釣崎清隆 最新映像作品『ウェイストランド』インタビュー

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釣崎清隆 最新映像作品『ウェイストランド』インタビュー

現実を直視する死体写真家の眼。3.11東日本大震災、パレスチナ、中南米の解放運動の本質を貫く!!

聞き手/ケロッピー前田


死体写真家・釣崎清隆は、90年代半ばより世界の危険地帯を旅して、1000体以上の死体を撮影。死の現場で磨かれた感性は常に鋭くリアリティをえぐり出してきた。そして、今回、問題の最新映像作品『ウェイストランド』が完成となった。唯一無比の極北ヘヴィ・ミュージックで知られる大阪のコラプテッドとコラボレーション、彼らの名作『エル・モンド・フリオ』に、釣崎がパレスチナ、メキシコ、震災直後の被災地での映像をミックスして、21世紀の映像叙事詩に仕上げたのだ。東京、大阪での上映も大好評、10月5日にはアップリンクよりDVDが発売され、ますます話題沸騰の新作に、身体改造ジャーナリストのケロッピー前田が迫った。




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釣崎清隆氏(撮影:ケロッピー前田)





—なぜ、いま、このタイミングで?

「昨年の3.11の取材映像が追加されて、一気に完成が見えた。とにかく、コラプテッドの大傑作『エル・ムンド・フリオ』のサントラに相応しい格調を可能な限り追い求めたつもり。前ボーカルのHEVIの歌詞が911から3.11までのこの10年を見事に言い当てていて、「偽りの平和」、戦後体制の矛盾、騙されるのはもうたくさん。実に予言的なんだ」



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『ウェイストランド』より



—コラプテッドとのコラボレーションというアイデアは? 

「コラプテッドとは1999年、『死化粧師オロスコ』の完成直後に、死体映像のVJで彼らと組んでみないかという企画をもらったのが馴れ初め。彼らは関西が拠点で、メキシコの犯罪雑誌『アラルマ!』のアートワークをジャケデザインに使ったり、歌詞がスペイン語だったりと、ブルヘリアみたいな謎の覆面バンドから出発してどんどん硬派になってって、その極致といえるのが『エル・モンド・フリオ』だったんだ。歌詞も日本語なんだよね」

—やっぱり最初の引っかかりは911から?

「9.11から3.11までの10年間に撮影したフッテージを中心に構成した作品なわけだけど、やはり最初の衝撃は911だった。あのツインタワーの倒壊をみて、それまで中南米で目撃してきたものとは様相が違う暴力を感じたんだ。そして、すぐにイスラエル/パレスチナに飛んで、自爆テロの現場を歩き回ったよ。実際問題、中東の戦場で起こっている事象はウソまみれなんだ。戦争はシビアな現実だけど、ラテンアメリカで金や女を巡る殺し合いの世界を見てきた目には、根深い歴史的経緯を背景とした宗教戦争という欺瞞が際立って、ほとんどの日本人はパレスチナ問題の現実や本質がわかってないよね、伝える側も含めて。つくづく現場に来ないとわからないものだなと」

—そこら辺は、『死者の書』(三才ブックス)に詳しいよね。

「パレスチナの狂信的テロリズムのイメージは欧米メディアが作ったもの。ハイジャックやりたい放題のPLOヤセル・アラファト議長が率いた革命世代と、自爆テロでお馴染みのハマスなどイスラム原理主義組織は思想信条が真逆だし、事実両者は激しく対立している。PLO主流派のファタハは世俗的政治体制を敷いていて、パレスチナ在住のアラブ人にはキリスト教徒も意外と多いし、聖地は観光名所だからタクシー運転手なんて英語も流暢にしゃべるし文明的、右翼の大イスラエル主義者なんかよりよほど親近感が持てるよ。酒飲まないから穏やかだし」

—それでも自爆テロは起こるじゃない。

「普段穏やかで尊敬されているような小学校の教師なんかが、何か最近信心深くなったなと思ってたら、ある日唐突に自爆攻撃をしでかすという。でもハマスが支配しているガザ地区にしても、もともとビーチ・リゾートだから、観光客はいないけど、欧州びいきのホテルマンや売り子が暇をつぶしてて、あんまりのんびりしてるものだから、戦争を忘れて海水浴でもしたい気分になるんだけど、機雷が仕掛けられてるから泳いじゃだめだってさ(笑)」


—イスラエル側とパレスチナ側の情報戦であると。

「世界中のムスリムにとってパレスチナ問題は最大関心事であって、アルアクサ・インティファーダ発動以来、パレスチナ側としてはイスラエル軍の蛮行を広く伝えてもらおうと、俺のようなフリーランスの外国人カメラマンでも情報提供などきめ細かく対応してくれて、戦略的に国際世論に訴え味方に付けようとしていたのは確か。しかしそれに対してイスラエルは自治区を壮大な壁で囲んで物理的に内部情報を遮断し、外国人ジャーナリストの出入りを制限、特にフリーランスは完全に締め出してしまい、パレスチナの実態に関する情報と、自爆テロ犯を封じ込めることに成功すると同時に、イスラエルの戦慄すべき鉄の意志を内外に示した。はっきり言って日本人はユダヤ人の真の恐ろしさを理解していない」

—日本において、一般人が世界のことをわからないのは仕方がないとして、いわゆる知識人が知っていて隠しているんじゃなくて、ぜんぜんわかっていないっていうのがまずいよね。

「日本人って、もうちょっと頭が良かったと思っていたんだけどね、大問題だよ。情報を軽んじる傾向は今に始まったことではないけれど、失われた20年の間に外に対する興味もなくして、自ら情報を取らないで世界と対すること自体に恐怖を感じなくなった。外面も気にしなくなり、もはや世界で何が起こっているのか想像も及ばない。本当に今の日本は恐ろしいよ。中東情勢について民主党系政治団体が俺みたいなのにレクチャー頼んできたりするんだよ。やばいよ」

—911以降、世界は変わった。というか、常に世界は激変し続けているわけだけど、なぜか日本は立ち止まったままだよね。

「日本のマスメディアは社員を危険地域に駐在させて独自に情報を取り分析する努力をまずやらない。取材は現地人に委託するかフリー任せ。そのフリーにしても語学能力に問題があったり、思想信条が偏った左翼かイスラム教徒か、そんな奴らの取材で満足するほど一次情報に無頓着なマスメディアにまともな報道ができるわけがない。JICAの技術者の方がインテリジェンス面でもよほど優秀」

—以前の『死化粧師オロスコ』『ジャンクフィルム』では、死の現場をドキュメンタリーとして見せてくれたけど、新作『ウェイストランド』は、僕らの現実としての3.11が、世界の緊迫した現実と並列されることで、もっと切迫したリアリティとして迫ってくるね。

「ここに登場する人たちは皆、何かを探しているんだ。探すといっても〝自分探し〟なんかじゃない。彼ら愛国者たちは探すべきものははっきり分かっている。自衛隊員は決して死体を探すことが本分ではないわけだが、それでも誇りを懸けている。それでも見つからない。それでも絶望しないで、確信を抱いて黙々と探し続けているんだよ」



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『ウェイストランド』より



—中盤から後半にかけて、思わず込み上げるエモーショナルな高まりは、まさに今作品で開いた新境地といえるんじゃない。

「作品を観ててウルウルしちゃいましたって何人かに言われた。コラプテッドのプレイがまた凄いから、相乗効果を狙ってエモーショナルに畳み込み、追い込んだ」

—この作品を通じて、日本人に気がついて欲しいことは?

「一日も早く自衛隊に名誉が与えられることを祈る」

—これから世界に向けて作品を出していくことになると、またいろいろな反響があるよね。

「パレスチナ人とメキシコ人に観てもらって感想が聞きたい」

—サパティスタ民族解放軍とは、90年代後半からネットを駆使して支持されてきたメキシコの自治組織。自然の中で子供たちが無邪気に遊んでいるのがまさにサパティスタの村ですよね。

「ラ・レアリダーというメキシコ南東部チアパス州最深部で2007年に撮影しています。EZLNはネットを武器に世界のマイノリティと連体して蜂起を勝利に結び付けた希有な反乱軍で「ポストモダン・ゲリラ」とも呼ばれて2001年に新政権との対話目的で代表団がメキシコシティを訪問した際の世界刮目の大動員〝サパティスタ行進〟でその成功は絶頂に達したんだけど、その後右派反動よろしくメキシコ全土を麻薬戦争の暗雲が覆うことになり、あたかも一過性のブームであったかのように動乱の世界はいともたやすくEZLNを忘れ去ってしまい、1996年の発足以来の危機に瀕しています。2007年当時、右派民兵による誘拐の標的にされていた子供の顔の露出は厳禁だったんだけど、今回は5年寝かした上という条件での公開になりました」

—今回の作品で、なんといっても辛辣に見せつけられるのが日本、3.11の映像が印象的でした、世界の映像が違和感なくシンクロして。

「結局、全体の三分の一ほどが3.11の映像になった。3.11をテーマにした映画はいろいろあるけど、どれも判で押したように反原発でいただけない。原発でかいた恥は、原発で晴らすのが筋だ。我々は歴史を抱き締めて過去と現在と未来のパートナーシップで祖国の国体を取り戻さねばならない。反原発の思想は尖閣諸島なんか中共にくれてしまえという発想と同根の〝敗北主義〟だと思う。逃げてはいけないのだと、何事も」


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『ウェイストランド』より



—映像の背景がわかると観え方も変わってくる。

「『死者の書』を読んだ後で観たら理解が深まったって言ってたファンがいた」

—ところで、映像編集中の8月半ばには、尖閣諸島に行っていたよね。上陸した人たちもいて、びっくりした。

「DVD化の締め切りが迫ってるにもかかわらず、編集作業をほっぽり出して民間防衛に出動したんだけど、俺としては一取材カメラマンとか一アーティストとしてというわけではなく、あくまでも一日本国民としての止むに止まれぬ思いで参加したんだ。美しい島々だったよ」

—今年は11月30日に海外の出版社CREATION BOOKSから写真集『Death』が発売予定。『ウェイストランド』も海外の映画祭に出品するでしょ。

「そうね。カンヌがいいかな(笑)」

—ますますのご活躍を応援しています!!


(聞き手:ケロッピー前田)








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釣崎清隆・最新映像作品『ウェイストランド』(アップリンク)
◇監督・撮影・編集/釣崎清隆◇音楽/Corrupted 『El Mundo Frio』(H:G fact) ◇制作・発売/オロスコ製作委員会 www.tsurisaki.net◇販売/アップリンク◇ウェイストランド公式サイト/http://www.wasteland.jp





釣崎清隆(つりさききよたか)

1966年富山県高岡市生まれ、慶応大学文学部卒。学生時代から映画制作、文筆活動を始め、AV監督を経て94年より写真家として活動、95年にNGギャラリーにて初個展。死体を被写体に、タイ、コロンビア、ロシア、パレスチナなど世界各国の無法地帯や紛争地域を取材し、これまでに撮影した死体は1000体以上。

www.tsurisaki.net <http://www.tsurisaki.net>



ケロッピー前田

1965年東京生まれ、千葉大学工学部卒。白夜書房、コアマガジン勤務を経てフリー。伝説の雑誌『BURST』でタトゥー、ピアス、身体改造、フェティッシュ、サイボーグ、人類の未来などの最前線を海外&国内でレポート。現在も日本のアンダーグラウンド・シーンの証人として、そのドキュメントを続ける。

keroppymaeda.com



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