コイトゥス再考 江川達也 前編

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コイトゥス再考 #11

江川達也・前編 

ポストエロスの性愛論

文/辻陽介 写真/久田悠


筆者(83年生まれ)の世代の男子にとっては『東京大学物語』を読むことがある種の性の通過儀礼であった、なんて言ったらさすがに言いすぎであろうか。

累計1500万部以上を売り上げ、いま現在に至るまで「究極のエロ漫画」、「萌えの原点」などと称される伝説の作品。今回のゲストである江川達也とは、言わずと知れたその作者である。

その横紙破りな発言、変則的な表現スタイルゆえ、しばしば江川は批判の矢面に立たされることもある。より直裁に言うなら、漫画界においてもアンチ江川は少なくない。だが、それは阿諛追従を頑なに拒み、常にエッジな表現を貪欲に追求し続けてきた結果。むろん江川自身、ただ罵られて閉口するようなやわじゃない。ダーティーダズンには定評あり、今回のインタビューにおいても、舌禍必至の過激な言辞が飛び交った。

究極のエロ漫画家・江川達也が語る、エロなき時代の性愛論。さらには宮崎駿の拭いがたい欺瞞性について。前後編2回に分けてお届けします。



(2011年5月中旬/江川達也氏のアトリエにて)


―本日は宜しくお願いします。僕はダイレクトに『まじかる☆タルる~トくん』や『東京大学物語』を読んで育った世代の人間なので、今日はその作者の方を前にしてちょっと興奮してます(笑)

江川 嬉しいですね(笑)。こちらこそ宜しくお願いします。

―では早速お話を伺っていきたいんですが、まず江川さんは昨今のジェンダー状況、例えば世間でいう男子の草食化などについて、どのような印象を持たれてますか? 

江川 うーん…、まぁ草食系について言えば、彼らはエロに興味がないというより、エロが簡単に手に入ってしまうだけで、全くエロに触れてないというわけではないと思いますね。表面化していないだけ。昔はエロに対する禁止が今より強かったんでね、見ること自体が難しかった。お金もかかったしね。禁止をかいくぐってまでエロを見てたわけですから、やはりその情熱は分かりやすく目立つわけじゃないですか。今はただ目立たないだけなんじゃないかな、エロに触れている人達の姿が。いわば透明化しただけじゃないかな、と思う。

ー今も昔も男子は相変わらずエロい、と?

江川 根本的にはね。例えば草食系と呼ばれる男達の前にさ、見るからにエロい女を立たせて、でも一向に脱がないといったストレスフルな状況を作れば、昔の人みたいに強姦するんじゃないですかね。昔の人がみんな強姦してたわけじゃないですけど(笑)

―なるほど(笑)

江川 今の若い人は知らないかもしれないですけど、今の年寄りの世代は、若い頃にエロを見れる機会なんて全くなかったわけで。一方、今は簡単じゃないですか。ネットがあれば親の監視の及ばない所でエロを気軽に見れてしまう。いわば、昔の人っていうのは水不足で喉が渇いてしょうがないから「水よこせ」って騒いでたわけで。今は水ガブガブ飲み放題で、何も努力しなくても蛇口さえひねればエロが涌き出すっていう環境でしょ。よく言いますがエロっていうのは禁止がないと成立しないわけで、素っ裸で皆が生活し始めたらチンポは勃起しないですからね。

ー禁止と侵犯のメカニズムですよね。

江川 今はネットで「裸」とか「エロ」で検索すれば、ばっとそういう画像が一面に出てきて、しかも非常に画質がいい。昔はエロメディアが少ない上に画質も非常に悪かったから、よりリアルを求めて現実の女を求めていくとこがあったけど、今は現実の女を見ているに近い感覚になれるぐらい画質がいいわけだから、そうなると現実の女を求めなくなるよね。モザイクだってそう。昔は無修正なんてそうそう見れなかったから、性器を見たかったら現実に女を口説かなきゃいけなかった。今は無修正も見放題。そうなると性器そのものに対する興奮もなくなるよね。裏ビデオ見過ぎると、マンコ見ても何も感じなくなるもんじゃない?

ーそれは大いにありますね。ファンタジーが損なわれるというか。そうなるとマンコなんてただのグロい臓器に過ぎなくなってしまいますよね。

P1030519-2.jpg江川 重要な部分としては「飽き」だよね。イスラム教圏では女性が顔を隠してるじゃないですか。あれはよりセックスの頻度を高めるためにやってるとしか思えない。源氏物語だってそうでしょ。顔を常に隠していれば顔を見ただけで勃起しますから。逆に今の渋谷のセンター街とかを歩いてると女の子たちが真裸で歩いてる感じじゃないですか。歩く性器状態ですよね。

ー理屈的に考えても逆に性欲は減退しますよね。

江川 エロで長く商売してる人って大体「規制をもっとかけてくれ」と言ってますから。規制がないと商売あがったりだっていう。そういうことだと思います。まぁ他にも環境ホルモンの影響なんかもなくはないと思いますよ。それに今はリアルなエロの世界にいくと危険度が非常に高いんで。変な女も多いでしょ。病気も怖いし。だったら、そんなリスクを背負わずに自宅で無修正のネット動画を見ながらオナニーしてる方が安全で、またコストも安い。

ーオナニー技術も進歩してますもんね。

江川 そうそう。今はテンガがあるから。もう女はいらないってなるよ(笑)

ーマンコより気持ちいいって言うぐらいですからね。

江川 マンコより気持ちいいし、それに好きなタイミングで使える。だからテンガを禁止にしたら、逆にセックス率はあがると思いますよ。というか、女がデートで奢ってもらえる確率があがる。

ー1回のデートで15テンガくらいかかりますからね(笑)

江川 ね(笑)。しかもその価値がないっていうさ。嫌な性格のヤツが増えてるんだよ、女にも。

ー具体的には?

江川 知り合いから聞いたのは、セックスした女にブログで「あいつは下手だった」とか書かれたとかいう話。そいつ自身は「ブスだから盛り上がらなかった」とか言い訳してましたけど。まぁ今はツイッターもあるんでね、セックスが下手なんて噂も簡単に広まっちゃいますから。

ー自分のセックス話がリツイートされるという(笑)。名前が売れてる人は特にリスキーですよね。

江川 「すごいうまかった」って言われたところで、それはそれで困るしね。難しいですよ。性に対する隠密性がなくなってきてるんでね。

ーひめごと的な雰囲気は損なわれてきている気がします。

江川 そうだね。あとよく指摘されているけど、コミュニケーション能力が低い人が多い。きちんとしたコミュニケーションを経ないとセックスも気持ちよくないんだよね。基本、今の若い人は妄想が暴走してる傾向があるように思うんで、独り善がりなセックスに陥りがちなんじゃないかな。セックスってのは本来ならば相性やコミュニケーション重視の営みだから。そこにはある程度の心の広さ、というか許容力がないとダメなんだよね。

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