですね、それはいつも考えてますね。別に音楽じゃなくってもいんじゃないですか。とにかく、革命に関係のあることしかやりたくありません。

編:(笑)ええっ!? 革命ですか。いきなりですね!?

:ひっくり返るところが見てみたいですね。ロシア革命の時にモスクワに居たかったですもん。

編:でも、ベルリンの壁壊してるその中には居たくないって感じじゃないですか? どっか上の方から見てたいって。

:いや、一緒になって壊して写真撮ったりしてると思いますよ(笑)でも、泣きながらウオオーッみたいなのはないと思うなー、そういうのは怖いです。だから野次馬だと思いますよ、ミーハーで。

編:なるほど。もっと革命のことをお聞きしたいんですが。

:おれ、スゲー仲良い友達でオウム真理教の幹部やってた人がいるんですよ。彼は地下鉄サリン事件の時はベオグラードに居て、ニコラテスラ(※4)の地震兵器の秘密研究資料を探りに6人の班で送り込まれてたらしいんですよ。

※4、ニコラテスラ:(1856年7月10日 - 1943年1月7日)晩年のオカルト方面の傾倒のおかげでマッドサイエンティストの代名詞となった発明家・科学者。しかし、エジソンとの比較で言えば、エジソンの白熱電灯は過去の遺物となっているが、ニコラテスラの発明した交流モーターは現在も現役である。


編:(笑)やっぱりオウムはハンパないですね!

:で、サリン事件をベオグラードで知って、電車でベルリンまで行って、ベルリンからソウルに飛んでソウルのホテルでずっと騒動をテレビで見てたって言うんですね。その6人の班のうち、おれの友達以外の5人は坂本弁護士殺した班だったらしくて、おれの友達は、助かったよ! おれ以外、皆死刑だよ! って言ってましたけどね(笑)その人とはよく革命の話しますね。

編:すごい話ですね(笑)その人は、麻原にどっぷりというよりは単純にハルマゲドンに憧れてって感じなんですか?

:完全にそうですね、今は帰依してないですけど。おれ、オウム大ファンでしたから、多分音楽やってなかったらオウム入ってたと思いますね。ええ。だってあれ、やろうとしたことが革命じゃないですか。日本政府を焼け野原にして太陽静寂国って新しい国を作るっていう、実際に国家として省庁制もやってたわけで。それで、その友達に聞いたんですよ、面白かったでしょ? って。そしたら、あんなに面白いことはない! って言ってましたね(笑)一から国を作るんだから、今でも思い出しただけで手足の先が冷たくなるぐらい面白かった。って言ってましたね。そうだろうなー、って。だから、おれが一番やりたいことは革命、オウムなんて口幅ったくてあんまり言えないですけど、革命には興味ありますね。

編:これから起こりうる革命ってどういうものだと思いますか?

:サイバーテロが一番可能性高いんじゃないですか。金融をストップさせるとかいう形ならいつでもカタストロフィは起こると思いますよ。

編:高木さんの革命後のビジョンってどういうものですか?

:おれの革命の先のビジョンは宮崎勤と同じですよ(笑)みんな平和に、未来少年コナンみたいな、ハイハーバー(※5)みたいな(笑)そんな感じになったらいいなーって思いますね。あと、貨幣制度撤廃論者です。貨幣制度が諸悪の根源だと思ってますね、これは大っぴらに言えますよ。だから、極左中の極左だと思います。でも、革命後のビジョンが漠然としかないっていうのは、これはアナーキズムって言うんですかね。自分で分析すると、アナーキストなのかも知れませんね。

※5、ハイハーバー:宮崎駿初監督作、「未来少年コナン」の主人公コナンの地元。コナン世界では、農業国で善人ばかりのハイハーバーと、軍事力と文明管理社会のインダストリアの対立が描かれる。


編:例えば、音楽で革命みたいなことはあんまり考えませんか?

:音楽で革命はいつでも起こるんじゃないですか。おれも音楽で意識を変えられたこと何回もありますし、そういう人はいっぱいいると思いますよ。音楽って抽象的な分、色んなものと結びつきやすいですから、音楽だけじゃない、ドラッグとの関係とか。

編:個人の革命はすぐに起きますよね。あの、今日伺ったことを長い文章でまとめようとか、他のやり方で表現しようとかそういった予定はないんですか?

:ないと思いますよ。というか、これだけ濃いものは二度と書けないと思います。書いても再生産になるんじゃないですか。他にやりたいこと…、映画も作ったし、本も出せたし、結構もうやっちゃったんですよね。漫画の原作やりたいとか、映画のサントラやりたいとかありますけど、些末なことですよね。だから、もう、いいんじゃないですか(笑)

編:(笑)いいんですか。後は、もう長生きを。

:そうですね。あ、全然エロ話してないですけど、いいですか。

編:まぁ、エロ話は大丈夫ですけど、高木さんが考えるジェンダー観をお聞きしてもいいですか?

:ぼく、ゲイが大好きで、ぼくはゲイじゃないですけど、2丁目とかも大好きなんですけど、嫌われるんですよね(笑)

編:(笑)それはどういう意味でお好きなんですか?

:文化、トライブとして面白いと思います。ゲイが生み出すもの大好きだし、ゲイの考え方も大好きだし、ゲイが何故こうなのかってことを考えることも好きですね。世の中にゲイってものがいて良かったと思います。ゲイがいなかったら滅びてたんじゃないですか、文明って。

あと、男は消耗品だと思ってます。命の価値も男より女の方が10倍は高いと、おれの見積もりでは思ってます。やっぱり、タイタニック号で助かるのは女で、誰もそれに文句言わないじゃないですか、後世の人も男は海の藻屑になるって話をすんなり受け入れますし。戦争行くのも全部、男じゃないですか、ノルマンディー上陸作戦とか50万人くらい戦車のキャタピラでミンチになったりしてるのけど女が一人もいなくて、あれ全部若い男ですよね。男って命の価値が安いなって思いますね。

編:それは、女、ゲイ、レズビアン、とかで順番付けるとして男が一番安いと思いますか?

:ええ。男。特に若い男はほんと。だから、可愛いなって思いますね。産まれた時からすでに重要度に差があるっていうのは、人間ってもの全体がいじらしいなって。

編:高木さんご自身の性癖はまったくノーマルですか?

:そうですね。まったく退屈なもんですよ。

編:でも、先程のユートピア的なお話を聞いてるとフリーセックスとかに興味がありそうですけど。

:ああ、フリーセックス論者ですよ。おれ個人は複数とか、恥ずかしがりなんでそんなに得意じゃないですけど、でも、ドラッグ使ってやると、特にコカインですか、コカインは今大流行してますけどどうしても無軌道なセックスにいきますね、あのドラッグは。大変なことが起こってますよ、使うと、男も女も関係なくなっちゃう人が多いですよね。だから革命が起こるんじゃないですか(笑)

編:おー。そこも取っ払われちゃうんですね(笑)では、セックス以外でもいいんですけど、今後何かやってみたいことってありますか?

:おれ、組織に属したことってないんですよね。だから組織の完全な歯車になって、自分の精神活動が全く必要とされないところでロボットみたいになって、自我を無くしてみたいです。自衛隊に入るとか。でも、もう年齢的に自衛隊は入れないじゃないですか。何でもいいんですけど、家族でも何でも。

編:家族を作るとかはできそうですが。

:家族っていうのもあんまりないんですよね。おれ、子供が欲しいとかいうのが欠落してて。自分は乗り越えられたことでも、自分の子供も乗り越えられるとは思えないんですよ。自分の子供に、なんでウチにはポルシェがないの? とか質問されて、それに合理的に答えられないですからね(笑)おれが生きてくうちにぶち当たってきた問題も、おれだから解決出来たと思ってるんですよ。いつもさすが、おれ! って思ってますから(笑)それで子供だって他人じゃないですか、でも責任があるじゃないですか。それが100%乗り越えられるとは到底思えないですから、だから可哀想で。お金があったらなんとかなりますけどねー。だけど、大家族みたいなものに入ってみたいっていうのはありますね。

編:いわゆる社会の典型、記号的な普通人みたいなものになってみたいってことですね。

:はい、なってみたいですね。どんな気分がするかっていうだけですけど。だから何か、忘我の境地みたいなところに行ってみたいんですね。

でも、その話といきなり矛盾しますけど、おれ、なんでもなんですけど、なんかの原理主義者が嫌いで、いつでも自分が何かの原理主義者になってないかって恐れてるんです。でもそれって自分の後頭部が見えないのと同じで、多分分からないんですよね、だから強力な「おれ倫理委員会」みたいなものが常にチェックしてるんだと思います。だから誰かと話してて、意見が合った時はいつも怖いですね。その相手とおれとの間に、気付かないうちになんかのバイアスが掛かってるんじゃないかと。なにか議論が起こった時に、賛成と反対が半々ぐらいで拮抗してないもの以外は全部まゆつばだと思ってますから。

編:確かに、なにかの原理主義者は忘我の境地に行っちゃえる人が多い気がします。

:おれも、忘我の境地の経験はあるんですけどね。マリファナ吸って地図見てる時とか(笑)

編:それは何地図なんですか(笑)?

:もう、何でも(笑)家でハマっちゃって、紙の地図から、何か統計資料とかベッドに隙間もなく並べて、パソコンではグーグルマップ開いて全部をフル回転でなにかを調べてるんです(笑)でもそれって、なに原理主義者なんですかね(笑)?

編:さあ(笑)「調査」ですか? 図らずも、はじめにおっしゃってた、著作の評価が賛否半々になって欲しいという話と符合しましたが、では最後に、「プロ無職入門」をご自身の口からお勧めしてもらえますか。

:はい。さっきも言いましたが、こんな濃いものは二度と書けないです。本が出たこと自体がもう僥倖で。おれのエッセンスが全部入ってますから、おれのことに興味がなくても、ひとりの人間の頭の中を見る感じで、人間の頭の中とか興味がある人は楽しんでもらえると思います。

編:いや、1人の人の頭の中にこれだけ色々なことが入ってるのか、と、今日のインタビューも全く、同じ感想を持たせてもらいました。本当にありがとうございました。



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プロ無職入門 高木壮太の活ける言葉 (P-Vine Books)

定価:1890(1800円+税)四六/並製 216頁 ISBN978-4-906700-16-5

内容(「BOOK」データベースより)
本書は著者が2005年春から2011年暮れにかけてインターネット上に投稿した、愛、呪詛、自己顕示、知識偏重、哀れみ、おかしみ、そしてなによりもナンセンスについての文章を拾い集め再構築したものです。

出版社: スペースシャワーネットワーク


高木荘太

1968年徳島市生まれ。高校中退後、さまざまな職につかず、やりたくない事から死に物狂いで逃げ回るうちに、鍵盤奏者としての活動に入る。GREAT3やボニーピンク、YUKI、エルマロから和田アキ子までのサポート/レコーディングを始め、世界十カ国での巡業では、シンセサイザーによる想像を絶する騒音を残し、現地の耳鼻科医たちから注目を浴びる。中年に差しかかり、聴覚の衰えをものともせずにサイレント映画の創作に没頭。2010年には、ついに初のトーキー作品『RAWLIFEとその時代』を完成させるも、多方面からのは非難を浴び、現地逃亡中。2012年、処女著作『プロ無職入門』を上梓。